今回の『サウスパーク』は特に時事ネタは扱っておらず、「糞泥棒」というタイトルが示すように、初期の頃を思い出させる下品で笑えるお話に仕上がっていた。今シーズンは毎回OPが異なるが、今回のOPは婦人系リアリティショーのパロディ。
サウスパークの議会では女性の権利向上を求める会議が開かれていたが、リーダーのシーラが突如嘔吐と下痢を撒き散らして倒れる。病院に駆けつけたカイルとアイクが医者から「お母さんはクロストリジウム・ディフィシル腸炎にかかっている。人間の体というのは無数の細菌でできている。君のお母さんは悪性の細菌が蔓延しており、唯一の治療法は便微生物移植しかない。つまり、健康に良い糞をアナルを通して投与することだ*1」説明を聞く。そんなことが知られたら皆にバカにされてしまう！と恐れたカイルとアイクは誰にもこの治療法を漏らさないことを誓うも、その努力も虚しく、便微生物移植を受け頗る快調のシーラはサウスパーク中の奥様方に容態を聞かれるたびに「あら〜あたしはウンチを移植してもらってから体の調子が最高なのよ〜」と自慢し、恥をかかされる。
後日、病院からパッケージがカイルの元へ届く。中には便微生物移植を説明するビデオが入っており、そのビデオは子供が誤った認識を持たない為に、人間の体がいかにして細菌で構成されているかを啓発するものであった。リモコンにも、洋服にも細菌や微生物は住んでいる。ビデオの啓発は続く。『タマを掻いてごらん。君にタマがなかったら同じ様な場所を書いてごらん。そしてその臭いを嗅いでごらん。そう、それが何百億もの細菌の臭いだ』ビデオの意図とは裏腹にその事実を知ったカイルは、細菌への脅迫概念に襲われ、夜な夜な細菌への悪夢に襲われるのであった。
さて、ファンシーなレストランで食事会を開いていたシーラとママ友たち。サンバイザーまで被って健康体そのもののシーラにママ達は羨望の眼差しを向ける。「あら〜シーラ、あなた最近本当に若く見えるわ。私たちの間で話してたんだけど、ちょっとで良いからあなたのウンチを分けてくださらない？お医者様に相談したんだけど、医療目的以外の便微生物移植はできないらしいのよ〜」とハリエットのお願いに困惑するシーラは「あ、あら、お医者様がダメというなら止したほうがいいわよ。別に分けたくないと言ってるわけじゃないけど、なんか良くないことの気がして」「あら〜全然いいわよ〜気が進まないなら無理にとは言わないわ〜」とママ友たちは笑うものの、シーラが席を後にした瞬間「ちょっとくらいいいじゃないのよ！あのアバズレ！」と毒づくのであった。
翌日、カイルはいつもの仲間に相談する。「僕たちの体の半分は微生物だらけなんだよ！まつ毛にも歯にもたくさんのばい菌が住んでいるんだ！」と不安を訴えても、3人はピンとこないばかりか、カイルの母親がウンチ移植を行ったことをカートマンはバカにする。そんな折にハリエットが4人の前に現れる。「あら〜カイルちゃん、会いたかったわ〜、町中を探し回ったのよ」「・・・なんで？」「さっきね、ゲーム屋さんに行ってこれ買って来たのよ〜じゃん、『スター・ウォーズ/フォールン・オーダー』よ！レビューも良いから欲しいのかと思って。ただね、その代わりにあなたのお母さんのウンチを採ってこのジャーの中に入れて欲しいのよ」ぶっとんだオファーにカイルは「なんだって？ゲー、ヤダよ、気持ち悪い！」と断るも、「まあ、考えておいてちょうだい、ゲーム内で自分のライトセーバーを作れるって聞いたわよ〜」とジャーを置いてハリエットは去る。
「お前なんで断るんだよ！クリスマス前に『フォールン・オーダー』を遊べる最高のチャンスじゃんか！」と3人はカイルを攻めるが、細菌恐怖症になっているカイルは絶対に首を縦に振らない。仕方がないので、カートマン、スタン、ケニーの3人はカイルの家に忍び込み、シーラのウンチを盗み出そうと画策するのであった…。
久々に複雑な背景なしに純粋に楽しめるエピソードだった。この後展開はさらに加速し、最も健康な人間の便＝トム・ブレイディのウンコを求めて奔走するのがバカバカしくて最高。ただ、とんでもないウンゲロ展開になってくるので、苦手な人は注意！
なお、「Turd Burglar」はスラングで同性愛者の男性を指す。また、実は本作はデビッド・リンチの『デューン/砂の惑星』のパロディにもなっている。しかし『ジェダイ：フォールン・オーダー』は買っては居ないけどウンチを盗んでまで欲しいほど評判が良いのか。『バトルフロントII』が大炎上した時とは大違いだ。
*1:僕もにわかに信じがたかったが、実際に存在する治療法である。
