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君がいなくても/『テッド』★★★

 今更『テッド』の感想です。2月頃に長文感想を書いていたのですが、結局上手くまとまらずそのまま長期間放置してしまっていたのを大幅に書き直しました。ちなみにこのブログのヘッダー部分の絵は僕がiPadで描いたテッドで、描いてしまうほどテッドというキャラクターにハマってしまった。とりあえず年間ベストに入るレベルで好きな作品です。(今回の記事はネタバレしてます。)
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 僕が『テッド』を傑作だと思うのは、王道のブロマンス・コメディとディズニー的なファンタジーがうまく融合しているからだ。ブロマンスとは"brother"と"romance"の造語で、2000年代中頃からアメリカで人気となったコメディのジャンル。男女間のロマンスを男同士のホモソーシャルな友愛関係に置き換えて描いたのがブロマンス映画だ。大抵いつまでもバカな事で盛り上がっているボンクラたちのところへ女性が介入し、主人公は腐れ縁を続けるか恋愛を通して大人になるかの選択を迫られる。まだブロマンスをあまり観た事がない人は、『スーパーバッド/童貞ウォーズ』や『宇宙人ポール』をお勧めします。
 
 この映画のジョン(マーク・ウォルバーグ)とテッド(声:セス・マクファーレン)は幼少期からの親友で、三十路を超えた今でも同棲してバカな事をして楽しく暮らしている。ジョンにはローリー(ミラ・クニスどうやったら付き合えるんだ!)という美人な彼女がいるのだが、時にテッドとの友情を優先して呆れられる。テッドがクマである事を除けば、これはブロマンス映画のフォーマットに忠実にのって作られた粗筋だ。
 
 ジョンは基本的に未成熟な大人として描かれる。仕事には遅刻するし、フラッシュ・ゴードン』が大好きなオタクだし、何よりいい年こいて雷が恐い。そしてジョンを子どもたらしめているのは主にテッドとの生活で、ジョンもローリーよりもテッドを心の拠り所にしている。(セックス中に雷が鳴ったら行為を中断、テッドと一緒に歌を歌って夜を明かす!
 
 ちなみにテッドは人形なので外見は全く変化せず、テッドもジョンと出会った時から全く成長していないと言える。二人とも子供のまま大人になったので、ローリーの手を煩わせる。一般的にも女の子の方が早く精神的に大人になるしね。
 
 いい加減堪忍袋の緒が切れたローリーは、ジョンにテッドを家から追い出すように懇願する。ようやくジョンにも選択を強いられる時が来た。「相棒の為なら…」とテッドは長年過ごしてきたジョンのもとから遂に離れる。でも大概の男は女のために体面を繕うより親友とバカな事を過ごすのが好きな生き物なので、やっぱりジョンも仕事やデートをすっぽかしてテッドと遊びに行ってしまうどうしようもないバカ。結局ジョンとローリーは別れてしまう。

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 ジョンとローリーとテッドによる三角関係(?)の一方で、この映画に深く関わってくるのがドニー(ジョバンニ・リヴィシ)だ。幼少の頃よりドニーはテレビに出演するテッドに憧れて育ち、中年となった今でも大ファンで一人息子のためにテッドを購入しようとジョンに持ちかける。もちろんジョンは断るし、テッドも拒む。
 
 しかし、ドニーはその後も執拗にテッドを追う気味の悪さを見せ、終いにはテッドを誘拐してクライマックスに繋がって行く。ただここでドニーを単に気持ち悪いやつで済ますことはできず、実はドニーも内面は子供のままで全く成長していない(ドニーの家の壁にはテッドの大量のスクラップや写真(=過去)が貼ってある)。つまりジョンとドニーは二人ともテッドに人生を狂わされた人たちで、合わせ鏡のようなキャラクターになっている。優れた悪役というのは主人公の一面を背負うものだ。『レイダース』のインディとべロックみたいに。
 
 さて、クライマックス後ドニーは捕まるが、テッドは腹が裂けて中から綿を散らせて落下する。事件を通して仲直りしたジョンとローリーは何とかテッドの修復を試みるも息を吹き返さない。注目すべきはテッドの亡骸を前に二人が絶望しているシーン。背後で大きな雷鳴が轟くが、全くジョンは動じずローリーはそれを見て驚く。ジョンは精神的に成長し、テッドが不在でもようやく自立できるようになったのだ。
 
 しかし、ディズニーテイストを基盤としているので、このまま悲しい別れを迎えるはずがない。少年ジョンが星に願いを込めて人形が命を宿したように(まるで『ピノキオ』ですね)、今度はローリーが星に願いを込める。すると翌朝テッドは目を覚まし、ジョンとローリーをビックリさせつつもギャグを言う。大変ベタだけどとても泣ける演出!最後はジョンとローリーは結婚式を挙げテッドはそれを見守り、童話っぽくナレーションで締めながらしょうもないギャグを挟むエンディングは素晴らしく温かい終わり方だった。

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 嬉しいのは、『テッド』がアメリカン・コメディ不遇国の日本で異例な大ヒットを飛ばしていることだ。公開から4ヶ月経とうとしているのに、未だに上映をやっている。R18指定なのに最終興行収入42億円は見込めるというから驚きだ。「アメリカのコメディは日本では当たらない」なんて嘘だ。派手なアクションやスターが出ていなくても、キチンと配給がマーケティングに力を入れて作品の魅力を宣伝すれば多くの人が受け入れてくれることを『テッド』は証明してくれている。

 アメコメの多くはDVDスルーなので僕はいつも家で一人淋しく笑っているけど、皆でゲラゲラ笑って楽しく見るのがコメディの醍醐味!やっぱりコメディはどのジャンルよりも劇場で見るのに適している。『テッド』がこんな日本のコメディ不況に風穴を開けてくれる作品となってくれたら良いな。