今週土曜日に『SKITBOOK』大型新作公開予定!

 今週の土曜日に僕のオリジナルスケッチ/コントYouTubeチャンネル『SKITBOOK』の新作を公開します!直近二回の新作はコロナ事情で僕一人で撮らざるを得ませんでしたが、今回は久しぶりにキャスト呼んでスタッフ集めてスタジオ・機材借りて撮影をしまして、予算的には「映画バー」「金田少年の事件簿」以来の大型(当チャンネル比)の新作となっているので、楽しみにしていてください。

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 それにしてもこのままスケッチを作り続けていくと銀行口座が干からびてしまうので、なんとかして収益化の手段を考えないといけない……。

おとなのけんか

 いつから日本でもこれほど取り上げられるようになったでしょうか、11月に控えた大統領選挙に向けて今年初めて開かれたトランプVSバイデンの公開TV討論会が話題です。

 

 

 僕は家にテレビがない上、珍しく仕事に出かけていたので生では観ていませんでしたが、やたらとTwitterでもアメリカ人の友達が多いInstagramのストーリーでも「酷い」「ヤバい」と言われまくっていたので、家に帰ってからYouTubeで観てて大爆笑でした。もう散々有識者などが触れている通り、言うまでもなく討論会としては史上最低ですが、大統領選挙に向けた討論会と考えなければある種コメディとして成立しているのではないでしょうか?

 

 トランプが一方的にバイデンや司会者クリス・ウォーレスの発言を遮り続け、主張のほぼ全てがウソ800なのは平常運転なんですけど、個人的には冷静に努めていたバイデンが時折堪忍袋の尾を切らしてトランプをついつい罵ってしまうのがツボでした。個人的なベストモーメンツは…

 

 「黙ってろよ、この野郎」と怒るバイデン

 

 「吠えてろよ、この野郎」と煽るバイデン

 

 「あんたはアメリカ史上最悪の大統領だよ」と呆れるバイデン

 

 「このピエロ…失礼、人の前ではもう何も言えない」と慌ててピエロと呼んだことを訂正するバイデン

 

 

 他にももう放送事故としか言えないくらい三者がやんややんや叫び合っている様子なんかはヒーコラ笑わずにはみてられませんでしたが、冷静になると僕みたいな「斜に構えた態度」こそがトランプを産んだ原因でもあるので良くないですね。世界の行く末を占う大統領選がこんな子供の喧嘩以下の戦いに委ねられていることに絶望しましょう。

 

 この討論会を見ていると久しぶりにポランスキーの『おとなのけんか』が観たくなりました。

おとなのけんか (字幕版)

おとなのけんか (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

『TENET テネット』は難解な映画か?

 そういえば、昨日『TENET テネット』の2回目を鑑賞してきたのですが、2回目ともなると頭を整理してみることができました。逆に言うと再鑑賞しないとやはり何が起きているか分かりづらく、実際一緒に観にいった初見の友人はついていけずに爆睡していました。IMAX料金が勿体無い!

 

 で、一つ確信に至ったのですが、ノーランはビジュアルストーリーテリング力に実は欠けているのではないか、と言う点です。これは『インターステラー』を再鑑賞した時も思いましたが、ノーランの映画では主人公たちが「今」「どういう」ミッションを「何故」行なっているのかが非常に分かりづらいです。しかし一方で、実はこれから行われるミッションは、その直前にセリフとして口頭でキチンと説明しています。じゃあ、なんで分かりづらいかというと、まさに映画なのに全て口頭で説明しているからであって、セリフや字幕を追っているうちに当のミッションがなんのために行われているかを忘れてしまうのです。

 

 『TENET テネット』を観た方は覚えておいででしょうが、劇中の一つのハイライトとして空港でのアクションシーンがあります。実際にジャンボジェット機を購入・破壊して行われた大規模な撮影であり、かつ時間を逆行した「敵」との初めての戦闘場面でもあるため、強く印象に残っているかと思います。

 

 しかし、じゃあ主人公たちが何故そもそもあの空港で色々と工作していたのか、を初見で説明できた人は少ないんじゃないでしょうか。もちろん、ヒロインのキャットのために、とある贋作絵画を盗む目的で潜入するのですが、じゃあそもそもなんで贋作絵画を盗む必要があったか、を覚えている人はいますか?正直オツムの弱い僕は2回目を観たときに「ああ、そういえばそんな話してたね」とやっと思い出したくらいでした。*1

 

 逆に、今回のクライマックスで展開される圧巻の「時間の挟み撃ち作戦」は非常に複雑なシーンであるにも関わらず、誰もがワクワク楽しんだ場面だったと思いますが、これは事前のシーンでホワイトボードを使って馬鹿丁寧にどういう作戦かを説明しているからなんです。こういう風にキチンと作戦の成功条件はなんのか、失敗条件はなんなのかを画的に説明してくれると分かりやすい*2のは当然なので、もっと他のシーンや映画でもやるべきだと思うんですよね*3

 

 今『TENET テネット』は「時間逆行」という突飛なアイデアを使っているだけあって、「難解な映画」であることが話題を呼び、ネット上には解説動画や考察レビューが溢れ、リピーターも続出しています。が、僕は『TENET テネット』は「時間逆行」のシステムが分かりづらいのではなく、単純にノーランが説明下手で不親切だから分かりづらいのだと思います。

 

 しかし、これまた『TENET テネット』の、というかノーラン映画の凄いところでもあるんですが、これだけ説明下手でも漠然と理解できますし、ちゃんと面白いんです。ノーランはよく藤子・F・不二雄のSF作品と比べられがちですが、僕はどちらかというと荒木飛呂彦的な世界観に近いと思いました*4。『ジョジョの奇妙な冒険』には時になんだかよく分からないスタンド使いが出てきますが、それ以上に誰も観たことのない衝撃的なビジュアルで読者を説得させて黙らせます。おそらく、あの世界観やスタンド能力を全て完全に理解しているのはこの世でただ一人荒木先生だけで、我々読者はあの独特な画風を通して荒木先生の怪奇な脳内を覗き見ているのです。

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荒木飛呂彦的世界観を説明する良いセリフ

 

 ノーランも荒木先生同様「誰も観たことがない衝撃的なビジュアル」を映像化する能力に非常に長けていて、観客は観たことないものを観させられてしまったので、おそらくこの世でただ一人ノーランしか理解していない*5であろう世界観やルールに対して納得せざるを得ないのです。ノーラン映画には説明力はありませんが、圧倒的な説得力がある故に、熱狂的な支持を得られているんだろうなぁ、と思いました。信者の僕がいうのもなんですが!

 

 ……今「信者」と書いていて思いましたが、説明を聞いても理解はできないけれど説得されてしまうのは宗教と同じですね!ノーランが熱狂的かつカルト的な支持を集める一方で、拒否反応を起こすくらい嫌いな映画ファンが少なくないのも、もしかしたらノーラン映画が宗教に近いところがあるのかもしれません。考えるな、感じろ!

 

 

 

*1:しかもこのミッション、失敗しているにもかかわらず、主人公はキャットに成功したことを告げ、後のシーンではキャットの旦那であり悪役のセーターが大事に保管していることが判明します。マジで主人公たちは一体何しに行ったんだ!

*2:それでも相変わらず「なんでこの作戦をやる必要があるのか」は忘れがちになったりしますが

*3:念のため言って起きますが、『インターステラー』でもホワイトボードを使ったり、「流石にこの作戦はややこしすぎるぞ!」って時はノーランは懇切丁寧にビジュアルで説明します。が、それ以外では「観客もバカじゃないんだし、わかるっしょ」って感じで投げやりで言葉で全部説明するのは困ったものです。

*4:そういえば、『ジョジョ』も圧倒的にセリフ量が多い漫画であることもノーラン映画と似ています

*5:なお、共同脚本執筆作品の場合はジョナサン・ノーランも含む

『マトリックス4』の撮影に参加した友人の話

 えー「ブログに書いていいよ」と言われた話なので、思い切って書きますが、僕の友達でサンフランシスコでカメラマンをやっている友人が、諸事情により1ヶ月半ほど日本に帰ってきています。その彼から聞いた話なのですが、彼はコロナ禍になるちょっと前に、なんとマトリックス4』の撮影にPAとして参加する機会に恵まれたそうです。

 

 PAというのはプロダクション・アシスタントの略で、僕もNY時代に会社の仕事で何度か経験したことがありますが、要は雑用係です。『マトリックス4』のような大作映画になると、まるで軍隊のようにスタッフの規模もデカく、このPAという末端の役職だけで50人ほどいたそうです。なお、これはサンフランシスコで撮影されたシーンだけでこの規模なので、他のロケーションに移るたびにこれくらいの規模のPAが雇われていました。これは『マトリックス4』だけでなく、基本的に全てのハリウッドのブロックバスター大作でこのようなPAがたくさん汗癖働いてます。

 

 で、今回の『マトリックス4』はサンフランシスコの一区画を封鎖して、ヘリコプター飛ばしたり戦車を走らせたり、とてつもない規模の撮影をしていたようです。撮影のために道路を封鎖することはローリングブロックと呼びますが、ローリングブロック中に関係ない一般人や野次馬が入ってこないようにするのもPAの役目です。『マトリックス』のファンとして夢の現場に参加した友人も、責任もって一般人の追い出しをしていたそうです。

 

 10日間かけてこのサンフランシスコのシーンは撮影されたようですが、とある日にはヘリコプターのチェイスを撮影するとても危険なスタントシーンがあったそうです。こういう危険な撮影をしている時こそ、何か間違いがあってはいけませんから、友人はローリングブロックのPA仕事により一層気合を入れていました。そんな折に、なんだか偉くオーラのある人が封鎖区画に入ってこようとしたので「ここは通れませんよ」と阻んだところ、「俺様はこのファッキン映画のプロデューサーじゃ、ボケェッ!」と怒鳴られてしまったそうです。

 

 慌てて謝って偉そうなプロデューサーを現場に入れてあげた友人ですが、彼としては仕事を真っ当にこなしただけなのに怒られる筋合いはなく、なんだか煮え切らないヤキモキした気持ちを抱えていたそうです。また、この事件はすぐに現場に広く知れ渡り、他のPA仲間からも「どんまい」「お前は悪くない」と励まされたとのことです。

 

 聞いてて滅茶苦茶笑った話なんですけど、個人的に結構気になるのは、このプロデューサーは誰だったんだろう?という点で、仮にもしジョエル・シルバーだったとしたらかなりアツい話だなぁ、と思います。それにしても、僕も会社で撮影仕事をしていた時は数ある役職の中でプロデューサーが一番嫌いでしたけど、本当になんでプロデューサーという肩書のつく人は古今東西誰でもかんでもクッソ偉そうなんですかね。

 

 なお、こういう大作映画に参加するときは大抵NDAと呼ばれる機密保持宣誓書にサインを書かされるんですけど、本当にこの話を書いていいか友人に何度も聞いたところ、「全然いっすよ!」とのことでしたので、当ブログは一切責任を負いません。ワーナーさん許してちょ、てへぺろ