サウスパークS23E10「Christmas Snow」

 僕の体たらくのせいですっかり年が明けてしまったが、今シーズン最終回はクリスマススペシャル!なお、今シーズンは毎回オープニングが違うが、最終回にしていつものオープニング曲が帰って来た。

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 サウスパークではクリスマスフェスティバルが開かれていた。子供達はスケートを、大人たちは出店のお酒を楽しんでる中、ギャリソン先生の弾き語りの後にスペシャルゲストのサンタさんが登壇。「ホーホーホー、メリークリスマス!幸せのシーズンなんじゃが、ホリデーシーズンは飲酒運転のシーズンであることも忘れてはいけないぞ。ホリデーシーズンは飲酒運転によって引き起こされる事故が一番多いシーズンなんじゃ」さんとの登場に喜ぶ子供達の一方で、大人たちは「これってまるで地球温暖化のグレタみたいじゃないか!白けさすんじゃないよ!」とブーイング。酔っ払った大人たちは各々車に乗りあちこちで事故を起こしながら家に帰るのであった。

 さて、翌日。町中のスーパーマーケットや酒屋、バーまでも酒の販売がホリデーシーズン終了の1/2まで禁じられていた。郡の議会で新法が通ってしまい、大人たちは絶望する。「き、気晴らしにドライブでもするか?」「シラフの今、ドライブして何が楽しいんだ・・・!」と肩を落とす。

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 サウスパーク経済は落ち込み、状況を見かねた市長は最後の手段としてテグリディ農場へ訪ねる。町の皆で玄関を叩くと白髭をたくわえたランディが現れる。「やあ、皆こんなところで何をしてるんですか?」「マーシュさん、サウスパークにはあなたが必要なんです。誰も外に出かけませんし、クリスマスプレゼントも買わないんです。市民の間でクリスマススピリット*1が失われてしまったんです!もしかしたら、大麻で少々皆の機嫌を良くさせることができるかもしれないですが……」「私にクリスマス・スペシャルを作れって言ってるんですか?とはいっても、もうこの農場のシーズンは終わってるし、作物も死んでしまってるし……」「あなたならできます!何故ならあなたはランディ・マーシュだからです!あなたにはテグリディー(誠実さ)があるのです!

 

 

 町民たちに鼓舞されたランディは早速タオリーとともにクリスマススペシャルの開発にとりかかる。とはいえ、マリファナは寒さの中では育たない。「売れ残りを混ぜ合わせて見たら?」とタオリーが提案すると、「いや、何かスペシャルなものが必要なんだ!売れ残りを混ぜ合わせて違う名前をつけたって、そんなのスペシャルじゃないし、テグリディーじゃない!ああ、イエス様、もうすぐあなたの誕生日ですが、あなたほどスペシャルなものを作りたいのです……」とランディは遠くで輝く星を見つめていると、突如雪が降りだす。閃いた!

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 翌日、子供達が楽しくスケートしている一方で、ここのところ禁酒している大人たちは憂鬱な表情を浮かべていた。そこへランディがスノーモービルで颯爽と現れ、新作の「クリスマス・スノー」をお披露目する。乾燥大麻に謎の白い粉がついた「クリスマス・スノー」に大人たちは大喜びで買い求める。「わあ、とてもいい匂いがする!この白いのはなんなの?」「スペシャルなキック(刺激)を味わえる、特別なものさ!」「おい、皆!何を待ってるんだ!早く運転しようぜ!」とブリブリにキメた大人たちはまたも車に乗り込み、あちこちで交通事故を起こしながら帰路につくのであった。

 

 しかし、後日怒りの表情を浮かべた市長がテグリディ農場を再訪する。
「どうしたんですか市長?皆クリスマス・スノーが気に入らないんですか?」
「いえ、むしろ皆気に入っていますが…この白い物質は一体なんですか?」
「ああ、それはコカインですよ。」
「ななな、なんですって?」
「イエス様にお祈りしてたら閃いたんです。粉と雪がクリスマス・スノーを特別にするんですよ!コカインの入手は難しいので、自分たちでコカの葉を栽培し始めたんです。」
「あなた頭がおかしいんじゃないの!コカインは違法ですよ!
「……そうなの?」
「人に知らせないでコカインを与えるのは立派な犯罪です!私たち皆刑務所行きですよ!」
「お、落ち着いてください!私に任せてください、一回経験してますから!ちょっと待っててくださいね」

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 そういってランディは町に出くわし、コカインを合法化するための署名活動を行い、デモを行い、議会に出席し、医療用コカインをまず合法化させ、今度は嗜好用のための署名活動を行い、コーチェラで合法化のためのチャリティーを行い、デモを拡大し、市長が待つ家にランディが戻る頃には7州にてコカインが嗜好用も医療用も完全に合法化しているのであった。

 

 しかし、サウスパーク市民が飲酒運転どころか薬物運転をしまくっている状況に業を煮やしたサンタはついに行動に移すのであった……。

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 今回はS23のストーリーアークに呼応して最終回は遂にコカインまで登場したが、日本のドラッグ事情と比較すると興味深いエピソードかもしれない。

 

 僕がアメリカに渡ってまず驚いたのは、大多数の人が平気で飲酒運転していることだった。州法によってアルコールの血中濃度の許容範囲が異なるが、それでも車社会アメリカではバーに行くのも運転し、当然帰り道は酔っ払って運転して帰る。日本だと信じがたい光景で、もちろんアメリカでも飲酒運転は厳罰の対象だが、どういう訳だか市民が飲酒運転には寛容な国なのだ。

 

 一方、日本は薬物に関してとても厳しいが、飲酒行為自体にはとても甘い。例えば、海外のほとんどの国では路上でお酒を飲むことは法律上禁止されていて、運悪く警察に見つかれば留置所へ送られる。更に、呂律も回らないベロンベロンの状態で町を歩いているところを警察に見つかれば、「パブリック・イントクシケーション(公的酩酊)」の罪で逮捕されてしまう。逆に日本では平気で酔っ払ったサラリーマンが電車や爆睡している光景をよく見るが、これは海外では異常な光景として捉えられている。

 

 コカインの合法化を大麻の合法化の流れをパロディにして取り上げているのも面白く、よく反対派が言うように確かに違法薬物の合法化は線引きが難しい。ただ、コカインも南米では非犯罪化や所持・栽培の合法化が進んでいるし、そもそもアメリカも医療用コカインを非常に限定的ではあるが合法化している。

 

 アメリカのドラッグ観が面白いエピソードではあったが、やっぱりテグリディ農場関連のギャグはあまり好みではないのでいい加減終わって欲しいけれど、これまだまだ続きそうだなぁ…。ひとまず来シーズンまで待ちましょう!

 

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*1:キリスト教圏の考え方で、ホリデーシーズンは幸せと分け与えのシーズンであり、シーズン特有のワクワク感をクリスマス・スピリットと呼ぶ。根底にはキリストが説く「感謝の心」があり、ハリウッドで作られるクリスマス映画の多くはクリスマス・スピリットが題材になっている。