『サウスパーク』S23E4「Let Them Eat Goo」感想

 今回の『サウスパーク』は全米で話題の植物性の人工肉インポッシブル・バーガーをフィーチャーしている。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のパロディも登場!

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 前回*1の終わりに中国と手を切ることでタオリーと仲直りしたランディだったが、チャイナマネーを失ったことでテグリディー・ファームの売り上げは落ちていた。誰もやる気を出さない家族会議で「大麻の収穫過程で通常捨てる部分も敷き藁として売れば利益が上がるのでは?」というタオリーの案に乗る。

 

 その道中、バーガーキングで昼飯を食うことにするが、ふと「インポッシブル・ワッパー」というメニューを目にする。植物由来の人工肉であることを店員から聞いたランディはひとつ食べて見ることに。「クソみたいな味だな!君たちこれで儲けてるの?」「人気のメニューなんですよ。多くの人が環境問題や資源の持続可能性に気を使ってるので」「これ本当に犬のウンコの味がするのに、人々がこれを買い求めてるの?それは素晴らしいな!……んちょっと待てよ、植物由来?閃いた!」

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 さて、サウスパーク小学校ではランチにスロッピージョー*2が出るということで、非常に楽しみにしていたカートマンとバターズ。しかし健康と環境問題を気にかける生徒達のせいでメニューが魚に変更されてしまった。激昂したカートマンはそのまま心臓発作で倒れ、救急車で運ばれる。

 

 翌日死にかけたカートマンが登校すると「健康なんかを気にする女子生徒達にオイラ達のランチを荒らされる訳にはいかない!」と男子生徒達を煽る。「なによ、女の子だけじゃないわ!ヴィーガンの生徒だっているのよ!多くの生徒達が抗議しているのよ!」とニコールが返すと、「その抗議がオイラのランチを台無しにしているんだ!」と怒るカートマン。ヴィーガンの生徒が「僕たちには表現の自由があるんだ!」と抗議すると、「確かに表現の自由はあるが、他人ではなく自分のことだけを考えてると、それによって引き起こされる問題もあるの!」とまた動悸が高まってきたのでマッケイ先生が止めに入る。「エリック、落ち着いて!もうランチメニューは変えないから!」「そんなの不公平よ!」と女子達が抗議すると、「ごめんなさいね、でも生徒の健康が最優先事項だから」とマッケイ先生。

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 さて、大麻製植物を利用した人工肉「テグリディー・バーガー」を開発したランディ。ジェラルドに試食させるととんでもなくハイになり好評だったので、バーガーキングの外に店舗を構えることに。ランディのテグリディー・バーガーは大成功で、さらに市議会でも人工肉は環境問題にも良いと説得した甲斐もあり、牛肉よりもテグリディー・バーガーが好まれてしまう。そうなると怒るのは大量の牛を飼育している牧場主で、ランディの元へ訪れる。「お前のせいでわしの商売は上がったりだ!世間が突然いらなくなってしまったこの300頭もの牛をどうしてくれるんじゃ!お前が責任もって飼え!」為すがままにテグリディー・ファームに大量の牛が放置され、ランディとタオリーは困り果てる。

 

 さあ、学校で肉メニューを取り戻したカートマンはバーベキューリブを貪り食っていたが、女子生徒達がランチ中に環境問題と地球温暖化について抗議しているのを見てまた心臓発作で倒れてしまう。この事態を見かねたPC校長は妥協点を探し、人工肉会社インクレディブル・フードの創業者グー・マンを招いて食堂の食材を提供してもらうことになった。しかし、グー・マンはサウスパーク中の人工肉市場を牛耳、競争相手を潰すことを目的としていたのであった……。

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 グー・マンは明らかに『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でダニエル・デイ=ルイスが演じたダニエル・プレインビューをパロディにしていて、喋り方もダニエル・デイ=ルイスに似ていて最高。途中、ランディのせいで困窮したバーガーキングの店員も射程に迎えるんだけど、その店員をH・Wと呼ぶのも笑う。H・Wはダニエル・プレインビューの息子のこと。

 

 環境問題について声高に主張する女生徒達は明らかにスウェーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリをはじめとして、環境問題に積極的に取り組むミレニアル世代を代表している。それに自分の都合でわがままに怒鳴りつけ大げさに心臓発作まで起こすカートマンは、グレタを小馬鹿にして怒る大人達か。ただ、『サウスパーク』のスタンスは一貫して「右も左もバカにする」なので、どちら側の立場にも寄ってないし、究極はどちらの勢力も同じなんだと本作のエピソードでカートマンが説くのはクレバー。

 

 トレイとマットは中国ネタを今回も引っ張っており、カートマンが「確かに表現の自由はあるが、他人ではなく自分のことだけを考えてると、それによって引き起こされる問題もあるの!」と怒鳴った台詞は実はまんまNBAのスター選手レブロン・ジェームズが中国政府とヒューストン・ロケッツの間で生じた軋轢に対して放った言葉をそのまま引用している。レブロンは社会問題意識が高く、これまでもトランプを批判したり、様々なチャリティーに参加したりしていたが、今回はNBA同様中国の擁護に回ったことでダブルスタンダードだと批判を受けている。本当、トレイとマットの謝罪文通りになっちゃってるよ!*3

 

 

*1:

*2:ひき肉とミートソースを使ったサンドイッチ。アメリカ発祥。https://ja.wikipedia.org/wiki/スラッピー・ジョー

*3: