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ファン熱と過剰解釈

 ※今回の記事はなるべく『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』を鑑賞後にお読みください。

 

 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(以下GotG2)』*1が先週末日本でも公開されたので、Twitter上で熱のあるツイートが出回っています。個人的にも『GotG2』は大好きなので共感するツイートも多いのですが、少し加熱が強すぎて拡大過剰な解釈がいくつか散見されます。また、こういったツイートが広く拡散されて誤解も多く生んでいるので、ちょっと考えさせられますね。

 

 例えば、こういった内容のツイートを目にしました。

GotG Vol.2 見てきました。ハリウッド映画のレーティングでは、全年齢作品に許された「ファック」または「ファッキン」という台詞の回数は1回だけと聞きます。そのため脚本家たちは、最高のタイミングで「ファッキン」と言わせるために頭をひねりにひねるそうです。

 

さて、この映画では、ファックのファまで何度も何度も言いかけては遮られ、を繰り返します。そして、アイツとアイツによる最高のタイミングでの「ファッキン」が飛び出すのです。おまえーそんなん泣かされるに決まってんじゃんよーファッキンで泣いたわー。そんな映画です。最高です。

 一見するとハリウッドのレーティング事情に触れつつ『GotG2』の素晴らしい演出を指摘した含蓄あるツイートのようですが、問題は『GotG2』内において一度たりとも「ファッキン」は使われていないんですね。

 

 おそらくこの方が誤解されたのはクライマックス中に発せられたグルート、ヨンドゥとロケットとの会話。(訳は筆者による)

Baby Groot: I am Groot.
ベイビーグルート:僕はグルート
Yondu: What's that?
ヨンドゥ:なんて言った?
Rocket: He says, "Welcome to the freakin' Guardians of the Galaxy!" Only he didn't use "freakin'".
ロケット:こいつは「クソ・ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーへようこそ」って言ったんだ、ただもっと汚い言葉でな

 Fワードは日常生活で使うには中々にキツい言葉なので、たまに「Freaking(フリーキング)」で代用する場合がありますが、『GotG2』でも実際に使われていたのは「ファッキン」ではなく「フリーキン」の方でした。

https://pbs.twimg.com/media/C3_YWLYUcAA8LpP.jpg

 

 ちなみにワシントンポスト紙の「この夏どの映画を子供と観るべきか?」という記事でも『GotG2』のFワードの使用は全く指摘されていないので、ファッキンが使われていないことは確実です。(英語圏の親は汚い言葉の使用には本当に厳しいので、子供と映画館に行く時は必ずこういう記事などで事前にチェックする)

 

 そもそも、「What the fuck」と言おうとして爆風などでかき消される例はいっぱいあるものの、MCU作品でFワードが使用されたことはNetflix作品の『デアデビル』を除いて一度たりともありません。強いて言うならPG-13の『X-MEN:ファーストクラス』でカメオ出演したローガンが「Go fuck yourself(消え失せろ)」を使っていますが、あちらは20世紀フォックス作品であり、ディズニー傘下のマーベルスタジオが今後もFワードを使うことはほぼありえないと思います*2


 さらに、同じ『GotG2』のクライマックスシーンに関連して、気になったのはフセッターで隠されていたこちらの長文ツイート。※ネタバレあり。

クライマックス、惑星エゴに残ることを決意したヨンドゥ。あの時ロケットはピーターを自分の命に変えてでも救おうとするヨンドゥの覚悟に気づいた。危険を顧みず仲間を救いに来たロケットにはその想いが理解出来るから。だからこそロケットはヨンドゥにベビー・グルートのセリフとして「クソガーディアンズ・オブ・ギャラクシーにようこそ」と自分の最大限の敬意を伝える。暗に最高の仲間だと認めたんだ。(おそらくベビー・グルートは「一緒に来ないの」程度の事しか言ってない」)

 確かに、件のシーンは本作でも熱いシーンなので、「クソガーディアンズ・オブ・ギャラクシーにようこそ」に色々とロケットの気持ちを探りたくなる気持ちもわかりますが、あのセリフはベビー・グルートが発したセリフをロケットがまんま訳しただけにすぎないんですよね。

 

 ヨンドゥを置いて合流地点へ飛び去ったロケットは肩に乗るグルートにこう続けます。

We're gonna need a little discussion about your language.
あとでお前の言葉遣いについて話し合うぞ

 FワードやSワードなどの所謂罵り言葉を子供が使うことは教育上大変よろしく無いので、アメリカでは子供が汚い言葉を発するたびに厳しく諭します。このセリフはロケットをグルートの保護者・教育者と見立てた一種のギャグとなっているのです。なので、実際にベビー・グルートが放った言葉は「一緒に来ないの」なんて生易しいセリフではなく、「Welcome to the fucking Guardians of the Galaxy」とかなり汚い言葉遣いでヨンドゥを称していたことがわかり、ただ一人グルートの言葉がわかるロケットが少し控えめの表現でヨンドゥに伝えたのでありました。

 

 冒頭に述べた通り『GotG2』は素晴らしい作品で、ファンの愛が高まるのもわかります。が、愛するあまり盲目にならないように気をつけましょう。

 

 

 

*1:

*2:ただ、Shitは割りかし使われていて、『ジビル・ウォー』を劇場で観た時はスパイダーマンが「Holy shit!(なんてこった!)」と言った瞬間に爆笑が起きていました。ShitやFuckはあまり出せないため、ここぞという時にキラーワードのように使われます。