アメリカに来てから初めて盗難にあった。しかも自宅で。
引越し下準備で売れそうな服を集めて袋に入れ部屋の外に置いていたのだが、怠け者の性分なため1ヶ月くらい放置していた。すると昨日家に帰ってみると、服が半分ほど減っていた。ポカンとしているとルームメイトのフィリピン人のおじさんが「ああ、やっと帰ってきた!お前の服がパクられてるかもしれないぞ!」と教えてくれた。何事かと説明を聞いてみると、今日上の階に住んでいた住人2人が追い出されたのだが、その際に盗んでいったに違いない、とのことだった。
少し背景を説明すると、我が家はランドリーを経営している大家が宿っている従業員が何人か暮らしていて、このフィリピン人のおじさんもその一人。上の階に暮らしていた住人2人もちょっと前からこの家に住んでいたが、勤務中の態度が悪かったのと、夜いつも騒がしくするためランドリーもクビになって家も追い出されたらしい。まあ、確かにこの状況では彼らが一番怪しいのは間違いない。*1
かなり腹が立つが、実はこの文章で書くのに気をつけた事が一つあって、この疑わしい住人2人の人種を特定しないようにしていた。というのも、ルームメイトのおじさんがしきりに「上の階の○○人2人がやったに違いない!」と言っていたのだが、僕のアパートはこれまでアジア人に限定されていた。これは大家の「アジア人は真面目だし信頼できる」という考えの元で住人を選んでいたからで、今回は例外的に住人2人を住まわせていた。そして、彼らはステレオタイプ通りに問題を起こし、僕の服を盗む疑いまでかけられた。
で、僕が彼らの事を書かなかったのは善人ぶろうとしていた訳ではなくて、何を隠そうムカついていた僕の中で「○○人め…」と差別心が芽生えていたことに気が付いて驚いたからだ。よく思い出すのは今年亡くなった婆ちゃんが「戦後朝鮮人がスイカを畑から盗んでいたから信用できない」と話していた事で、幼子心に僕は「チョーセン人はスイカを盗む人たち」という情報を植え付けられた。そのまま大人にならなくて良かったと思うが、ここで僕が「○○人が僕の服を盗んだ」と書いてしまうと婆ちゃんと同じく僕も人に差別心を拡散する事になってしまう。僕の中で生まれてしまった差別心は僕の中で留めて焼却処理をしておかないといけない。
しかし、だからと言って服を盗った奴らに罪が無いわけではないよ。*2大家はまだ彼らに辞めた時の給料を渡してないらしく、もし彼らが盗った事が判明したらこの給料を人質に盗んだ服の返還を要求するとのこと。僕としてはどっちにせよ処分する予定の服だったからそこまでして貰わなくてもいいんだけど、まあもし彼らが本当に盗んでたらザマアミロとしか言えないよね!
偏見や差別はなぜ起こる?: 心理メカニズムの解明と現象の分析
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