完結編らしくエピックで、完結編故に予定調和/『アベンジャーズ/エンドゲーム』★★☆

 MCU総決算『アベンジャーズ/エンドゲーム』を前夜祭興行で鑑賞。マーベルスタジオ総帥ケヴィン・ファイギ製作の下、監督は前作に引き続きアンソニージョー・ルッソ兄弟、脚本はクリストファー・マルクス&スティーブ・マクフィーリー、音楽はアラン・シルヴェストリ。オールスター映画で、ロバート・ダウニーJr.、クリス・エヴァンズマーク・ラファロクリス・ヘムズワーススカーレット・ヨハンソンジェレミー・レナードン・チードルポール・ラッドブリー・ラーソンブラッドリー・クーパー、カレン・ギラン、ダナイ・グリラジョシュ・ブローリンら豪華スターが共演。

 

※『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』のネタバレを遠慮なくしています。必ず鑑賞後にお読みください。

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 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でサノスの指パッチンにより、全ての生きとし生けるものの数は半分に減り、アベンジャーズの面々も例外ではなかった。一応『エンドゲーム』でなんらかの形で復活させるのだろうと予測できるが、しかしまさか本当に数々の人気ヒーローの死を描くとは思ってもおらず、アメコミ映画では味わったことのない圧倒的絶望感にゾクゾクした。

 

 『インフィニティ・ウォー』に対するアンサーとなる『エンドゲーム』はアベンジャーズからサノスへの逆襲が描かれる。ファンが予想していたようにタイムトラベルという荒業を使い、これまでの11年間のMCUを彩ってきた全てのヒーローたちが勢揃いしてサノス軍団と衝突するクライマックスは、ルネサンス期の宗教画のようにエピックで、同時にアメコミの1コマをそのまま実写化したような外連味溢れるカット割りや構図にはただただ感嘆させられた。

 

 一応の完結編ということもあり、『エンドゲーム』の映画史に残るクライマックスは目に楽しいものであったが、どこかエンディングに近づくにつれて徐々に冷めていく自分を感じてしまった。『エンドゲーム』は完結編らしく盛り上がりを見せる一方で、完結編であるが故にどこか予定調和であるように感じてしまったのだ。

 

 もちろん、前作『インフィニティ・ウォー』が型破りな映画だったことも一因があるだろう。製作発表時はPart I、Part IIとして名前が付いていたので当然『インフィニティ・ウォー』が綺麗に終わるとは思わなかったが、それでも先述したように登場人物の半分が塵となって消えるオチは予想がつかず衝撃的だった。

 

 『インフィニティ・ウォー』を受けて『エンドゲーム』では当然二つの課題がアベンジャーズに課せられる。消されたメンバーの復活と、サノスとの対決である。『エンドゲーム』はこれらのミッションを丁寧になぞるが、逆にいえば前作で塵となったメンバー達が復活すること*1とサノスを倒してしまうことは担保されてしまっているので、『インフィニティ・ウォー』で味わったような驚きを得ることは難しいのだ。

 

 もちろん、『エンドゲーム』は綺麗に物語を終えることを求められるので、ここで下手に捻った展開を見せれば良いというわけではない。クリフハンガーから続く物語を正面から堂々と終わらせるとなれば、本作で製作陣が勝負すべきだったのはサノスの「大義名分」への回答だった。

 

 『インフィニティ・ウォー』は多すぎる登場人物を整理する手段として悪役サノスを中心に深く描き込んだのも画期的で、サノスが全宇宙の生命体の数を半分に減らすことを目論む理由もタイタン族としての出自にまつわって「資源枯渇による生存競争を避けるため」と理には叶っていた。インフィニティ・ストーンを手に入れるために愛するガモーラを自らの手で殺める展開も切なく、更に大いなる野望を果たしたサノスが牧歌的に農園で過ごすという対照的なラストカットも非常に味わい深かった。

 

 サノスはどこか人間くさいのが魅力的で、サノスにはサノスなりの考えがあって悪行を働いた。しかし『エンドゲーム』はサノスの大義名分に対するヒーロー達からのアンサーがなく、ただのパワーゲームでサノスを倒すのも工夫がなく非常に残念だった*2ヒーローだからこその圧倒的正しさや倫理観でもって、思想の面でもサノスに勝って欲しかった。

 

 このように、『インフィニティ・ウォー』の続編としては正直物足りなさを感じてしまった。とはいえ、やはりアベンジャーズがアッセンブルするクライマックスの壮大さは素晴らしく、こんな複雑な画を11年かけてコーディネートしてきたマーベル(=ケヴィン・ファイギ)には本当に恐れ入る。少し辛口めの感想にはなってしまったが、僕が『エンドゲーム』に高い期待値を持っていたことの裏返しであり、凡百の娯楽映画と比べるとはるかに高い水準を保っている映画であることは間違いなく、何より11年かけたイベントとして大いに楽しませてもらった。マーベルの製作陣には労いと感謝の言葉を捧げたい。

 

 11年間本当にお疲れ様でした、そしてありがとう。

youtu.be

 

 

*1:そもそも、スパイダーマンが死んでいるはずなのに『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の予告を出してしまっているのも驚きを殺す要因だった。更に、本作はトニー・スタークの死とクリス・エヴァンズの引退も描かれるが、ロバート・ダウニーJr.とクリス・エヴァンズMCU引退も先に報じられていたのでこの結末もある程度予想はついていた。本作はフランチャイズという枠組みのためにあらゆる驚きが殺されてしまっていた。

*2:しかもアイアンマンがサノスのガントレットを抜こうとして実はインフィニティ・ストーンを取り出していた、というオチも納得できず、じゃあ『インフィニティ・ウォー』の時に出来たじゃん、とも思ってしまう