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おとぎ話版『アベンジャーズ』/『イントゥ・ザ・ウッズ』★☆☆

『イントゥ・ザ・ウッズ』を鑑賞。同名のブロードウェイミュージカルをディズニーが映画化、監督にロブ・マーシャルを迎え、メリル・ストリープエミリー・ブラントアナ・ケンドリッククリス・パインジョニー・デップら豪華役者陣が共演する。

※ネタバレありきで書きます。ご注意ください。

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 昔々、とあるところに、シンデレラ赤ずきんちゃん、おバカなジャック、そしてパン屋を営む夫婦が暮らす王国があった。パン屋の夫婦には子供がいなかったが、ある日彼らの元に魔女が訪れ、今まで子供が授からなかったのはパン屋の主人の父親が犯した罪に対する呪い故だったことが判明する。その罪のために魔女もまた呪いをかけられ、醜い老婆の姿に変えられてしまったのだったが、魔女はお互いの呪いを解くために、三日後の満月までに「1.ミルクのように白い馬」「2.赤い頭巾」「3.トウモロコシのように黄色い髪の毛」そして「4.黄金の靴」を三日後の真夜中までに魔女の元へ持ってくるよう、夫婦に命じるのであった…。

 

 予告編の段階では『キングダムハーツ』みたいに個々の独立したおとぎ話の世界がリンクして物語が展開されるものだと勝手に思っていたが、実際にはパン屋夫婦と魔女という本作オリジナルキャラクターを軸に、皆が良く知る童話のキャラクターたちの関係が密に絡み合う、というものだった。4つのアイテムをめぐって、シンデレラ、赤ずきん、ジャック、ラプンツェルと、本来出会うはずがなかったキャラクターたちが掛け合う会話が楽しく、「おお、まるでおとぎ話版『アベンジャーズ』のようじゃないか!」と面白く観れた。流石マーベルを傘下に携えるディズニーだけあり、各世界観の共有が違和感なくうまくいっている。

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 もう一つ、面白いと思ったのは、パン屋夫婦の描写だ。彼らが4つのアイテムをめぐって森に冒険するそもそものきっかけは「子供が欲しい」というものだったが、最初は夫婦のコンビネーションはちぐはぐで中々うまくいかない。旦那の方なんかは奥さんを邪険に扱ったり、奥さんの方も旦那を全然信用してなかったりするのだが、冒険の途中で4つのアイテム、つまり子供を得るためにはお互いの協力が必要であることに気づくのだった。…ってこれ、まるで不妊治療じゃん!

 

 不妊治療がうまくいくためにはパートナーが片方に任せっきりにするのではなく、お互い協力し合うことが大事だとはNHKのニュースなんかでもよく聞く話だけど、近年のディズニー映画は『塔の上のラプンツェル』では親からのモラハラ、『アナと雪の女王』ではマイノリティ*1の問題を裏のテーマとして描いてきたので、ひょっとしたらこの夫婦も意図して描かれているのかもしれない。

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 とまあ、ここまでは面白く観れたんだけど、実はこの映画は「パン屋の夫婦が子供が授かって終わり」ではなく、後半で「めでたしめでたし」のその後が描かれる。そしてその後半部分から急にテンポがダウンする。

 

 後半はジャックに殺された旦那の復讐を果たすために女巨人が豆の木を伝って地上に降り立ったことで、王国がめちゃくちゃになるところから始まる。こう書くとスッゲー面白そうなのに、スペクタクルなシーンが一個もないの!ロブ・マーシャルは何を思ってか女巨人の顔をわざとスクリーンからずらしたり、木々で隠したりして徹底的に巨人を見せようとしないし、巨人も小石を頭に当てられたくらいで死んじゃうから全くカタルシスがない*2。何よりタイトル通り舞台がずっと森の中で代わり映えせず、夜のシーンも多くて暗くて大資本で作られたミュージカルなのに絵面がとても地味で飽きちゃう。

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 あと、舞台版から短縮されたことで後半の展開が雑になったのも問題だと思った。というか、僕は舞台版は見たことがないけど、観てて首をかしげるシーンが多かったので、逆に英語版Wikipedia*3で調べてから知ったんだが、映画化にあたりディズニーは暴力的なシーンや性的な要素を省いたそうだ。例えば舞台だとジャックの母親が死ぬシーンなんかは杖で殴られて死ぬが、映画版だと押されてコケて死んでてなんとも言えない珍妙なシーンになったし、シンデレラの王子様がパン屋の奥さんにキスする下りもあまりにも急だったけど、舞台版だと二人は浮気関係まで発展していたのだがこれもカット。

 

 ディズニーらしいっちゃらしい脚色だが、ファミリー向けにした結果ダークなお伽話がウリだった原作の魅力を殺してしまったんじゃないだろうか。前半が面白かっただけに、この後半のつまらなさは残念だった。まあ、多くの童話が「めでたしめでたし」で終わるのはその先は退屈だからだよ!ってことなんじゃないでしょうか。

 

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 あと、関係ないけど、ジョニー・デップ僕がジョニー・デップを応援していることはもう言うまでもない*4が、本作がアメリカでヒットしたニュースや批評家受けの良さに「お、ジョニー・デップ久々の当たり役じゃん!」と期待してたんですよ。そしたらあっさりと腹を割かれて、総登場時間10分もなく死ぬの!ズッコケー!なんだよ、「話題を呼ぶためにジョニーは出すが、あいつが出ると質が落ちるから出演時間を大幅に減らす」ってことか!狼ジョニデが死んだときは悲しかったけど、扱いの酷さにちょっと笑っちゃったよ!


映画『イントゥ・ザ・ウッズ』予告編 - YouTube

 

イントゥ・ザ・ウッズ オリジナル・サウンドトラック

イントゥ・ザ・ウッズ オリジナル・サウンドトラック

 

 

*1:『アナ雪』はよく同性愛者を描いた映画と言われています。

 

taiyaki.hatenadiary.com

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*2:このシーンの直前のミュージカルで、いざ巨人を倒そうって時に赤ずきんちゃんが「人殺しは良くないと思うの」とかぐだぐだ歌い始めるから「いいから早く終わらせろよ!」と思ってしまった。

*3:Into the Woods (film) - Wikipedia, the free encyclopedia

*4:

 

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