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彼はHumanかPropertyか。/『テッド2』★★☆

感想 映画

 金曜日に公開されたばかりの『テッド2』(日本は8月28日公開)を鑑賞。前作同様セス・マクファーレンは監督・脚本・製作そしてテッドの声優を務め、相棒にマーク・ウォルバーグが続投。他にもジョバンニ・リビシやジェシカ・バース、そしてサム・ジョーンズも再登場し、新たなヒロインとしてアマンダ・セイフレッド、そしてモーガン・フリーマンら新キャストも迎える。

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  前作で恋人となったテッド(セス・マクファーレン)とタミー・リン(ジェシカ・バース)はサム・ジョーンズが司祭を務める結婚式の下で華々しく夫婦となった。一方で、前作で結ばれたはずのローリーと半年前に離婚したジョン(マーク・ウォルバーグ)がショボくれているのがテッドの唯一の気がかりであった。

 

 しかしそれから1年後、テッドとタミー・リンは顔を見合わせるたびに大げんかをするほどその夫婦仲は険悪なものとなっていた。夫婦関係改善のため二人は子供を持つことに決めたが、肝心のテッドにアレがないので子供が作れない。ジョンと一緒にパディントンの格好をしてアメフトのスター選手トム・ブレイディの精子を盗もうとするなど試行錯誤を重ねるも、一方のタミー・リンの精巣も重度のドラッグの使用歴により子供が産めない体になってしまっていたことが判明。

 

 そこで二人は養子をもらうことに決めるが、査定の結果テッドは人間(Human)ではなく物(Property)であると判断されてしまう。さらに最悪なことに査定によりテッドの身分が公に「物」だと決められてしまったため、テッドは職を失いタミー・リンとの婚姻関係も解約されてしまう。状況を改善するため、テッドとジョンは新人弁護士のサマンサ・L・ジャクソン(アマンダ・セイフレッド)を雇うのであった。

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 僕はアメリカに来てまだ1ヶ月しか経っていないが、その1ヶ月の間でアメリカにおける多様性や人権、自由や正義の意義を考えさせられることが3つあった。まずチャールストンの黒人教会で起きた人種差別主義者による無差別銃乱射事件、米連邦最高裁判所同性婚を合憲と認めるニュース、そしてこの『テッド2』の公開だ。

 

 本作でテッドは自由のために法廷で自分がHumanかPropertyかを巡って争う。劇中1977年に社会現象を巻き起こした奴隷制についてのテレビドラマ『ルーツ』*1をジョンとテッドが観るシーンからも分かるように、これは明らかに奴隷制時代での黒人の扱いを下敷きにしている。劇中で「物(Property)」と呼ばれて怒るテッドは何も冗談なんかじゃなくて、ついぞ150年前にアメリカで実際に行われてきたことなのだ。タランティーノの傑作『ジャンゴ 繋がれざる者』でもディカプリオ演じるキャンディは奴隷を「My property」と呼んでいた。 実際セス・マクファーレンは、今回のプロットは前作『荒野はつらいよ』の脚本のリサーチの最中にジョン・ジェイクの『南北戦争物語』やドレッド・スコット*2の資料を読んで思いついたそうだ。

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 そういえば今日本でも大きな話題を呼んでいる『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でもイモータン・ジョーが5人のブリーダーズを奪われた時「Where is my property!」と激怒していた。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で「ストーリーがない!」とバカにしている連中は『テッド2』を観ても「ははは、くだらないな」と笑って済ましちゃうんだろうな。決してそれらの描写が絵空事ではないのは、未だに黒人を畜生以下だと見なして殺す人がいたり、同性婚がアメリカで認められるまでかかった年月から考えれば分かるっていうのに。

 

 …いや、まあ『テッド2』がくだらないのは事実なんだけどさ!*3


映画『テッド2』R15+予告編 - YouTube

*1:

ルーツ (テレビドラマ) - Wikipedia

*2:

ドレッド・スコット対サンフォード事件 - Wikipedia

*3: 話から逸れるのであえて本文では述べなかったが、『テッド2』には映画の出来として二つ問題点があると思っている。一つはジョンとローリーとの関係。いや、ミラ・クニスが妊娠により撮影に参加できないのは知っていたんだけど、だからって離婚した設定にするのは残念極まりない。だって前作はブロマンス映画の典型である「マンチャイルドが大人になるまで」をクマのぬいぐるみでやったからクライマックスが感動的だったのであって、その成長を後押ししたローリーを酷い女呼ばわりしたのは不誠実だと思うし、続編で相変わらずジョンとテッドがマリファナ吸ってバカやってんのは退化だと思う。それがセス・マクファーレンの作風なのは分かるけどさ…。

taiyaki.hatenadiary.com

 

 もう一つの問題はギャグがストーリーの流れをぶった切ってること。いや、ギャグ自体は前作と同様あるいはそれ以上に過激で面白いですよ。ただ、あまりにもギャグを詰め込みすぎてて、というかギャグありきになっちゃってて、例えば僕が書いたあらすじからを読んでたら感じるかもしれないけど、養子を取るための裁判がメインプロットだったら明らかに精子云々の話は不要。だからこんなバカ映画なのに尺が2時間近いんだよ!

 

 ただ、後半の舞台はコミコンになるということもあって、オタクネタ満載なのが嬉しいし、アメリカの観客は本当に反応がいいのでアメリカでコメディを観るのはとても楽しい。