『テラスハウス TOKYO 2019-2020』は攻めている

 先週病気でぶっ倒れていた時、見溜めしていた『テラスハウス TOKYO 2019-2020』を一気見したんだけど、第29話でとても気になるカットがあった。それは当時、プロレスラーの木村花プロバスケ選手の田渡凌に片思いしていたが、新しく入居して来た女優・モデルのビビ(ラズドゥミナ・ヴィオレッタ)という強敵が現れ、すっかり凌がビビに骨抜きにされていることに嫉妬心を覚える、というシーンでのことだ。

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 凌は寒そうにしているビビのために自分のパーカーを渡す。凌のことを気になっているビビも嬉しそうにパーカーを着る。ビビからの明らかな好意に気づいている凌はデレデレ。

 

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  仲睦まじい様子が気になっている花は、2階の窓から二人の様子を覗き見してしまう!

 

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 イチャイチャしている二人だったが・・・

 

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 二階から覗いていた花に気付いてしまう!

 

 ・・・という一連のサスペンスフルなシーンだったが、二階から覗く花の画を押さえるためには、当然わざわざカメラをそちらに向けてセッティングしないといけない訳で、偶然カメラマンが押さえたと考えるのは無理がある。演者にも不自然なカメラの位置が伝わってしまうかもしれない。つまり、何らかの形で演出が入っていないと、撮ることができない不可能なショットなのだ。

 

 と言っても、僕は今更『テラスハウス』のヤラセ論なんて稚拙な話をするつもりは毛頭ない。以前対談記事でT.Sくんが言っていた内容をまとめると、テラスハウス』は現実という素材でフィクションを作ろうとしている、野心的なドラマなのだ。だから僕は『テラスハウス』には演出が入って然るべしだと思っているし、これまでのシリーズの名シーンの数々だって演出なしには成立し得なかった。 

taiyaki.hatenadiary.com

 

 ということを念頭に置いていても、このカットの唐突さには違和感を抱かざるを得ない。『テラスハウス』は「台本は一切ない」という前置きを視聴者に毎度説明するが、その根幹の部分を揺るがしかねないくらい、このカットが人工的過ぎるからだ。ちなみに『テラスハウス』のお色気パロディ企画である『ペロペロハウス』では、童貞の男の子が、自分が気になっている女の子が他の男の子に尺八をしている所を目撃してしまうカットが出てくるが、これは『ペロペロハウス』がパロディだから成立しうる反則技だった。それを本編の『テラスハウス』でやってしまうのはある種衝撃的だ。

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 とはいっても、流石に『テラスハウス』でこのシーンを全てを作り上げるのは制作的にはリスクが大き過ぎるので、全てをでっち上げたとは思わない*1。想定しうるに、例えば花にだけ覗きに行くようにこっそり指示を出したり、あるいは連日凌とビビの様子を伺っている花に気付いた制作スタッフが窓にもカメラを向けるようにしたなど、様々な演出方は考えられる。ここで論じるべきなのは第29話がヤラセかどうかではなく、第29話の該当カットがいかに挑戦的だったか、という点なのだ。

 

 今期は更に卒業した田渡凌が、『テラスハウス』スタッフによる撮影を嫌がってビビとのデートを断るなど、「撮影」や「カメラ」を匂わせる展開もこの数エピソード後に登場した。テラスハウス』がここまでメタ的なのは今までにはないことで、最近は非常に攻めて番組を作っていると思う。最新話では社長という空前絶後の荒らしキャラも登場したので、益々目が離せない!

テラスハウス クロージング・ドア

テラスハウス クロージング・ドア

  • 発売日: 2015/08/19
  • メディア: Prime Video
 

 

*1:これは『テラスハウス』のあらゆる名シーンにも通じて言えることですが