本日、『スケッチブック/SKITBOOK』の新作スケッチ(コント)「ブラック・ライブズ・マター」を公開しました!お楽しみください。
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今回は前2回と比べて急にセンシティブなネタを扱っているので、誤解が生まれないようにCDで言う所のセルフライナーノーツ的なものを記していこうと思います。(以下、鑑賞後に読むことをオススメします。)
アメリ カやイギリスなどのスケッチでは、時事問題をネタとして取り扱うことが多く、僕も『スケッチブック/SKITBOOK』では積極的に風刺を取り込んでいこうと思っていまして、今回は思い切ってそっちの方向に舵を切りました。*1
今年コロナ以外で世界を動かしたのは「ブラック・ライブズ・マター」運動です。日本ではBLMが驚くくらい冷ややかに捉えられており、大坂なおみ がTwitter でBLM関連のツイートをすると炎上したり、八村塁が平和デモに参加しただけで叩かれている状況はハッキリ言って異常だと思います。日本人にとって、人種差別は無関係だと思っているのでしょう。
僕がこの「ブラック・ライブズ・マター」の脚本を書き、出演してくれる黒人の役者を募集した時に、とある候補の人が脚本を読んで「この台本だったら出ない」と言われました。当初僕が書いていた脚本は、金田少年が名推理によって、犯人として唯一の黒人学生を名指しし、その場にいる全員から非難され、結局犯人も別人で冤罪だった、というオチでした。僕は金田少年が無意識に差別をしているプロットにし、誰もが差別主義者たり得る、ということを表現したかったのですが、台本を見せた候補の人からは「ヌルい」と言われました。
「明らかな殺人者がその場にいるのに、全員が盲信的に黒人学生を犯人だと思った方が、笑えるしリアル」と彼は言ったんですが、なるほど言い得て妙だと思い、脚本を根本的に変えました。残念ながらその彼は結局出演することはなかったのですが、代わりに今回出演してくれたアレクサンダーくんも「劇中に証拠として黒人がよく聞く音楽のCDとかいんじゃない?」とアイディアを出してくれました。彼もよく「レゲェとか好きそう」と無邪気に言われるそうです。
つまりですね、日本では無意識な人が多いだけで、差別は平気であちこち横行しているんですよ。彼らがアドバイス してくれた内容は、実際に彼らが日本で受けてきたステレオタイプ や偏見に基づいています。そのため、ある種「あるある」的な内容にまでして笑いにもつながったと思いますが、同時に「自分は黒人をステレオタイプ に当てはめていないか」と気づくきっかけになるかと思います。
「無意識」っていうのがキーであり、厄介なところであります。ヒャクタなんちゃらとか自ら進んで差別をしている人は論外ですけど、「無意識」ということは本人には悪意がないケースすら含みます。「黒人だから歌が上手い」「黒人だから踊れる」「黒人だからスポーツができる」というのは全てポジティブに聞こえますが、言っている本人は褒めているつもりでも一つの定型に当てはめてしまっており、差別を増長する危険性を生みます。
ここで僕は「無意識」や「無知」であることそのものを唾棄すべし、とは思っていません。僕自身は観ることが叶いませんでしたが、『アベニューQ』というオフブロードウェー で2003年から上映されている傑作ミュージカルがあります。『セサミ・ストリート』をパロディにしたミュージカルになっていて、劇中で「誰もが少しは差別主義者(Everyone's a Little Bit Racist)」という名曲があります。
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『アベニューQ』には様々な人種やパペットが登場し、お互いの人種に関する偏見を無意識に口にしてしまい、それをお互いに批判しあってる様をコミカルに歌った曲ですが、サビは次のようになっています。
時々みんな少しは差別主義者になると思うの だからと言ってあちこちでヘイトクライム を 犯してるわけじゃないんだけど 周りを見渡してごらん色盲 の(=色で人を見ない)人っていないから 私たちが向き合う事実かもね みんな人種で相手を決めつけてる
これは自戒を込めて書きますが、『アベニューQ』が歌うように、人間はある種の集団に属して生活している以上、多かれ少なかれ人を見かけで判断しない人って実は少ないと思うんです。しかし、大事なのは「自分の中にもはちょっとした差別心はある」という事実と向き合い、自分が知らず知らずのウチに自らの中で育んでしまった偏見で他者を傷つけていないか常にチェックすることです。そのためには、「無意識」や「無知」からの脱却が大事なのです。
そういった状態からの脱却にはコメディとはうってつけの薬であり、あわよくばkのスケッチを見た人がそれぞれ「ブラック・ライブズ・マター」について、対岸の火事 ではなく自分の社会で起きている出来事して考えてもらえるキッカケになればいいな、と思っています。
あ、ところで、このスケッチは前回の「映画バー」のスケッチと同じ日に撮影しました。僕の表情が死んでいるのは殺人鬼の役作りではなく、疲労 からです!
▲今回のサムネ候補は色々あり、個人的にはこれが好きで非っっっっ常に迷ったんですが、日本語読めない人にとってもテーマを分かりやすくするために、現行のものにしました。ちなみに、『スケッチブック/SKITBOOK』のコントには全て英語字幕と聴覚障害 者の為に日本語字幕がついており、現在は知人に頼んで中国語字幕も作ってもらっています。ん〜ユニバーサル!