ネタバレを食らって以来シャマランを避けてきた僕が初めて『シックスセンス』★★☆を観た。

※この記事には『シックス・センス』のネタバレが含まれます!未見の人はブラウザバックをお願いします!!

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 あれは高校生の時だった。全寮制の学校に通っていた僕は、友達の部屋で集まってくっちゃべっていたが、「『シックス・センス』観た?」という話になった。そこにいた人は僕以外皆観ていて、未見の僕でも「『シックス・センス』はどんでん返しが有名な映画」という事は知っていたので、「まだ観てないんだ!その話しないで!」と懇願するも、無情にも「えっ、実は主人公が死んでたって言っちゃいけないの?」と友人が、否、クソ野郎がネタバレをかましやがり、僕はショックのあまりその場でうずくまってしまった。あいつらは冗談のつもりでショックを受けている僕を見て笑っていたが、こうして10年程経っても『シックス・センス』に対するわだかまりが残っていることを考えるとその罪は重い。

 

 「ネタバレを忘れるのを待ってから『シックス・センス』を観よう」と泣く泣く心に誓って数年後。僕は後に所属することとなる映画サークルの新歓コンパにいた。新歓といっても俗にいう「ウェーイ」といったものではなく、ひたすら好きな映画についてあーだこーだ語り合う幸せ空間であったが、やはりそこは映画好きの集まり、シャマランの話題が上ってくるのは時間の問題であった。「Taiyakiくんはシャマランだと何が好き?」とその時同席していた同級生に聞かれたが、これ以上余計な情報を避けるためにも正直に話そうと決めた。

 

「いやー、実は『シックス・センス』のネタバレを食らってから何となくシャマランの作品は避けてるんだよね…」

 

すると同情するような顔でその子は、

 

「ああ、実はブルース・ウィリスが死んでたってエンディング?

 

「えっ、ブルース・ウィリスが死んでたの!!!??

 

と僕は居酒屋で大きな声を出して驚いてしまう。というのも、僕は「実は主人公が死んでた」という情報しかもらってないので、てっきりハーレイ・ジョエル・オスメントが死んでいたと思い込んでいたのだ。あの時ネタバレを食らっていた時に素直に観ておけば普通にサプライズを楽しめたものの、もうこれで完璧に「ブルース・ウィリス=死んでいる」という情報が脳内に焼かれてしまったので、いよいよ『シックス・センス』を観ることが困難になってしまい、あの時同席していた彼を憎むのであった。*1

 

 もはや呪文のように「『シックス・センス』を忘れますように、『シックス・センス』を忘れますように、『シックス・センス』を忘れますように…」と唱え続ける日々だったが、50回目のファースト・キス*2を観てはネタバレを食らい、

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  ジョジョの奇妙な冒険』を読んでもネタバレを食らう、と他の名作を触れたって『シックス・センス』のネタバレを食らうのでいよいよ『シックス・センス』のオチは脳裏にこびりついてしまうのであった。

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 もう、記憶を吸い取ってくれる科学技術が発展しない限り、というかそれこそシャマラン的などんでん返し展開がリアルライフで起こってくれないと、僕の脳内から『シックス・センス』のオチの記憶を消し去ることは無理なことは自明であった。『シックス・センス』を観ないでシャマラン作品を観るのも傷ついた心を抉るだけなので、シャマランを避けた映画人生を送ろうと心に決め、日本で『アフターアース』が公開されてシャマラニアンの友人たちが「えらいこっちゃえらいこっちゃ」と盛り上がってる時も僕は一人でほそぼそと日高屋でうまから丼を食ってやり過ごす日々であった。

アフター・アース (字幕版)

アフター・アース (字幕版)

 

 

 そんな僕がシャマラン映画と邂逅することになったのは、2015年に『ヴィジット』が公開された時であった。何を見る予定だったかは忘れてしまったが、時間の都合が合わなくて『ヴィジット』を観に行った。そんな感じの低いテンションではあったが、『ヴィジット』は僕が想像していた通りのシャマラン映画っぽいどんでん返しのあった映画で、とはいえどんでん返しがメインという訳でもなく、随所随所に挟み込まれるシリアスな笑いと言った不思議なユーモアのある映画で、十二分に初シャマラン映画を楽しんだ。

ヴィジット (字幕版)

ヴィジット (字幕版)

 

 

 そして2年後の『スプリット』も友達に誘われて映画館で観に行った。この映画もマカヴォイ七変化の様な映画で、とにかくホラーとコメディのラインを際どく突いていくシャマランの不思議なストーリーテリングに魅了された。しかし、シャマラニスト達に衝撃を与えた例のエンディングに、当然過去作を一切観ていなかった僕は何のことだか一切分からずチンプンカンプンで、後から町山さんのTwitterでその意味を知った。

スプリット (字幕版)

スプリット (字幕版)

 

 

 さて、シャマランの最新作『ミスター・ガラス』が公開されてしまった。日米同時公開され早2週間が過ぎ、すっかり乗り遅れてしまった感があるが、せっかく『スプリット』も観た事だしあの物語の続きが見てみたいし、あの独特なユーモアセンスに再度触れたい欲求が日に日に増した。その為にはやはりシャマラン作品をある程度追いかけてから『ミスター・ガラス』に臨むべきだと思い、シャマランの初期作品ボックス(『シックス・センス』『アンブレイカブル』『サイン』)をAmazonでポチったのであった。

 

アンブレイカブル(字幕版)

アンブレイカブル(字幕版)

 
サイン [Blu-ray]

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 前置きが想定以上に長くなった。で、ネタバレを食らって10年以上経てから観た『シックス・センス』である。やはりブルース・ウィリスが死んだものとして観ていると、徹頭徹尾思わせぶりな演出が本来なら「上手いな〜」と感じるべきところを「あーはいはい、思わせぶりなのね」と斜め上から無意識にどうしても観てしまうのは参った。というか、本来はどんでん返しなどは『シックス・センス』の一要素でしかなく、夫婦仲が上手くいってない(と本人は思い込んでいる)ブルース・ウィリスの切なさがラストで昇華される場面や、ハーレイ・ジョエル=オスメント君(当時)の驚愕なまでの演技力、並びにトニー・コレットとの親子の絆を再構築するドラマなど、見所は多々ある。しかし、自分の中で「『シックス・センス』はブルース・ウィリスが死んでる映画」という情報が10年間の間で肥大していった為に、そういったディテールにあまり集中できなかったのは残念でならない。10年前に僕はネタバレかましたクソ野郎を心の底から憎む

 

 ただ、ネタバレ抜きでも楽しめた部分はやっぱりあって、唐突に挿入される指輪のくだりやゲロを吐く幽霊少女など、やはりシャマラン作品独特のユーモアセンスはタマラン。余談だが、シャマランはスピルバーグに憧れていたという情報をウィキで読んだが、彼の独特なユーモアセンスはスピルバーグ作品でも唐突に出てくるバイオレンスギャグに通底しているのかもしれない。そんな『シックス・センス』のプロデューサーはなんとフランク・マーシャルキャスリーン・ケネディというコッテコテのスピルバーグ一門で、シャマランの出世作としてはかなり幸せな布陣だったのではないだろうか。ハーレイ・ジョエル=オスメント君もその後『A.I.』出たし。

 

 と、そんなこんなで次は『アンブレイカブル』を観てシャマラニストへの道を一歩ずつ進んでいきたいと思います。

 

アンブレイカブル(字幕版)

アンブレイカブル(字幕版)

 

 

 

*1:もちろん、彼は僕に誘発されてネタバレを喋ってしまったので、彼自身に罪はない。

*2:当ブログでは『50回目のファースト・キス』の話題が出るたびに注意喚起を呼び掛けていますが、間違っても福田雄一のゲロカスリメイク版『50回目のファーストキス』と一緒にしないでください