『ロッキー・ホラー・ショー』を観てきたっす、が……。

 せっかくアメリカにいてハロウィンなのに仮装も何もしてない!ヤバい!ハロウィンと言えば『ロッキー・ホラー・ショー』じゃないか!という事で調べてみたら案の定タイムズスクエアのAMCで上映していたので行ってきました。このブログに何度か登場するAMCですが、アメリカ最大手のシネコンです。日本で言うならば新宿のTOHOシネマズ、と言った感じでしょうか。

 

 僕が『ロッキー・ホラー・ショー』の参加型上映を初体験したのはアメリカに渡った2015年のハロウィンでした。アーカンソーのど田舎の小さい劇場でしたが、公開40周年ということもあって大盛り上がりでした。観客は全員コスプレ、上映中は定番のツッコミが飛んで小道具が飛び、「タイムワープ」では皆席を立って踊って歌う、というある種完成された上映形式を体験して感動を覚えました。

 

 

 もちろん、翌年も参加しましたが昨年と引けを取らない盛り上がりで、いかに『ロッキー・ホラー・ショー』が文化としてアメリカ人に根付いているかを実感しました。僕も2回目は勝手が分かっていたのでお馴染みのツッコミ場所で叫んでみたり楽しめました。

 

 で、一昨年と去年はあいにく仕事が忙しく参加できなかったので、3年ぶりに参加する『ロッキー・ホラー・ショー』に僕はワクワクしていました。今回はNYという大都市ということもあって、劇場内には気合の入ったコスプレをしたファンがたくさんいました。ところがどっこい。

 

 えー、ここで最初にわざわざなんでタイムズスクエアのAMCが日本の劇場で置き換えて説明したかに関連しますが、安全面に配慮して小道具の持ち込みを禁止していたのです。最近は『ジョーカー』騒動もあってコスプレにも厳しいくらいですし、この劇場では『ロッキー・ホラー・ショー』を10月中に何度も上映していてその度に掃除をするのが大変なのは理解できます。なので大手シネコンの措置としては仕方がないっちゃ仕方がないですが、『ロッキー・ホラー・ショー』はライスシャワーのシーンで米を投げたり、トイレット・ペパーを投げたり、乾杯のシーンでトースト投げたりして初めて成立する、といっても僕は過言じゃないと思うので、これだと『ロッキー・ホラー・ショー』の魅力が半減以下じゃないかとガッカリでした。

 

 声を出すこと自体は禁止じゃないのでブラッドとジャネットが登場するたびに「クソ野郎!」「あばずれ!」とツッコミが飛んだり、ミュージカルシーンで一緒に歌ったりしてたのは楽しかったですが、小道具禁止が醸し出す中途半端な空気は伝播していたようで、せっかく皆気合の入ったコスプレをしてきているのに観客が勝手にスクリーンの前で演じ出すシャドーイングもありませんでした。何よりビックリしたのはド定番の「タイムワープ」のシーンで誰も立って踊り出さなかったことです。じゃあ、お前が踊れよ、という話ですが、情けない話ノリのいいアメリカ人観客が踊れなかったら、一人でひっそり観に行っている僕が踊れないのは言わずもがなです。

 

 まあ、しかしこの体験で『ロッキー・ホラー・ショー』の楽しさは観客のバイブスに左右される、という映画という完パケしたものを上映する興行形態ではあり得ない魔力を持っていることが分かりました。実際、僕は今回あまりのつまらなさから途中から爆睡してしまいましたしね。恐らく初めて『ロッキー・ホラー・ショー』を一人で家でDVDで観た時にあまりハマれなかったのもほとんど同じ理由です。

 

 逆説的にいうと、まだ『ロッキー・ホラー・ショー』を観たことがない幸運な方は、絶対に参加型上映という形で体験することをオススメします。僕は生憎まだ参加したことありませんが、日本だとカワサキハロウィンが伝統的に参加型上映を毎年行なっており、かなり気合が入っていると聞いています。地方でも定期的に有志がイベントを行っているので、気長に待ちましょう。それくらい『ロッキー・ホラー・ショー』は参加での「体験」に価値がある作品だと思います。

 

とある劇場での「タイムワープ」の様子。