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トムの辞書に不可能という文字はない。/『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』★★★

感想 映画

 ついにシリーズも5作目の『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』を鑑賞。主演・製作は言わずもがなトム・クルーズ、監督はトムと『アウトロー』で組み、他のトム主演作でもシリーズ前作『ゴースト・プロトコル』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などで脚本を担当し、何かとトムからの信頼が厚いクリストファー・マッカリー。助演は1作目から登場するヴィング・レイムス、3作目からのサイモン・ペグ、そして前作から続いてジェレミー・レナー、新規キャストにはヒロインとしてレベッカファーガソン、CIA長官にアレック・ボールドウィン、そして悪役にショーン・ハリスが登場。

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 IMFのエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は謎の多国籍スパイ組織<シンジケート>を秘密裏に追跡していたが、催涙ガスによって敵の手に落ちてしまう。目覚めると後ろ手に拘束されており、目の前には謎の女(レベッカファーガソン)と、3年前に死亡したはずのエージェントがいた。まさに拷問が始まろうとしたその時、女は驚くべき格闘術でイーサンを脱出させる。ブラント(ジェレミー・レナー)からIMF解体を知らされたイーサンは<シンジケート>の殲滅を誓うのだが、彼は国際手配の身となっていた…。組織の後ろ盾を失ったイーサンと仲間たちは<シンジケート>とどう闘うのか?敵か味方か、謎の女の正体とは?そして究極の諜報バトル、その結末は―?? 

 

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 クライマックスで絶体絶命の危機に陥いるIMFのメンバー。ブラントがイーサンに聞く。「もし行って戻ってこれなかったらどうする?」「必ず戻って来る」…それ答えになってねーだろ!しかしこのセリフの力強さこそがトムがこの映画で体現しているものでもある。

 

 トム・クルーズももう53歳である。日本の芸人で言えばとんねるずと同い年だ。もう危険なコントは若手に任せ、司会席でゲラゲラ笑ってるだけいい大御所ポジションである。新しい企画に手を出すことにも消極的で、ついにはレギュラー番組は1本だけになっちゃたりする。しかしどういうわけか世界のトム・クルーズ歳をとればとるほど映画製作に力を入れ、どんな危険なスタントも自分でやりたがるようになった。

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 例えば前作『ゴースト・プロトコル』でブルジュ・ハリーファを自らよじ登るスタントにもタマゲたが、今作では飛行中の輸送機の壁にやはりボディダブルを使わずにへばりつく。「え、頭おかしいんじゃないの!?」と『世界衝撃映像100連発』を観ているかのような錯覚さえ覚えるが、さらに僕を驚かせたのは予告編でも見られたこの作品の視覚的な"ウリ"となっているシークエンスが、オープニングに向かうまでのインサイト・インシデントでしかなかったことだ。クライマックスでないにしろ、中盤の見せ場ですらないのかよ!これ以上の見せ場が本編にあるというのか!

 

 実際に水中シークエンスの焦燥感たるや。フィクションであるにもかかわらず「え、トム死ぬよ!?」と心配してしまうのは、「この撮影のために6分間息を止めた」というエピソードが単に宣伝のために作られた話ではなく、長回しで本当に泳いでいるのをまるで記録映像のように撮られているからだ。「え、トム大怪我するよ!?」と息を飲むのは、カースタントやバイクスタントですらボディダブルを使わずにトムが爆走するのをアップで撮っているからだ。

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 とんねるずマッコイ斉藤がいるように、スターが輝くには優秀なクリエイターが必要である。本作のメガホンを撮ったクリストファー・マッカリーの演出には前作のブラッド・バートのような派手さは無いものの、そのスマートで渋い手腕には感嘆とさせられるばかりであった。例えばウィーンの劇場でのシークエンス。ベンジーが劇場に入るとカメラはパンをして怪しげな警備員を写し、そのままオーストリア首相をワンカットで写す。全編を通して「誰が」「いつ」「どこで」「何のために」「何をしているか」が大変にわかりやすく、観ているこちらの頭の中に舞台の間取りさえ入ってくるのはさすが脚本家出身の演出というべきだろう。その緻密なシーン設計に驚かされるだけでなく、『トゥーランドット』上映中の静と動を対比したアクションも見事だ。

 

 死をも恐れないスターと、その「見せ方」を分かっている演出家。幾度なくパラマウントの重役やトムのエージェントは止めに入っただろう。「やめておけ、もし大変な事態になったらどうする!?」しかし、彼らの答えは決まっていて「必ずやり遂げる」。答えになってないが、だから最近のトム・クルーズの作品から目を離せないのだ。


映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』ティザー予告映像 - YouTube