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セス・ローゲン×エヴァン・ゴールドバーグ映画というジャンル/『Sausage Party』★★☆

 俺たちのセス・ローゲン×エヴァン・ゴールドバーグのボンクラコンビ最新作のR指定アニメ『Sausage Party』を鑑賞。製作者でもあるセスとエヴァンが手がけた脚本をグレッグ・ティアナンと『モンスターVSエイリアン』のコンラッド・バーノンが監督。音楽をクリストファー・レナーツと『ライオン・キング』や『アラジン』などルネサンス期のディズニーを支えたアラン・メンケンが手がけ、セス・ローゲンの他、クリスティン・ウィグ、ジョナ・ヒルビル・ヘイダーマイケル・セラジェームズ・フランコ、クレイグ・ロビンソン、ダニー・マクブライド、ポール・ラッドなどいつものメンツが声優を務める。

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 スーパーマーケット「Shopwell's」に配列されている食材たちは、いつの日か「神」の手に導かれて店の外=楽園へ行けると信じ、今日も朝から「楽園の歌」をのどかに歌うのであった。

 

 赤と白と青の日(=独立記念日)が近づいたある日、ついにソーセージのフランク(セス・ローゲン)とその恋人であるバンズのブレンダ(クリスティン・ウィグ)は「神」によって選ばれる。他の食材たちと喜んでいたところ、誤って購入されたハニー・マスタード(ダニー・マクブライド)が返品される。真実を知ったハニー・マスタードは恐怖の表情を浮かべて外の世界が楽園だというのは嘘っぱちだったと伝えようとするが、食材たちはまるで信じようとしない。そんな最中、カートの衝突事故によりフランクとブレンダはカートの外に放り投げられてしまう。

 

 同じく放り出されたベーグルのサミー(エドワード・ノートン)とラバシュのカリーム・アブドゥル(デヴィッド・クロムホルツ)と共に元いた食材コーナーに戻ろうとするフランクとブレンダであったが、フランクはその過程で「楽園」の恐ろしい真実を知ってしまうのであった…。

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 Fワードを多用した予告編などでネットでバイラルに話題になっていた作品で、蓋を開けてみるといつものセスとエヴァンの作風がそのままアニメになっている作りで安心した。さて、ここで「いつものセスとエヴァンの作風」と書いたが、そもそもセスとエヴァンの映画とはなんなのか、彼らの一代記を振り返りながら考えてみたい。

 

 セス・ローゲンエヴァン・ゴールドバーグは共に1982年にカナダのバンクーバーに生まれる。ユダヤ人であることも共通している二人はポイント・グレイ第二学校*1で運命の出会いを果たす。二人は当時からコメディの才覚を発揮し、セスは母親の働く酒場で12歳の頃よりスタンダップ・コメディを披露*2し、なんと13歳の頃には大傑作『スーパーバッド 童貞ウォーズ』の第一稿を書き上げてしまう。

 

 

 その後ジャド・アパトーの目に止まったセスは『フリークス・アンド・ギークス』のレギュラーとなり俳優のキャリアをスタートさせ、ジャド・アパトーのテレビシリーズ『Undeclared』や監督デビュー作『40歳の童貞男』で大抜擢、この作品での演技が話題となり売れっ子俳優となる。一方で相方のエヴァンも演技はできないもののアパトーの元でライターとしての才能を開花させ、セスと共にサシャ・バロン・コーエンの『Da Ali G Show』に脚本として参加。

 

 二人の転機となるのは2007年、エヴァンはセスの単独主演デビュー作『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(アパトー監督作)をプロデュースし、二人が出会った頃からの念願であった『スーパーバッド』の映画化に漕ぎ付け、1億ドルを超える大ヒットに結びつけてしまう。*3カナダ出身の無名コメディアンから一気に売れっ子クリエイターになった二人は翌年には『スモーキング・ハイ』の脚本を書いて製作し、盟友ジェームズ・フランコのキャリアを復活させたばかりか業界において飛ぶ鳥を落とさん勢いを得る。

 

 

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 往年のテレビドラマをリメイクした『グリーン・ホーネット』の製作を経て、2011年に二人は遂に制作会社を立ち上げる。その名も二人が出会った場所の名を冠した「ポイント・グレイ・ピクチャーズ」。以後『50/50』『ディス・イズ・ジ・エンド』『ネイバーズ』『The Interview』『ナイト・ビフォア 俺たちのメリー・ハングオーバー』やTVシリーズの『プリーチャー』などのコメディの傑作や話題作を量産し続けて現在の『Sausage Party』に至る。

 

 さて、ポイント・グレイ・ピクチャーズ作品前に必ず流れるロゴは、学校で使われる机に上映作品の内容がざっくりと落書きされたものとなっている。つまり、ロゴの学習机が表すようにセスとエヴァンの映画は、二人が出会った頃の中学生感覚をこの年までワインのようにじっくり大切に熟成した作風となっているのだ。

 

 具体的には二人の映画に繰り返し使われる要素を羅列すると、

  • 師匠のジャド・アパトーから譲り受けた、それこそ中学生の男子学生のような男友達同士の心地良い連体感(=ブロマンス)
  • また中学生感覚の同じグループ内での役者出演
  • 中学生の好きそうなバイオレンス描写
  • 中学生が好きそうな言葉の悪さ
  • 中学生が考えそうなパロディ描写
  • 中学生が憧れそうなドラッグ・アルコール・セックス・パーティ描写

と、どこまでも中学生感覚を大切にしている。これらはもちろんポイント・グレイを結成する前に二人が中心となってプロデュースした『スーパーバッド』『スモーキング・ハイ』『グリーン・ホーネット』、そして今回の『Sausage Party』にも共通している。

 

 アニメになってもその中学生感覚は全く変わらず、むしろ自由にイメージをいじれやすい分爆発している。まず、アニメなのに一番初めのセリフが『Shit!』だし、劇中でてくるブロマンス描写はもはやブロマンスを超えて同性愛になってるし、まさかのアラン・メンケン起用で意地の悪いディズニー・ミュージカル・パロディもしてみせるし、声優はクレジットを見るといつものボンクラ・メンツだし、かわいい絵柄なのに残酷に食材や人は死ぬし、食材のくせにマリファナでハイになるは、パーティはするは、乱交はするはでもうメチャクチャ。

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 ただし、意外にもポイント・グレイ作品で忘れてはいけないのは宗教的モチーフである。以前『ディス・イズ・ジ・エンド』評の時にも書いた*4が、セスとエヴァンは中学生の時仲のいいプロテスタントに「君たちはユダヤ人だから残念だけど地獄に落ちるね」と言われてショックを受けた。恐らくこの出来事が未だに心に残っており、『ディス・イズ・ジ・エンド』ではそれこそ最後の審判をこれでもかとおちょくり、『ナイト・ビフォア』では東方の三賢人をブロマンス&ドラッグ風味満載で戯画化してみせた。

 

 『Sausage Party』の食材たちも「神(=人間)」によって「楽園」へ導かれると、かつてのセスとエヴァンのプロテスタントの友人のように妄信的に信じている。しかし楽園の存在はフードマーケットの秩序を守らんとする保守的な保存食*5によってデッチ上げられた話で、フランクが食材たちを啓蒙するのが今回のプロットなのだが、宗教がインチキであるということをバカにした作品として最近NYで観たブロードウェイミュージカル『The Book of Mormon』*6を思い出した。

 

 とまあ、最後は小難しい話をしてしまったが、なんせベースが中学生感覚でくだらないことをやっているだけの作品(最高の褒め言葉)なので肩の力を抜いて楽しみましょう。そもそも題名が『Sausage Party(おちんちんパーティ、つまりゲイのパーティ)』だしなぁ。といっても、たぶん日本ではソフトスルーだろうなぁ…。

 

Ost: Sausage Party

Ost: Sausage Party

 

 

*1:日本でいう中学から高校までにあたる義務教育の学校

*2:

*3:ちなみに後に『ディス・イズ・ジ・エンド』の元となる短編『Jay and Seth vs. The Apocalypse』を製作したのもこの年である。

*4:

*5:原語だとNon-Perishable(腐らない食材)なのだが、訳し方が難しい…。どなたか正式名称を教えてください

*6: