7月に観た映画の感想

 毎月恒例の映画の感想ですが、更新する度に執筆ペースが遅くなる…。

 

 今月は『モール・ラッツ』『クラウド アトラス』『スーパーマンIV/最強の敵』『モンスターズ・ユニバーシティ』『最愛の大地』『スーパーマン リターンズ』『トロン:レガシー』『ピープルVSジョージ・ルーカス』『日本解放戦線 三里塚の夏』『東京流れ者』『スタンリーのお弁当箱』の11本の映画について書きます。

 

 『ワイルド・スピード MAX』『ワイルド・スピード MEGA MAX』『ワイルド・スピード EURO MISSION』については「『ワイルド・スピード』全キャラクター相関図」 を参考にして下さい。

 7月に集中的に観ていたジブリ作品は面倒くさいので 後日まとめた記事を考えているので、今回は割愛させて頂きます。

 

 


 「スーパーマンとロイス・レーンには子どもができないよな」「なんで?」「射精の勢いでロイスを殺しちまうだろ」なんて、バカで無意味なセリフを書きまくるケビン・スミス。(ちなみに本当にスーパーマンに息子ができるなんてケビン・スミスも思いもしなかっただろう)

 『クラークス』が予想以上に評価され売れた後、ユニバーサルから金をもらって本作を製作。ダラダラ一日中バイト先のコンビニでだべるだけだった前作と比べて今作は明確なプロットがあり、舞台もショッピング・モールへとグレードアップしたものの、興行的には大コケしてしまった。でもスタン・リー御仁が出演してくれてオタク監督ケビン・スミスにとってこれほど嬉しい事は無かっただろう。めでたくビュー・アスキューニバースも続いたわけだし。

 

 早稲田松竹で鑑賞。名画座上映とはいえ、劇場で観れて本当に良かった。

 予告編などの事前情報から単に俳優たちがメイクで輪廻転成していくだけかと思っていたが、時代毎に映画のジャンルまで変化していくのは新鮮だった。クライマックスでは6つの時代、つまり6つのジャンルのクライマックスが重なり合う。サスペンスだろうとコメディだろうと、映画の構造というのは全てのジャンルに通じていることを証明するような映画だった。

 また、前の時代ではメインだったのに、次の時代ではモブキャラになるという、各キャストのウェイトを均等に置くバランス感覚も面白い。エンドロールでどの役者がどのキャラを演じていたかをネタばらしをするが、「えー、あのキャラこの人だったんだ!」と驚く事間違いない。ただ、白人のキャストが韓国人を演じたり、逆に韓国人が白人を演じるのは流石に現代のメイク技術では無理があった。特に前者はどこか差別的に映ってしまっている。(挑戦しようというその気概は買うが。)ヒューゴ・ウィービングの女装はその時代自体がコメディ調なので不自然なのが逆に可笑しくて良い。

 

 とにかく、映画史としても前代未聞の事をやってのけた作品なので、必見の作品である。惜しむらくは劇場のスクリーンで堪能する事が出来なくなってしまったことだが、BDで反芻して観るのも絶対に面白い。

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 『スーパーマンIV』と『スーパーマン リターンズ』は一緒に。前者はもう記憶にすら残ってない。


 まぁ、それでも何書くとしたら、えー、母の話なんですけども、こないだ母親が『マン・オブ・スティール』のTVスポットをみて、「えー、これがスーパーマン!?こんなのスーパーマンじゃない!スーパーマンはもっとドジで明るくて楽しいやつだよー!」と憤慨していた。映画に疎い母がなんでスーパーマン知ってるんだろう(まぁ、そりゃスーパーマンくらいは知ってるだろうけどさ、)と疑問に思っていたら、大学4年の時アメリカにホームステイしたらしく、ホームステイ先の老夫婦に『スーパーマン』の映画に連れて行ってもらったことが思い出として残っているらしい。母の年齢から推測するに、恐らくその老夫婦に連れて行ってもらったのは『スーパーマンIV』だと思われる。そりゃニュークリアマンが基準だったら、『マン・オブ・スティール』なんかパチモンだよ! 

 

 さて、『〜リターンズ』の方はオリジナルを愛するブライアン・シンガーによるドナー版への愛が溢れた作品だった。*1面白かったけども、それよりもシンガーは本作製作のために『X-MEN3』から離れ、シリーズからジェームズ・マースデンも連れ去って『ファイナル・ディシジョン』が駄作となってしまった事を償って欲しい。(その償いが今製作中のX-MEN : Days of Future Past』である)

 ブランドン・ラウスは本当にクリストファー・リーヴの生き写しみたいで感動したのに、本作以降はパッとせず…。ところで世間では『リターンズ』は興行的にこけた作品として扱われているが、実は金額としてはメガヒットと言える。問題なのは企画段階に時間とお金をかけ過ぎてしまっていたから赤字になったので、続編にはプリプロの段階からそんなにお金はかけなくても良かったと思うが、結局スタジオ側が渋って企画は頓挫、『マン・オブ・スティール』までクラークは放浪を続けるハメになったのである。

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 ハリウッドの青春映画のフォーマットをモンスターでやったのがこの『モンスターズ・ユニバーシティ』。スポ根ものでもある。前日譚としてうまいのは、マイクを主役に添えた事。

 『モンスターズ・インク』ではあくまでコミックリリーフであり、行動も保守的だったが、まさかこんな真面目で努力家な学生時代を過ごしていたとは。逆に『〜インク』の主人公であんなに優しかったサリーは自分の才能を過信している嫌なやつで、マイクとは全く馬が合わない。至極単純なキャラ設定だけど、それでも新鮮な驚きを得られる。ランドールが最初ナードっぽくてマイクとルームメイトだったってのも笑ったなぁ。

 それとマイクは結局[最後まで勝てない]んだよね。だけど、キャラとしては成長を迎えるのでカタルシスはある、という『スカイフォール』と同じ構造。これも前日譚としては正しいオチの持って行き方。

 脚本だけでなく編集のテンポもよく、サリーとマイクが仲を深めて行くモンタージュは秀逸。クライマックスのホラー映画あるあるを盛り込むのも笑ったし、実際にホラーを見ない子供が観たらちゃんと怖いと思う。『カーズ2』、『メリダとおそろしの森』で落ちたピクサーブランドが、確実に復活してきている。次回作が楽しみ!


「モンスターズ・ユニバーシティ」オリジナル予告編 - YouTube

 

 あまり世間から注目されていないが、事実としてはあまりにも悲惨なボスニア内戦を描こうとしたアンジーは偉い。ただし、セルビア人の残虐非道さを描いてるのかと思ったら、過去にムスリムがどれだけ酷い仕打ちをしてきたかを語り、じゃあ『ミュンヘン』のように暴力の輪廻を主張したいのかと思ったら、エンディングで国連の内戦介入の遅さを非難…。全て事実なんだけど、あれもこれもと盛り込むうちに中途半端になってしまっている。また編集のテンポも最悪で、体感時間が上映時間+30分くらいに感じた。とりあえず繋ぎに困ったらフェードアウトを多用。調べたら編集のパトリシア・ロメールはあの『ツーリスト』も担当…。 なぜアンジーは彼女を連れて来た…。


アンジェリーナ・ジョリー初監督作『最愛の大地』予告編 - YouTube

 

 先月の『オブリビオン』でも書いたけど、本作がデビュー作のジョセフ・コシンスキー監督は次作の『オブリビオン』に撮影監督とプロダクション・デザイナーを続投しており、きっと自分のヴィジュアル感覚に自信を持っている。事実、本作のヴィジュアルはカッコいい。ダフトパンクの音楽も痺れる。なのに『トロン:レガシー』がつまらなくなってしまったのは全体的に『トロン』への愛が足りないからである。


 まぁ、ぶっちゃけて言うと、僕も『トロン』への愛は無い。もう内容すら覚えていない。しかし、そんな僕でも印象に残っているところがいくつかあり、それは「レーザーで固められて無数のブロックに分解されるシーン」、「直角に曲がるライトサイクル」、そして「顔がデカイMCP」などである。『トロン』にはジャン・ジロー・メビウス(『エイリアン』)やシド・ミード(『ブレード・ランナー』)がコンセプト・デザイナーとして携わっていたが、そのレトロフューチャーなビジュアルにより、『トロン』はカルト的な人気を未だに持っているのだと思う。

 それが『レガシー』だと現代的にアップデートされている。自信のある「ヴィジュアル感覚」とやらで。本家のキーイメージをそっちのけで全く生意気にも余計な事をしてくれる。その割には『スター・ウォーズ』やら『2001年宇宙の旅』やら『ブレードランナー』やら、引用元は古くさい。

 さらにまた驚きなのが、タイトルにもなっているトロンの扱い!あまりにもぞんざいで空いた口が塞がらなかったわ!『レガシー』から見る人は『トロン』がどういう意味だか分かるのか?トロイと勘違いしてんじゃないのか?

 

 と、このビジュアルとキャラクターのこの二点からも本作には『トロン』への愛が足りない事が分かる。ファンでない僕に指摘されるくらいなので、コアなファンの怒りはお察しします。その点、まだ『キングダムハーツ』の『トロン』のステージの方が愛がありましたね。

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 『ファンボーイズ』と同じで、観るのが大変恥ずかしかった…。インタビューに答えてる連中は言ってることは大変まともなんだけども、「ジョン・ウィリアムズは偉大だ」ってシャツ着てたり、背景に夥しく『SW』のグッズが並んでたり、まるで自分を客観的に観てるみたいで恥ずかしい…。いや、流石に最近は大人しくなってきたんですけども、小・中学生の時の自分がそのまま軌道修正せず行ってたらと思うと、ぞっとしますな。

 

 さて、『ピープルVSジョージ・ルーカス』は主張が偏っておらず、きちんとルーカス擁護派の意見も取り入れてるのがドキュメンタリーとして秀逸。特に子どもたちはジャー・ジャーを嫌っていないって事実には注目に値する。またルーカスが「オリジナルのフィルムを無くした」と主張しているのは面白い。でもファンは怒ってるけど、オリジナル版ってDVD化されてなかったっけ?*2


 ところで如何に新三部作が叩かれようと、僕はルーカスは神だと思っている。なので、JJだろうと誰だろうと、ルーカスから離れて勝手に作られていく新『スター・ウォーズ』には断固反対する。これを許してしまうと歯止めが利かなくなってどんどんシリーズが続いてしまう。

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 ドキュメンタリー作家小川紳介三里塚シリーズ七本の一本目。成田空港建設による、機動隊と農民の激突を描く。

 小川紳介の作品はそのほとんどがソフト化されていない貴重な作品ばかりだ。今回はオーディオトリウム渋谷の特集「はじめての小川紳介!」で鑑賞する事が出来た。僕はこの一本しか観ていないが、友人はなんと4日間の全10回の上映に臨んだという。僕は目の前の出来事に純粋にただただ圧倒されていただけだったが、先に見ている友人は結末を観ているため、すごくシニカルに映ったという。(まぁ、現に成田空港が建設されている時点で結末は容易に想像がつくが)

 ちなみに10月には日本映画専門チャンネルにて「総力特集 ドキュメンタリスト 小川紳介」が放送されるらしい。なんとかして他のシリーズを観てみたい。皆さんも貴重な機会なので、是非!


日本解放戦線 三里塚の夏 Japan Liberation Front : Summer in ...

 

 僕もそうだけど、映画の感想を言う際簡単に「外連味」という言葉が使われるが、今まで観た映画の中でも『東京流れ者』ほど「外連味たっぷり」という惹句が似合う映画は無い。美術やセット、役者も果てはロケ地までも鈴木清順は玩具として遊ぶ。ストーリーはハッキリと言って、目新しいものではない。むしろ『東京流れ者』において物語はネオンカラーで彩られた「画」を補色するものでしかない。この映画が公開されたのはなんと1966年、昭和40年代にこのように独特なイメージを伝える事が出来た鈴木清順は時代の先を爆走していたとんでもない天才だ。レフンがベストに上げるのも分かる。

 実はこの映画、渡哲也が歌う同名歌が元々存在していて、それに題材に映画が製作されたらしい。そして、今話題の藤圭子もこの曲をカヴァーしていた。


東京流れもの-藤圭子- - YouTube

 踊れよ!以上。


映画『スタンリーのお弁当箱』予告編 - YouTube 

 


 以上が今月分になります。7月はテスト期間で中々映画が観れませんでした。8月も多忙で全然観れてませんが…。

*1:この記事を書くために調べて驚いたんだけど、実はシンガーの『X-MEN』はリチャード・ドナーがエグゼクティブ・プロデューサーとして関わっている。今度の『Days of Future Past』でもプロデューサーとして関わるので、益々期待!

*2:これに関しては@massas52さんよりTwitter上でご指摘を受けました。ありがとうございます。

@HKtaiyaki SW旧三部作のオリジナル版のDVDは素材をLDからとった物しか出てなくて、その時のルーカス側の言い分が「特別編作った時に元のフィルム捨てたったw」だったんだけど、最新版が唯一無二のバージョンとしたいから単に隠してるのでは?というのもあって激怒してるという話。

しかし、映画内でこんな話があったか覚えてない。脳がもうメメント状態…。