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Taiyaki生きてます通信#10/忍者の映画を作っていたら警察呼ばれて大学が閉鎖されてしまった話。

 ここんとこ何かあったことをずっと匂わせてましたけども、ようやく書く時間が生まれたので詳細を書いていきます。 

 

  • 一応僕もアメリカに留学しているのは映画の勉強をするためであって、日本にいた頃みたいに自主映画を作りたくてウズウズしていた。去年の11月にジェームズ・ボンドのパロディ予告編を撮りこれが予想以上にウケ、2月末にアーカンソーの州都リトルロックの方で偽予告編コンテストがあるというので、友達とそれに出品することにした。
  • 偽予告編コンテストはジャンル映画をテーマとしているので、なるべくバカな映画を作ろうという方針のもとジャンルは忍者映画で固まった。それが全ての始まりであった。
  • 2/14、部屋にあったありったけの黒い服(a.k.a.僕の映画Tシャツコレクションたち)を学生会館に持って行く。学生会館の中にはカフェテリアとフードコートがあり、そこにバレンタインデーに僕に付き合ってくれる暇人の友人たちと集合した。
  • 忍者の映画なので、3人の俳優たちには全身黒い衣装を着てもらい、僕が持ってきた黒Tシャツで黒頭巾を作る。ちょうどこんな感じ*1。カフェテリアから出てきた知人たちからも「また映画撮ってるの?」なんて声をかけられたりした。
  • さて、準備も終わり、学生会館から外に出る。出てから3分くらいだろうか、一眼レフのセットアップも終わり、いざクラインクイン、って時に生徒たちが一気にワッと外に出てくるのを見かけた。
  • 一人の生徒に話しかけられる。「何をやってるんだ?」「え、映画撮ってるけど?」「また学校に武器持ったやつが現れたらしいぞ、逃げろ!*2「は?」後ろを見るとショットガンを構えた警官が学生会館に向かって歩いているのが見え、そういえば遠くからパトカーのサイレンの音がする。「撮影は後だ、逃げろ!」とスタッフに指示を出し近くの女子寮に避難する。

  • 女子寮には多くの生徒が逃げ込んでいて情報が溢れかえっていた。学校からの緊急メールも流れる。曰く、「学校内に2人の銃を持った男が歩き回っているとの通報を受けた」とのこと。この時、僕たちスタッフ一同は「撮影初日に面倒なことしやがって!」程度にしか思っていなかった。
  • しかし、パトカーが増える一方で、全く犯人の姿が見える様子もない。警察も建物に入ってきて不審者がいないか聞いきに回っている。ここら辺で「……あれ?」という嫌な予感がする
  • 学内メールの情報が更新される。「学校内に3人の武装した黒服男が逃走中とのこと」これを見てスタッフ一同青ざめた顔をあわせる。「これ俺らじゃないか…?
  • しかしイマイチ確証は持てなかったのは、「武装した」の部分。忍者映画なので銃なんて持ってなかったし、それどころか武器らしい武器すら持ってなかった。強いて言うならば、腕に取り付けることができるアサシンクリードみたいなかちっょいいオモチャのプロテクターを持っているだけだった。どう見ても偽物。
  • 建物内でも「これはデマなんじゃないか?」という見方が強くなったところで、警察からロックダウン解除のお知らせ。周囲が安堵のため息交じりで出ていく中、スタッフ一同集まる。「…自首しよう
  • しかし、その場にいたのはアジア人、メキシカンだけだったので、バイブルベルトのアーカンソーで有色人種だけじゃまずい、ということで、忘れ物を取りに行ったまま別の場所に避難していた白人の友人が来るまで待つことにした。
  • 白人の友人はニヤニヤしながら戻って来た。どうやら最初から僕らだと思っていた様子で、「自首するの手伝って欲しいんだけど…」と聞くと「いいよ〜」と全く心配した様子を見せない。
  • 学生会館一階にいた、ライフルを持っているけど一番穏やかそうなお爺ちゃんに話しかける。「あのぉ、犯人って結局出てきました?」「それが全然出てこないんだよ」「いや、実はその…忍者の映画を今日昼過ぎに撮ってまして、多分色んな誤解を生んでしまったと思うんですけども…」お爺ちゃん警官が呆れ笑いを浮かべてライフルの銃身を下げてついてくるように言われる。「本当にすみません…」「まあ、よくあることだよ」よくあることなのか…。
  • 二階に設置された臨時の捜査本部みたいなところに連れて行かれる僕と友達。もう一度映画を撮影していた旨を説明し、警部っぽい人に他の役者メンバーを連れてくるように言われ、全員で供述書を書かされる。「本当に申し訳ない…」というと「俺前も書いたことあるから平気だよ〜」とメキシコ人の友達。「え、ななにしたの?」と聞くと「メキシコ人だっただけ」。うーん、アメリカ…。
  • 供述書を書いた後に全ての黒衣装(a.k.a僕の映画Tシャツコレクション)と忍者のおもちゃが取り調べのため没収される。一応返してもらえるらしいが、いつになるかはわからない。翌日から着る服が少なくなって地味に辛い。
  • 解放されて一階に戻ると、心配していた他の撮影メンバーが初老の女性と地元のテレビ局の記者と一緒に待っていた。初老の女性は僕が所属している学部のP教授だった。二人きりで話がしたいということなので、仲間が遠目で見守る中席を離れる。
  • 大目玉を食らうかと思ったら、「今日1日で色んなことを学んだでしょう?」と、P教授はとても優しかった。もちろん注意はされたが、それでも「今回の件をきっかけに、映画を撮ることに絶対に臆病になってはいけない。」と励ましてくれたし、「いい機会だから、今後何か助けがいるときに使って」と連絡先も教えてくれた。P教授はメディア・マネジメントの講義を教えているらしく、「今回の事件は他の生徒たちにもいい勉強になるから、今度授業にゲストスピーカーとして話して欲しい」と頼まれた。
  • そのあと、学部の卒業生で地元のケイトTVで記者をやっている人から取材を申し込まれた。僕が喋ることで何か学校が問題になるんじゃないかと不安に思い、P教授の顔を見ると、一応取材の目的はニュースが一面的にならないよう、当事者からの視点を取り入れたいのと、地元住民の不安と誤解を解くためだという。記者の娘もP教授の講義を取っているとのことで、信用できそうだとニュースの取材に答える。ケイトTVのあとはFOXニュースにも取材を申し込まれたが、FOXニュースは大嫌いなので断った。
  • ちなみに、ロックダウンの最中は速報としてCNNで全国放送されたらしい。あとから友達には「今、アメリカでは最高裁判所の判事が亡くなったことが政治的な理由で大ニュースになって一日中流れてるんだけど、その大ニュースを君たちが中断したんだ!」と笑われる。
  • TV放映後は色んな友達から電話やテキスト*3が入る。僕は「ジョーンズボロで一番有名な日本人になる」という目標を立てて留学してから色んな友達を作っていたが、思わぬ形でそれが実現されてしまった。
  • さて、Facebookの学校の公式ページを見ると、僕たちが起こした事件の顛末について書かれていて、そのコメント欄が大荒れに荒れていた。こんなに笑ったニュースはない、と言う者、全く笑えない!と言う者、アメリカの銃社会について語る者、撮影前に許可をとるべきだった、という者。色んな意見を読んだが、当事者の僕としてはここまで大きな騒ぎを立ててしまったのは本当に申し訳ないし、目立ってしまって大変恥ずかしい。
  • 自分のFacebookページにも謝罪ポストを長文で書く。コメント欄の大半が「絶対に君だと思ってた」だった。
  • ただ、色々と言ってくる人もいるのでこれだけは主張しておきたいんだけど、僕たちは学校の規則は何一つとして破っていなかった、ということだ。学校の撮影に関する規則は、商業的撮影利用は制限するものの、生徒によるプロジェクトには全面的に支援していて、許可すらとる必要はない。また、今回騒ぎの発端となった武器についてだけど、何度も言う通り僕たちはオモチャのプロテクターしか持っていなかったし、それらしいモノすら所有していなかった。ただ、黒い衣装が怪しく見えた点は認める。ちょうど12月にスクールシューティング未遂が起きたばかりだったこともあり、誤解の重なりが今回の騒ぎを生んでしまった。
  • さて、事件が終わってからも新聞の取材を受けたり、学生管理課からの諮問を受けたりと、色々続いて先週は大変な1週間だったのだが、それについてはまた明日書く。ただ僕が最後に書いておきたいことは、今回の事件に対して、周りの友達や僕の学部がちょっと信じられないくらい協力的で、これほどまでに感謝の念が尽きないのは初めてで涙が出そうな毎日を送っている。
  • MENコス 忍者

    MENコス 忍者

     

     

*1:

*2:

*3:アメリカでは若者同士はLINEなどのトークアプリよりもSMSが連絡手段としては主流で、それで連絡することをテキストすると言う。