『サウスパーク』S22E3「The Problem With A Poo」感想

 今週の『サウスパーク』は久しぶりにMr.ハンキーが登場。タイトルは和訳すると「うんちにまつわる問題」と何の変哲もないが、番組最後のその裏に隠されていた意味が判明する。

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 いつも通り学校でスクールシューティングが発生する平凡な日常。隣の市議会では財政難のため、Mr.ハンキーのクリスマスショーの予算を半分にカットすることを発表する。それだけでなく、その見た目(=まんまうんこ)が人々も不快にさせていることも伝えられたMr.ハンキーは、クリスマスショーに向けたサウスパーク小学校の音が気練習の出来の酷さにイラつきも加わって恐ろしく非PCなツイートをしてしまう。

サウスパークの子どもたちは音楽もまともに弾けない知恵遅れのホモどもだ!*1

 当然、怒った子供たちからクレームを受けたカイルはMr.ハンキーになぜこんなツイートをしたか問いただすと、実はMr.ハンキーはストレスで寝れない夜はゾルピデムを飲んでおり、薬の影響でついつい意に反して不適切なツイートをしてしまうのだった。そして翌日、怒りの形相をしたサウスパーク市議会員がMr.ハンキーに詰め寄る。「このツイートはどういうことですか!」Mr.ハンキーが確認してみると… 

 サウスパーク市議会の連中はオメコナメナメイスラム過激派共だ!*2

 「ああなんてこったい、ゾルピデム摂ったことある?マジでオススメしないよ」と呑気なMr.ハンキーだったが、今回ばかりは許してもらえずクビになってしまう。サウスパーク中の弁護士に掛け合っても誰も(外見・内面共に)クソ野郎のMr. ハンキーを弁護しようとは思わない。落ち込むMr.ハンキーを心配するカイルだが、Mr.ハンキーは突如ひらめく「そうだ、公聴会に出ればいいんだ!公聴会で釈明の機会を設ければいいんだ!カイルは弁護士の息子なんだから、僕を公聴会で助けてくれ!」と提案する。友達を見捨てたくないカイルは、周囲の反対を振り切りかくしてMr.ハンキーと共に公聴会に出席する。

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 一方で、先シーズンで人目を忍んで付き合っていたものの、サウスパーク市民にバレて避難され別れることになったPC校長とストロング・ウーマン教頭。彼女のことを気にかけるPC校長は「すまない、僕が職権乱用をしてしまって…」と謝るが、「職権乱用ですって!アタシは強い自立した女性なのよ!職権乱用なんてされる訳ないでしょ!」とよくわからない理屈でキレるストロング・ウーマン教頭。そんなストロング・ウーマン教頭のお腹はポッコリと膨らんでいるのであった…。

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 ここ3週間近くアメリカの時事問題は、次期最高裁判所判事候補のブレット・カバノー氏に対する過去のセクハラ疑惑の告発と、それに関連した公聴会の話題で持ちきりだった。9月27日に主要メディアで生放送された公聴会で激昂するカバノー氏の様子は多くの人の記憶に残ったが、まさにホットな話題を取り入れた形となった。注目すべきなのはMr.ハンキーが質問中に鼻水を吸うような音で遮るが、実際の公聴会中にもカバノー氏もこの音で質問を遮っているのだ。『サウスパーク』は相変わらず芸がこまかい。

 

 さてここから先はネタバレになるが、冒頭で述べた本エピソードのタイトル「The Problem With A Poo」について解説する。結局Mr.ハンキーはゾルピデムの摂り続けて人々を罵倒し、サウスパークから追放されてしまう。市民が全員Mr.ハンキーの旅立ちを見送る中、スタンがマーシュに聞く。「Mr.ハンキーはどこに行くの?」「彼のような人種差別主義の酷いヤツを受け入れてくれるところを探すしかない…まだこの世界には偏見や憎しみなんて気にしない場所があるのさ」そうしてMr.ハンキーが行き着いた場所はシンプソンズ』の世界だった!

 

 実は『The Problem With A Poo』は昨年放映されて話題を呼んだドキュメンタリー番組『The Problem With Apu(アプーにまつわる問題)』のパロディだったのだ。このドキュメンタリー番組は『シンプソンズ』に登場するインド人のキャラクター アプーがどれほどステレオティピカルに描かれていることを指摘し、『シンプソンズ』のためにインド系アメリカ人が受けている差別や偏見を描いた。

 

 『サウスパーク』が『シンプソンズ』を持ち出したのはこれが初めてのことではなく、『サウスパーク』にバートが登場したこともあったし、『シンプソンズ』にも『サウスパーク』に似た残虐アニメが登場したこともあった。長寿ブラックユーモアアニメ番組として比較されている両番組だが、今回は『サウスパーク』がライバルの『シンプソンズ』をおちょくった形だ。しかし、僕はそこに作り手としての同情も垣間見えた。

 

 『サウスパーク』は初放映以来その表現の過激さが問題視されてきたが、常に表現の自由を標榜して戦ってきた。しかし近年SNSが普及して特にPC文化が顕著になってくると共に PC校長が登場してPCをいかに扱うかがここ数年の『サウスパーク』のテーマにも見える。今回サブプロットとしてストロング・ウーマン教頭は五ツ子のPC赤ちゃんを産む。 PC赤ちゃんは医者も見たことがないくらいPCに過敏で、反PC的なものを見たり聞いたりすると突然泣き喚いてしまう。PC赤ちゃんが何の前触れもないのに泣き始めると、通りすがった市民が「PC赤ちゃんはたまに何で自分で泣いているのかもわからない時があるんだ!

 

 これは何でもかんでもPCであろうとして声を上げて叩くも、何が正義なのか自分でもよく分かっていない支離滅裂なソーシャルジャスティスウォーリアーズを強烈に皮肉っている。今回の『シンプソンズ』の登場は、PC社会で共に戦う長寿アニメへの目配せだったんじゃないかな。

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 僕はあと、『デッドプール』の「女の子を殴るのが性差別なのか、それとも女の子だけ殴らないのが性差別なのか、よくわからないよ!」というモンタージュ中の名シーンを思い出したな。

 

デッドプール (字幕版)
 

 

*1:原語だと"The kids of South Park are retarded homos who can't play music."

*2:これ、何も僕がテキトーなことを書いてるんじゃなくて、本当に原語だと"The City Council members are a bunch of pussy-licking Islamists"と言っている。…毎度よくこんな言葉遣い思いつくよな!