ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』がNetflixで今日まで配信だというので、慌てて鑑賞。言わずと知れた超名作なので、あらすじとかはいいよね。ネタバレ有り。
不勉強なものであまり古典的な名作を観てこなかったのだが、しかしビリー・ワイルダー監督作はどの作品も「古い映画」というフィルターを外しても今観ても面白いので、安心して観れるという点で大好きな監督であった。そしてこの『サンセット大通り』も不気味ながらクールなオープニングから、哀れで怪奇な結末まで、夢中で観た。
なんといっても、ノーマ・デスモンド(グロリア・スワンソン)の面倒くささが面白く、現代的な用語で言えばぶっちゃけメンヘラである。「寂しくて仕方ないの!わたしを憎まないで!」「出て行ったら死ぬから!この銃で自殺するから!」ああ、面倒くさい!金と名声が腐るほどあるというのがまた面倒くささを増長して、彼女は両者を駆使して夢を叶えようとする。しかし、彼女がそれらを使えば使うほどジョー・ギリスの心を得ることも女優としてスクリーンに復帰することも難しくなっていくのだ。
しかし、実はノーマよりもヤバいんじゃないかと思うのは、執事のマックス(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)で、ノーマが「未だに週に1万7千通以上ファンレターが届くのよ!」と胸を張るが、このファンレターは全てマックスが偽造したものである。17000を7で割っても1日約2430通ほど書いている。しかもマックスはノーマの精神が崩れないよう細心の注意を払っているので、きっと疑われないよう一通一通違う内容で書いているのであろう。新年明けてから1日1記事で書いてるこのブログですらもうネタが尽きそうだってのに、その努力を思うだけで涙ぐましい。
マックスの正体はノーマを見出した元映画監督かつ最初の旦那というのも常軌を逸している。ノーマの旦那は三人いたというから、ジョーが来る前にもノーマが少なくとも二人と懇ろやっているのをマックスはじっと見守ってきたのだろう。マックスは自ら育て上げたスターのために自分の人生を費やしており、もはやノーマが幸せに生きれるように尽くすことを生きがいとしているのだろう。ノーマはマックス無しでは生きられないが、マックスもノーマ無しでは生きられず、禍々しい共依存状態にあるのだ。ノーマはこの物語の後、おそらく刑務所か精神病院に入れられただろうが、ノーマと離れたマックスはどうやって生きていくのだろうか。
メンヘラ―壊れた女たち―<メンヘラ―壊れた女たち―> (KCGコミックス)
- 作者: 坂辺周一
- 出版社/メーカー: ブックウォーカー
- 発売日: 2012/11/26
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る