ナメクジ級のスローペスではありますが、読書習慣を身につけようと頑張っております。今回も青空文庫で岡本綺堂の『怪獣』を読みました。ただタイトルに釣られて読みました。また適当に雑感を書いていきます。
- 怪獣、といってもこの場合はゴジラやガメラといった日本文化を代表するあの巨大なモンスターではなく、妖怪に近い化け物のことを指す。
- 本作は私が旅先でたまたま再開した藤木博士から、博士が九州のMという町のS旅館で体験した奇談を聞く、という一種の怪談話の構成となっている。
- 恥ずかしい話、本作を読むまで岡本綺堂を全く知らなかった。調べてみるとどうも怪奇小説やシャーロック・ホームズの影響を受けた推理小説で有名な作家だそうだ。
- 怪談話なので、口語で読みやすい。稲川淳二に読み聞かせてもらってるイメージで読んだ。そのくらい描写が丹念で、情景がスッと頭に入って来やすい。
- しかし、博士の話にはあまり理屈はなく、どこか不鮮明で不条理感があるが、その不条理感が独特の不気味さを生んでいる。怪談のメインキャラクターが日がな男と出歩いている旅館の娘二人、ということもあり、そこはかとないエロスも感じ、それが妖しさを生む。
- キーとなるキャラクターは西山という若い大工だが、彼は出自は朝鮮人か、あるいは琉球人か、鹿児島人か、と様々な噂を立てられており、腕は優秀だが娘との間に不祥事が起きてしまい暴力を受ける。余所者を排斥しようとする土着の人間、というのも大事なテーマの一つ。
- 読んでいる間は頭の中で東宝の怪奇映画として再生されていた。主人公は小泉博、博士は平田昭彦、二人の娘は水野久美と八代美紀、西山は久保明。伊福部昭の音楽付きで。