読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

世紀末

 金曜だってのに7時半まで課題やらされてて、疲れを癒すために雷雨の中ダウンタウンのバーへ。友達と飲んでると、怒声が聞こえてくる。声の方を見ると高そうなスーツを着たおじさんが若者たちに怒鳴っていた。「トランプは正しかったんだ!反対派の意見なんて糞食らえ(Fuck that shit)!」

 

 ヤベーやついるなぁと笑ってたらおっさんが僕たちのところまで来た。「ガハハハ、楽しんでるか!」肩を組まれた陽気なパキスタン人の友達は笑いながら返してたけど、思いっきり酒臭いしフラフラで迷惑だった。「ここはニガーだらけだな!」一瞬心臓が止まりかけた。というのも、僕たちの輪の中には黒人の友達もいたもんで、彼の顔を見ると明らかに不愉快そうだった。黒人の前でニガーを使えば殺されたって仕方がない。

 

 さらにメキシコ人の友達の方を向いて「ファッキングリンゴは嫌いか!?」グリンゴスペイン語でよそ者という意味で、主に白人に対する蔑称だが、ここでは皮肉で使っている。酒のせいでもう言葉の制御が効かなくなってしまっているのだ。

 

 その黒人の友達もメキシコ人の友達も穏やかな性格だったから幸い喧嘩にもならなかったが、最終的には大声を出していたせいで腕っ節の強いバーの警備員に追い出されてしまった。追い出される時にグラスを割ってたけど。

 

 飲んでた友達のうちの一人にそのおじさんのことを知っている人がいたので詳しく話を聞いて見ると、どうも最近仕事を失ってヤケになっていたそうだ。そういえば確かに「俺はビジネスを始めるんだ」「一攫千金を狙ってやるぜ」だとか言っていた。職を失った人間がマイノリティにヘイトを向けるのはよく聞く話だ。「じゃあ、仕方ないね」と黒人の友達が肩をすくめてて大人だなぁと思った。

 

 帰り道の夜中、パトカーが大量に出動していた。雷鳴で気がつかなかったが、近所で銃声が響いたらしい。違う友達の家に寄るつもりだったが、やめておいた。世紀末を感じる夜であった。