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終末は皆でパーティだ!/『ディス・イズ・ジ・エンド』★★★

 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて鑑賞。というか、この作品のためだけに北海道まで飛んだと言っていい。何故なら後で詳しく書くけど、残念ながら本作は劇場公開されずにDVDスルー作品となってしまったからだ。
 
 そんな労力をかけて観に行ったこの『ディス・イズ・ジ・エンド』は、早くも僕の本年度ベストが確定した傑作だった*1もちろん、僕がセス・ローゲンの大ファンてあることや夕張旅行の思い出補正もあるが、贔屓目抜きにしても近年の数あるアメコメ映画でもトップクラスの傑作だと自信を持ってオススメします!
 

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セス・ローゲンが演じるのは…セス・ローゲン!!

 LA在住の人気コメディアン セス・ローゲンは、親友のジェイ・バルチェルと久しぶりに再開する。二人はジェームズ・フランコの新築披露パーティーに参加するが、突如この世の終わりが訪れ、ハリウッドスターたちが次々に惨殺される。そんな中、セス・ローゲンジェイ・バルチェルジェームズ・フランコジョナ・ヒル、クレイグ・ロビンソン、ダニー・マクブライドの6人はたまたま生き残り、フランコ邸で生き残りを図るのであった…といのがあらすじ。
 
 この映画の最大の特色は、役者たちが本人役を演じている点にある。
 
 セス・ローゲンはよく「自分しか演じられない役者」と批判される。大抵どんな映画に出ようとソファに座って男仲間とマリファナを吸っているボンクラ役であり、グリーン・ホーネットを演じてもその姿は伝説のヒーローというよりただのセス・ローゲンだった。
 
 実際本作中にもそういう自虐的なセリフが出てくるが、セス・ローゲンセス・ローゲンを演じる時点で世間からのイメージに対するパロディになっていて笑わせる。他のキャラクターも出演者の酷い風刺となっていて、そこが本作の面白い点であるのだが、残念ながら彼らの作品は日本で公開されないことが多いのでイマイチ日本の観客には分かりにくい。そこで鑑賞する時のガイドになるよう、彼らのプロフィールを紹介します。
 

セス・ローゲン

 セスは本作の監督と脚本を幼馴染のエヴァン・ゴールドバーグとともに手がけている。ジャド・アパトーの愛弟子であった彼らが作る作品は、脚本家デビューを果たした『スーパーバッド』以降ブロマンスを題材としている。本作ではそれを自虐的に演出しており、特にジェームズ・フランコとのやり取りはゲイっぽさも見せる。何故か乳をよく襲われる。

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ジェイ・バルチェル

 日本だと一番有名な代表作は『魔法使いの弟子』。『ファンボーイズ』のメガネオタク役も印象に残る。本作では唯一まともなキャラとして描かれるが、理由は二点あり、一つは観客の視点となっていることと、もう一つは役者ではないエヴァン・ゴールドバーグの代わりのキャラクターになっているからだ。ナヨナヨした風貌から、いつも弱々しいキャラや巻き込まれ役を演じることが多く*2、今回も人見知りでセス以外に友達がいないキャラを演じている。

 なお、本作の前身となる短編映画『Jay & Seth vs The Apocalips』でも主演を務める。

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ジェームズ・フランコ

 今回の出演者の中ではエマ・ワトソンを除けば最も有名。ご存知スパイダーマン』シリーズのハリー・オズボーン。他にも『127時間』『猿の惑星:創世記』『オズ』など、近年は売れっ子街道を突っ走っているが、元々ジェームズもコメディ畑出身で、ジャド・アパトー製作のTVドラマ『フリークス学園』でブレイクする。私生活でもセス・ローゲンとは親友で、セスが書いた『スモーキング・ハイ』で共演し、その作品で演じた間抜けな麻薬ディーラーのでゴールデングローブ賞にノミネート、最近ではカニエ・ウェストの非常にくだらないパロディを二人で作ったことで話題になった。

 このような仲の良さを反映してか、作中で自分とセスの名前を並べたアートを自慢げに披露して、流石のセスもちょっと引いていた。また、食料が限られている中、セスだけにクラッカーを多めに分けるなど、常にセスを気にかけている。うーん、ホモホモしい。

 ちなみに弟のデイヴ・フランコも『21ジャンプストリート』などのコメディ作品に出ずっぱり。

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ジョナ・ヒル

 セスとエヴァンの自伝的映画『スーパーバッド』でセスの少年時代を演じてブレイクしたが、『マネーボール』での演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたことをきっかけに、『ジャンゴ』などで真面目路線を固め、再び助演男優賞にノミネートされた『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では初来日まで果たす。そんなジョナが本作で演じるのはスター気取り。嫌いなやつにもわざとらしく優しく接したり、「僕はジョナ・ヒルだぞ、あの『マネーボール』の!」と、どこまでも嫌味なやつ!

 でもそんな嫌味なキャラをノリノリで演じている時点で本物のジョナが如何に懐が深い人物かが良く分かる。このポスターの写真も表情がムカつくのが笑える。

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クレイグ・ロビンソン

 恐らく一番の代表作は『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』なんだけど、僕は未見です。セスとは他に『スモーイングハイ』や『恋するポルノ・グラフィティ』などで共演している。元々はミュージシャンだそうで、小学校の音楽教師だった事もある。本作でも「リアーナ、パンツを脱いでくれ」という実に下らない歌を無駄に高い歌唱力で披露しており、サントラにはなんとスヌープ・ドッグとコラボしたバージョンが収録されている。シャツにも"TAKE YO PANTIES OFF!!"書いてある。

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ダニー・マクブライド

 6人の中で一番クセがある自己中心的な役を務めるダニーは、『Mr.ボディガード 学園生活は命がけ』や『スモーキングハイ』といったセスの他脚本作品でも一癖も二癖もある悪役*3を演じている。悪役というか、空気をぶち壊すガサツなキャラクターを得意としており、その破壊っぷりを本作でも遺憾なく発揮している。ダニーのキャラクターポスターは本編でのキャラを充分表した邪悪な表情。

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エマ・ワトソン

 説明は不要、ハーマイオニーである。6人で籠城しているところに斧を持って現れるのだが…。男臭いこの映画に花を添えてくれる。ちなみにダニー・マクブライドは『ハリー・ポッター』シリーズのファンらしい。

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マイケル・セラ

 今回一番イメージとのギャップで笑わせるのがマイケル・セラ。『スーパーバッド』ではエヴァンの少年時代を演じ、他にも『JUNO』や『スコット・ピルグリム』などで草食系男子ばかり演じてきたが、本作では打って変わってセックス、ドラッグ、バイオレンスやり放題のとんでもないキャラ。数分程度しか出演しないが、その役のせいで強烈に忘れ難いキャラとなっている*4。また、本作ではマイケル・セラジョナ・ヒルクリストファー・ミンツ=プラッセというファンには嬉しいトリオの絡みが見れる。

 ちなみに、マイケル・セラはイジられキャラとしても有名で、海外盤の『スーパーバッド』では、マイケル・セラがキャスト/スタッフ全員に嫌われているという設定で舞台裏が撮られている特典映像が、『ノックト・アップ』では実はセスの前にマイケル・セラが主演を演じていたという設定で、そのクビになる瞬間が特典映像として収録されている。

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 と、このように、エマ・ワトソンを抜けば、セス・ローゲンと関わりの深いコメディアン達が世界の危機に立ち向かう。*5

 笑ってしまうのは、セスが書いた脚本であるにも関わらず、ほとんどの登場人物がセスのことを好きだという風に描かれていることだ。もちろん、同性愛の意味ではなく、友人としての好意なのだが、セスが誰かと仲良くすると別の誰かが嫉妬したり、セスが死にそうになると皆悲鳴を上げる。

 そうか、これはブロマンスを描き続けてきたセス・ローゲンにとってある意味天国のような状況を描いているのか。世界の終わりが来ても、セスは誰よりも友人たちと過ごしたいのだ。

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これは最後の審判の日、ジャッジメント・デイだ!

 さて、天国と書いたが、本作は実は新約聖書に書かれている「ヨハネの黙示録」を描いた作品だ。予告編ではあたかも宇宙人の侵攻やマヤ文明の予言と関わりがあるように見せていたので驚きだった。

 僕はクリスチャンでもキリスト教に詳しいわけでもなんでもないので、知っている限りをざっと説明すると、ヨハネの黙示録とは最後の審判が描かれる新約聖書の最終章だ。キリスト教を信じる善人は天国へ導かれ永遠の命が与えられ、悪人と異教徒は地獄へ落ちる。予告編にも見れる青いビームは天からのラプチャー(携挙)だったのだ。

 この終末思想は未だに保守的なキリスト教信者の間で信じられているのだが、ユダヤ人のセスとエヴァンにとってこんなバカな話はない。新約聖書を読まないで育てられた彼らは、高校時代にプロテスタントの友人から「君はユダヤ人だから残念だけど地獄に落ちるね」なんて言われたりしたという。『ディス・イズ・ジ・エンド』はユダヤ系コメディアンの視点から黙示録を最大限におちょくってみせた訳だ。キリスト教系レビューサイトを探せば本作に怒っている記事が多いが、エヴァンは不思議がっているご様子。「だって、これが君たちが言ってた黙示録じゃないの?」笑えるのは、冒頭の審判が始まった時点で、フランコ邸にいる連中は誰もラプチャーされないこと。ハリウッド俳優で天国に行く奴はいないのだ!

 

 なお、キリスト教の終末思想を扱った傑作映画として『ミスト』があるが、『ディス・イズ・ジ・エンド』にも実にしょーもない『ミスト』のパロディが出てくるので、事前に予習しておくのをお勧めします。

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何故公開しないのだ、ソニーピクチャーズ!!!

 数々の傑作コメディを作ってきたセスとエヴァンが満を持して監督した『ディス・イズ・ジ・エンド』は、彼らが得意なブロマンスでディザスター映画をブレンドしつつ、保守的なキリスト教終末思想を皮肉った新たな傑作だったわけだが、冒頭に述べた通り日本では劇場公開されることは無くなってしまった。当初2013年夏公開とアメコメファンに期待を抱かせたのに、夏どころか冬を過ぎても一向に公開する気配を見せず、結局5月7日にDVDのみでの発売が決定した。

 確かに日本ではコメディ映画は当たりにくいのだろうが、やはりこの映画を公開しなかったのは不思議でならない。『マン・オブ・スティール』や『スター・トレック イントゥ・ダークネス』、『モンスターズ・ユニバーシティ』などの強力なライバルが並ぶサマーシーズンの中、R指定作品ながら1億ドルを超えるヒットを飛ばしている*6R指定のコメディが大ヒットを飛ばす例は『テッド』が記憶に新しい。

 じゃあ、キャストが日本でメジャーじゃないからかというとそうでもなく、ジェームズ・フランコエマ・ワトソンは当然日本でもファンは余るくらいいるし、『グリーン・ホーネット』『50/50』『テイク・ディス・ワルツ』とセス・ローゲンの出演作が日本で公開される機会も増えている。一番活躍が目覚ましいのはもちろん二度もオスカー候補となったジョナ・ヒルで、先述の通り来日だって果たしている。

 ダメ可愛いキャラクターがヒットの要因となった『テッド』ほどのヒットは見込めないにしても、これだけポテンシャルがあるんだったら、真摯に宣伝して適度な劇場数で公開すれば、ある程度のヒットは見込めるはずだったんじゃないか?

 で、DVDスルーならDVDスルーで当然のようにその扱いは最悪で、これまたコメディファンをバカにしている。取り敢えず商品を見て欲しいのですが、

 ひっでぇな、これ。

 まずね、副題とジャケット。未だにコメディ映画を一括りに「俺たち」シリーズでまとめてやがる。それぞれ製作者も違えば『ホット・ファズ』のように制作国すら違う作品を同列に扱うのはいい加減止めて頂きたい。DVDスルーとなりただでさえ知名度が低いのに、B級コメディかと誤解を受けてしまう。ジャケットもシンプルな海外版*7と比べてダサい上に寒い。


 しかも、DVDのみでしか販売しやがらない最後の審判を扱った映画ということで、それなりにVFXを駆使したスペクタクルなシーンもあるのに、BDのHD画質で楽しめないのは残念な事この上ない。

 

 そしてその容量のせいなのか手抜きなのか、特典も貧相。セス・ローゲンによる音声解説、スポット別のメイキングなど海外盤には収録されている特典映像が入っていない。何より、『ディス・イズ・ジ・エンド』の元となった短編映画『Jay & Seth vs. The Apocalypse』も当然これも収録されていない。(もちろん、海外盤には収録)どうせソフトでしか販売する気がないのなら、特典制作に力を入れろよ!

 

 一番訳が分からんのが、吹き替え。「今旬なハーフ芸人2人(植野行雄(デニス)、アントニー(マテンロウ))が吹替え! 」って知るか!『アベンジャーズ』や『プロメテウス』から何も学ばねーのか!セスやジェイが関西弁喋ってたらぶっ殺すぞ!


 んでイライラして商品紹介を見ると、

SFアクションもド迫力! L.A.を突如襲った大地震! そして「エイリアン」を彷彿させる地球外生命体の猛威! SFアクションの要素もたっぷり詰まった娯楽作! 

 ふっざけんなよ!!!!

 もうキレた。日本でアメコメが不遇な理由が分かった。「ギャグが日本人に分かり辛い」だとか「キャストが有名じゃない」だとかそんな理由じゃなくて、配給側が基本的にクソなんですね!お前らこそ地獄に堕ちろよ!*8

 と、最後は呪詛のような言葉になりましたが、映画自体は本当に大傑作なのでレンタル開始の際は是非家で観て下さい!なるべく友人も多く呼んで!そして観終わったら皆でソニーピクチャーズに抗議文を送ろう!!


『ディス・イズ・ジ・エンド』衝撃の本編映像 - YouTube
ちなみに悲しいかな、公開予定だった時に一応日本語字幕つきの予告編まで作られていた…。

*1:とはいいつつ、まだ10ヶ月もあるので何が起こるか分かりません。だって去年も『テッド』がまさかのベストテン落ちだったしなぁ…。

*2:5/25追記 リブート版『ロボコップ』にも出てましたね。オムニ社社員を演じてたけどやっぱり小物で笑ってしまった。

*3:ネタバレだが、『スモーキングハイ』では後半で味方になる。そして本作では『スモーキング・ハイ2』が実現する!

*4:ちなみに、本作でリアーナのケツをひっぱたくシーンがあったが、いかんせん根が草食すぎるので、中々ケツを叩けず苦労したらしい。なんとも可愛いエピソードだ。

*5:あと、軽いネタバレですが、チャニング・テイタムがトンデモない役で出演してます!どこで出るかはお楽しみに!

*6:『マン・オブ・スティール』と同時公開により初登場2位だったので一部で「コケた」と報道されたが、週を重ねても安定した観客数を保ち、地道に収益を大ヒットとなった。

*7:こちらがその海外版ジャケット。何がなんだか分からないのがイイ!

 

 

*8:一応『ディス・イズ・ジ・エンド』を配給したソニーピクチャーさんを擁護しておくと、ゆうばりで上映するだけでも結構な苦労だったと思うんです。劇場で鑑賞する機会を与えてくれた事には素直に感謝したい。でも、それとこのDVDの仕様はまた別の話で…。