人気キャラ共演に抱く危機感/『シュガー・ラッシュ:オンライン』★☆☆

 はてなブログが『シュガー・ラッシュ:オンライン』の感想を募集しているので、書いてみるかな、Amazonギフトカード5万円分当たるし。僕はアメリカ公開時の11月に鑑賞済み。監督は前作に引き続きリッチ・ムーアと前作の脚本を書いたフィル・ジョンソン。今作もフィル・ジョンソンが脚本を手掛けており、音楽はヘンリー・ジャックマン。前作に引き続きジョン・C・ライリーがラルフの、サラ・シルヴァーマンがヴァネロペの声を担当し、新たにガル・ガドットタラジ・P・ヘンソンらが参戦。

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 大前提として、ディズニー映画なので娯楽映画としての水準はとても高い。教科書かと思うくらいキッチリした三幕構成の脚本に、老若男女が楽しめるギャグ、アクション、感動全てが盛り込まれている。今回ラルフとヴァネロペはゲームの世界を飛び出してインターネットの世界を冒険し、様々なインターネットあるあるネタや皆が良く知る企業が登場するが、やっていることは映画史に残る駄作『絵文字の国のジーン』とほぼ同じ*1なのに、話運びやギャグの質、観客に伝えるメッセージの強さでこうも差が出るのは流石は天下のディズニーであると言ったところだ。

 

 ...はー、褒めた褒めた。ね、もういいじゃないですか、これで。十分褒めたと思うので、Amazonギフトカード5万円分もらえねーかな…。

 

 さて、本題。今述べたように『シュガー・ラッシュ:オンライン』は子供から大人まで楽しめる娯楽作であるのは間違いないが、僕は鑑賞後暗雲たる気持ちになりましたよ。というのも、僕は最近のディズニーという企業について疑問に思うところが多々あるからだ。 

 

 『シュガー・ラッシュ:オンライン』がPRで最大の売りにしているのは、中盤でディズニーが獲得したIPブランドが勢ぞろいするシーンである。マーベルヒーローも出てくれば『マッペツ』のキャラも登場するし、バズ・ライトイヤーも出てくるし、『スター・ウォーズ』だって音楽付きで登場する。極めつけは歴代のディズニープリンセスが大集結するシーンで、予告編でこの場面が登場するや否やネット上で大きな話題をさらった。

 うん、正直に書いてしまおう。ディズニーが金に物を言わせて次々とモノポリー的に買収したブランドをスクリーンに並べさせたこのシーンには、現代のファンダムに狂う観客を釣る手法が透けて見えて心底辟易した。シュガー・ラッシュ:オンライン』は『レディ・プレイヤー1』とよく比較されるが、人気キャラクターが集結する要素は似ているものの、スピルバーグは人気キャラクター達をあくまでゲーム内のアバターとして扱っており、そしてベタながらも「ゲームもいいけど、現実も大切にね」という感動的なメッセージを送っている。

 

 しかし『シュガー・ラッシュ:オンライン』の当該シーンは脚本上全く必要がなく、もっとはっきり言うと削ってしまってもストーリー進行上問題がなく、ただ観客を欲望のままに耽溺させる為だけに存在するので極めて不健全だ。これはディズニーが近年工業製品のように出荷している『スター・ウォーズ』やMCU作品、過去の名作の実写化作品*2でも見られる姿勢であり、この風潮に何かしらの危機感を抱く身としては『シュガー・ラッシュ:オンライン』の無意味な歴代ディズニープリンセス共演シーンは断固として否定しておきたい。ディズニーは20世紀フォックスのエンタメ部門も買収しちゃったんだから、尚更だ。

 

 あーあ、言っちゃった。これで5万円分のポイントカード貰えないだろうなぁ…。

 

*1:

 

taiyaki.hatenadiary.com

 

*2:とはいえ、僕はこれらのディズニー作品全否定したい訳ではなく、中には大好きな作品や傑作ももちろんあります。ただ、ディズニーが現代のファンダムを巧みに操って無条件にノスタルジーに浸れるドラッグのような作品ばかり出している状況に危機感を抱いていることは表明してておきます。