アメリカ対『シン・ゴジラ』/『シン・ゴジラ』★★★【その①】

 本家12年ぶりの最新作『シン・ゴジラ』が1週間限定でアメリカ上陸したので鑑賞。二日に渡って感想を書く予定で、今日はどちらかというと現地の劇場のレポート中心。

 

 『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明が総監督・脚本・編集を務め、平成『ガメラ』シリーズ、『進撃の巨人』の樋口真嗣が監督・特技監督、准監督・特技統括を尾上克郎、音楽は鷺巣詩郎長谷川博己竹野内豊石原さとみ高良健吾、市川美日子、大杉漣柄本明國村隼人、平泉成ら総勢328人のキャストが参加。

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  • 今年春ころからアメリカではソフト発売のみで劇場公開はされない、といった噂が流布しておりゴジラファンのくせに肝心の和製最新作をリアルタイムで観れない、という可能性にヤキモキしてきたが、無事にFunimationが配給にこぎつけ10月11日より1週間の限定公開が決まった。なお、Funimationは昨年『進撃の巨人』前編・後編の全米配給も受け持った。
  • 僕が住む近い公開劇場はテネシー州メンフィスにあるマルコ・シアター・パラディーソ。ということで「アメリカ対『シン・ゴジラ』」と題したものの、その実このレポートはあくまで「マルコ・シアター・パラディーソ対ゴジラであることは留意されたし。
  • 公開回数は1日1回のみ。マルコ・シアター・パラディーソの初日は夜7時からの公開。10分前に劇場に着いたが、思った以上に観客が多くて驚いたとともに嬉しかった。なお『進撃の巨人』の時は前編はそこそこ客入りは良かったものの、後編はあまり観客が入っていなかった。

  • 客のほとんどが黒地のゴジライラストを着たオタクaka僕の仲間たち。たまたま僕らの隣の席に座った白人の兄ちゃんも「俺はゴジラで育ってきたんだ、楽しみだぜ!」と話しかけてきた。
  • 時間になり上映スタート。まずはFunimationが今後配給する作品の予告編が上映されるがそのラインナップがなんと『One Piece Film Gold』と君の名は。!ギョエー、もう日本帰る必要ないな!ちなみに『君の名は。』の英題は『Your Name』だそうで。
  • さていよいよ映画本編がスタート、東宝のロゴで拍手が起きた!アメリカ人ですら待ち望んでいた和製ゴジラの凱旋である。ここでちょっと嬉しくて泣きそうになる。
  • ただ、ちょっと冒頭からいきなり不穏だったのは漂着しているボートが映っただけで笑っている観客が一定数いた。そしてその不安は的中し、この一定数の観客は終始事あるごとに不必要に笑い続けていたため正直鑑賞のノイズになっていた。「お前ら本当に話分かってんのかよ!」と一緒に行った日本人の子と二人でイライラしていた。
  • 例えば鎌田くんの登場で爆笑が起きていたが、まあこれは許せるし制作側もある程度狙っていた節もあるだろう。もちろん、明らかに笑いを取りに行ってる場面で起こる自然な笑いも嬉しい。しかし、例えば倒壊するマンション内での取り残された家族の描写や、逃げ遅れた老婦人のために作戦を中止する場面、熱戦により炎上する東京で爆笑が起きていたのには全く解せないしドン引きする。ゴジラが進化する場面でもいちいち笑いが起きていて「こいつらにはこの真に迫った特撮が稚拙に見えるんだろうか?」とすら思った。
  • 途中介入してくるアメリカ政府の横柄さにも鼻で笑う声が聞こえてきたが、「お前らのことだろうが!」とツッコミを入れたくなる。しかし流石に原爆ドームの写真が写る場面では鋭い静寂が走ったのは印象深かった。
  • 邦画のシリアスな場面で何故かアメリカ人観客が笑う現象は夏にNYで観た『バクマン。』でもあって、こちらが泣きそうになってくるところでバカ笑いのせいで涙が引っ込んでしまうと、それこそ映画館で銃を乱射したくなるわ!バカにしてんのか!
  • ただし批判一辺倒ではなく、アメリカ人観客の反応の大きさは面白くもある。概ね場内が明るくなった後の反応は暖かく、「終」の文字でも拍手が起きた。劇場を出るとポスターの前で写真を撮ってる人多数。

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  • 先ほどの隣に座ってたゴジラファンの兄ちゃんは上映後に「なんで日本語と英語が入れ混じってんだよ、どっちかで統一しろよ!」と文句をなぜか僕に言ってきたが、それハリウッド映画でしょっちゅうやってんじゃねーか!ただ確かにあの情報量で字幕は酷だと思う一方で、あのセリフ量では公開までに吹き替え版が作りづらかったんじゃないかとも思う。でもこちらのソフト版には収録するそうです。個人的にはアメリカ人も威張ってないでいい加減字幕に慣れろよとも思う。こんなんだからトランプ支持者が多いんだよ!
  • さて、多くの人が気になっているであろう石原さとみ問題。確かにネイティブだと思わせるのには無理があり、失笑が起きていた場面もなくもないが、個人的にはすごく好印象だった。少なくとも僕が知ってるロクに喋れない日本人の留学生の何人にかよりは遥かにうまいよ!僕が一緒に観に行った現地の友達も「Understandable(理解可能)」と言っていたので、そこまで酷くはない。
  • 石原さとみの演技自体も素晴らしかった。この夏インターンでニューヨークに行き色んなアメリカ生まれの日本人とお会いしたが、カヨコ・アン・パターソンの振る舞いはまさにジャパニーズ・アメリカンのコピーだったのには感動した!むしろ逆にバイリンガルっぽい感じの日本語もうまかった。真の強さはアメリカ人だけど根の優しさは日本人のあの感じ、すごい好きだなぁ。
  • 終わった後に現地の友達に感想を聞いたら概ね満足しており、そいつはメキシコ人でもあるので特にアメリカと日本の強弱関係が興味深かったそう。ただし、[ゴジラを倒した後に]ハリウッド映画だったら必ず[登場人物たちが歓喜するだろう場面]で、[巨災対が静かに安堵する]ところは僕が一番邦画っぽいなぁと思ったところだが、「感情が感じられない!」と叩いていた。それがアメリカ的な感覚だよなぁ。

というわけで明日は(書ければ)個人的な感想です。

 

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ

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