流行りのシェアード・ユニバース型映画をまとめてみた

 突然ですが皆さん、シェアード・ユニバーという言葉をご存知だろうか?アメコミ映画ライターにして映画評論家の杉山すぴ豊氏はシェアード・ユニバースを以下のように定義している。

シェアード・ユニバースとは、文字通り“シェア(共有)された世界観”の意味。バラバラに見えていた物語や主人公が、実は同じ世界観の中にあった、つまり「世界観=ユニバース」を「共有=シェアードしていた」というコンセプトの元、物語を設計しているのです。

 (ユニバース化は映画をどう変えるか? | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダスより抜粋)

 

 シェアード・ユニバースの映画シリーズは一本当たれば芋づる式で他の作品もヒットが見込めるので、昨今のハリウッド大作映画シリーズの多くはシェアード・ユニバースをモデルとしたフランチャイズを展開している。しかし最近そのシェアード・ユニバース型映画が多すぎて、どの映画がどのシリーズに属しているか分からない!という声をよく聞くようになったので、主なシェアード・ユニバース映画をまとめてみました。

 

 なお、単なる映画シリーズやクロスオーバーとシェアード・ユニバースの違いを定義するのは難しいので、筆者の独断と偏見でまとめました。数が多ければ多いほどまとめれば楽しい、という考えている節があるので、「これはシェアード・ユニバース映画じゃ無いだろう!」異論も認めます。また、紹介内容にバリバリ主観が入ってるので、そっちの批判も受け入れます

 

マーベル・シネマティック・ユニバース

スタジオ:ディズニー、マーベル
主な仕掛人ケヴィン・ファイギ
主な作品:『アイアンマン』『アベンジャーズ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など

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 もはや説明不要と言ってもいい業界筆頭のシネマティック・ユニバースで、所謂MCUMCUの成功無くしてユニバースが連発される原題の映画業界はなかった。10年の蓄積により構築された丹念な伏線・構成力が特徴。来年の『アベンジャーズ4(仮題)』で一旦の完結は迎えるものの、『スパイダーマン:ホームカミング』の続編も既に準備中なので中々終わる気配が見えない。

 

DCエクステンデッド・ユニバース(非公式名称)

スタジオ:ワーナー
主な作品:『マン・オブ・スティール』『ワンダーウーマン』『スーサイド・スクワッド』『ジャスティス・リーグ』など
主な仕掛人ザック・スナイダー(離脱)、ウォルター・ハマダ(2018年より)

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 所謂DCEUだが、実は非公式の名称で正式名称はない。元々アメコミはDC社が先に立ち上がり、のちに作られたライバルとなるマーベル社が発足したが、映画のユニバース化は後追いする形となった。興行的にも批評的にも苦戦気味*1で、バットマン役のベン・アフレックやスーパーマン役のヘンリー・カヴィルの降板の噂が流れたり、ユニバースに属さないジョーカーのオリジン映画の製作が始まったり、若干雲行きは怪しい。破壊的な超人戦や暗い画面が多いのが作風。

 

X-MENユニバース(仮称)

スタジオ:20世紀フォックス
主な仕掛人:サイモン・キンバー
主な作品:『X-MEN』『ローガン』『デッドプール』『ファンタスティック・フォー』など
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 90年代に経営難に陥っていたマーベルは、自社キャラクターの映画化権を各映画会社にバラ売りし、『X-MEN』と『ファンタスティックフォー』に関わるキャラは20世紀フォックス社が獲得した。元々三部作で終わるはずだった予定が、スピンオフを連発しているうちにユニバース化してしまった。ミュータントの自由のために対峙するプロフェッサーXとマグニートーの(フランチャイズ的な意味で)永遠に終わらない戦いを描く。製作上の都合でグチャグチャになったタイムラインを『X-MEN/フューチャー&パスト』で整理するという離れ業をやってのけるも、未だ設定に矛盾が多いのが玉に瑕。リブート版『ファンタスティック・フォー』も同じユニバースに属しているが、あちらは大型地雷と化したので再リブートがない限り今後クロスオーバーする望みは薄い。

 

ソニーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクターズ

スタジオ:ソニー・ピクチャーズ
主な仕掛人:エイミー・パスカル
主な作品:『ヴェノム』

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 おそらく今一番「『ヴェノム』ってMCUじゃないの?」と人々を混乱させているユニバース。『スパイダーマン』関連キャラクターの映画化権利を持っていたソニー・ピクチャーズはマーベルと契約を交わし、共同で『スパイダーマン:ホームカミング』を製作することでスパイダーマンMCUに参加させるファン垂涎の歴史的クロスーバーが実現した。これに味を占めたのか、ソニーが自社で実写化権利を獲得したしたマーベルキャラ*2のみで構成する「ソニーマーベル・ユニバース」の製作を発表し、アメリカでは先週末公開された『ヴェノム』を筆頭にブラック・キャットやシルクの映画を製作予定。のみならず、エイミー・パスカルが「『ヴェノム』はMCUと同じ世界線」と勝手に発言し、ケヴィン・ファイギを困惑させている。ちなみに筆者は本作を鑑賞済みだが、MCUとの関連があるのか無いのかは…見てのお楽しみに!

 

モンスターバー

スタジオ:ワーナー、レジェンダリー
主な仕掛人:トーマス・タル
主な作品:『ゴジラ GODZILLA』『キングコング 髑髏島の巨神』

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 かつて東宝が行っていた怪獣映画のクロスオーバーを潤沢なハリウッド資本で再現しようと試みる、新旧の怪獣少年たちの心をわしづかみにして離さない熱いユニバース。来年はラドンモスラキングギドラが集結する実質『三大怪獣 地上最大の決戦』リメイクな『Godzilla: King of the Monsters』が公開予定で、東京オリンピックイヤーの2020年には怪獣スター同士の58年ぶりの再戦となる『Godzilla VS Kong』が控える。更にはパシフィック・リム』もモンスターバースに参戦するかもしれないという噂まで登場し、ニュースを追っているだけで怪獣少年たちのワクワクが止まらない。

 

死霊館』ユニバー

スタジオ:ワーナー
主な仕掛人ジェームズ・ワン、ピーター・サフラン
主な作品:『死霊館』『アナベル 死霊館の人形』『死霊館のシスター』など

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 業界でも珍しい心霊ホラー映画ユニバース。そもそもは実在の心霊研究家ウォーレン夫妻の実話を描く心霊映画だったのが、スピンオフを連発しているうちに『X-MEN』シリーズ同様いつの間にかユニバース化し、最新作『死霊館のシスター』に至ってはついにオリジナルストーリーになった。作品毎に出来の浮き沈みは激しいが、ジャンプスケアホラーとして若者の人気を集めている。しかし、この悪霊たちがいつか『アベンジャーズ』のように一大集結したら大変なことになるのでは…。

 

ダークユニバー

スタジオ:ユニバーサル
主な仕掛人アレックス・カーツマン(離脱)
主な作品:『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』*3

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 俺たちもユニバース映画で儲けよう!と、ユニバーサルがフランケンシュタインやドラキュラ、透明人間、ミイラ男など、かつて自社の映画で人気を博していたクラシックモンスターを使って立ち上げたダークユニバースだったが、まさかの一発目で大コケして既に停止中の状況。一応第二弾『フランケンシュタインの花嫁』の企画は生きているが、果たして…?

 

スター・ウォーズ』ユニバース(仮称)

スタジオ:ディズニー、ルーカスフィルム
主な仕掛人キャスリーン・ケネディ

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 元々ジョージ・ルーカスが作った映画シリーズで小説・コミック・ゲームなどで膨大なスピンオフを展開していたが、2012年にディズニーが買収し、ボブ・アイガーが「観客が入る限り、永遠に映画を製作する」と宣言したことで改めてシネマティック・ユニバース化されてしまった。アンソロジーシリーズは『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』がコケてしまったことで、いったん保留されている。現行の三部作の他に、別の三部作が二つ計画されていてもはや訳の分からないことになっている。

 

トランスフォーマー・シネマティック・ユニバー

スタジオ:パラマウント
主な仕掛人マイケル・ベイ
主な作品:『トランスフォーマー』『バンブルビー』など

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 2015年に『トランスフォーマー』をシェアード・ユニバース化させるために、売れっ子脚本家たちがスタジオに雇われてライターズ・ルームが設立された。これまではいい意味でも悪い意味でも大味なベイヘム演出が盛りだくさんなシリーズだったが、『バンブルビー』から初めて監督がトラヴィス・ナイトに変わり、予告編もいつもと雰囲気が変わりトランスフォーマーたちのデザインもオリジナルアニメに近くなっていることでファンをざわざわさせている。

 

AVPユニバース(仮称)

スタジオ:20世紀フォックス
主な仕掛人:ジョン・デイヴィス、デイヴィッド・ギラー、ウォルター・ヒル
主な作品:『エイリアン』『プレデター』『エイリアンVSプレデター』など

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 ユニバース映画として含んでいいのか分からなかったが、クロスオーバーしているし最近公開された『ザ・プレデター』も『エイリアンVSプレデター』との関連を匂わせていたし、一応ね。プレデター2』のエンディングでイースターエッグとしてエイリアンの骨格が登場したことで発生したユニバース。本来はゲームとして始まったが、2004年に『エイリアンVSプレデター』で映画内で初共演。レプリーがこれまで(文字通り)死ぬ思いをしてエイリアンを地球に持ち込まないように頑張っていたのに、実は人類が文明を築く遥か前からプレデターの儀式のためにエイリアンは地球に持ち込まれていた、というこれまでの『エイリアン』シリーズの意義をぶち壊した素敵な設定。2008年の『AVP2 エイリアンズVSプレデター』ではエイリアンとプレデターのハイブリット種プレデタリアンも登場。大真面目な『プロメテウス』シリーズもこの世界観に含まれているかもしれないと考えるとちょっと笑える。

 

Mナイト・シャマラン・ユニバース(仮称)

主な仕掛け人:Mナイト・シャマラン
主な作品:『アンブレイカブル』『スプリット』『Glass』

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 ネタバレ注意!昨年大ヒットした『スプリット』のエンディングで実は『アンブレイカブル』と『スプリット』は同じユニバースに属していることが判明してファンを驚かせた…らしいのだが。僕はお節介に親切な友人からシックス・センス』のネタバレを食らってから、一切のシャマラン作品を避けて映画人生を送ってきたのに、何故か『ヴィジット』『スプリット』だけを観ているニワカ野郎なので、正直あまり具体的に解説することが出来ないのです。来年公開の『Glass』はどうも『アンブレイカブル』と『スプリット』双方のキャラクターが顔を合わせるらしいですよ。僕も今からシャマラン作品の予習を始めようかと思います。

 

ヴュー・アスキューニバー

スタジオ:ヴュー・アスキュー・プロダクション
仕掛け人:ケヴィン・スミス
主な作品:『クラークス』『チェイシング・エイミー』『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』など 

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 Mナイト・シャマランの前に、ベースとなるキャラクター権利もなしに勝手に自分の作品でシェアード・ユニバースを展開した先駆者はコミックオタクのケヴィン・スミス。ヴュー・アスキューニバースの作品はケヴィン・スミスが生まれ育ったニュージャージーを舞台にしており、ほとんどの作品にジェイソン・ミューズ演じるジェイとケヴィン・スミス演じるサイレント・ボブが登場するのが特徴。映画の他にもコミック・アニメなどにも世界観を広げており、アメリカのオタクカルチャーにおいてカルト的人気がある。

 


 

 ざっとこんなところでしょうか。人によって好き嫌いは分かれるでしょうが、こうしてまとめてみるだけで各ユニバース毎に癖があって面白い。本当はオリジナルの東宝怪獣映画やユニバーサルモンスター映画、勝手にキャストが次々降板してはのちに全員集結した『ワイルド・スピード』シリーズ、ホラー界の二大殺人鬼『フレディVSジェイソン』などについても触れる予定でしたが、そちらは第二弾のために残しておくとします。他にも抜けてるユニバースがあったら教えてもらえると助かります!

 

アベンジャーズ (字幕版)
 
ジャスティス・リーグ(字幕版)
 

 

*1:実情を書いただけで、僕自身はDCEUを応援してますよ!

*2:ちなみにソニーが実写化権を有しているマーベルキャラクターは約900!これまた永遠に終わらなさそうである。

*3:当初『ドラキュラZERO』もダークユニバースに含まれる、という話もあったが結局外されたそうです。