『ザ・ルーム』公開初日を迎えた!......のだが!の巻

 『ザ・ルーム』がめでたく公開初日を迎えました!なんといっても新型コロナウイルスの蔓延状況が心配でしたが、こんなご時世の中でも40名以上のお客さんに来てもらえたのは感激でした。足を運んでくれた方々には最大級の謝辞を申し上げます。ありがとうございました!

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 僕もお客さんの反応が見たかったので当然駆けつけました。待っている最中にチラシを読んでいただているお客さんを見かけたり、劇中所々笑いが起きていたのを見るのは嬉しかったのですが、僕は正直「このままではマズい」という危機感を抱いてしまいました。というのも、情勢上仕方がないこととはいえ、「スプーン上映」ができないのが非常に手痛く、『ザ・ルーム』をどう見たら良いのか戸惑ってるお客さんも少なからず見受けられたからです。

 

 配給担当者として誤解を恐れずハッキリ言いますが、『ザ・ルーム』はまともに観てはいけない映画です。『ザ・ルーム』という映画には17年かけて醸成された独特のツッコミ文化があり、アメリカやロンドンだと『ザ・ルーム』を上映している劇場に行けば、10年以上通っている常連さんのツッコミや野次を聞けるので初見でもかなり楽しめます。(実際僕がそうでした)

 

 ただ、当然2020年3月6日まで、日本で劇場で『ザ・ルーム』を体験した人は一人もいませんでした。なんとなく「史上最低の映画」という認識はあるけれども、果たして笑って見てもいいのか、笑うべきポイントはどこなのか、お客さんも躊躇している印象を受けました。

 

 ここで僕は、よく試写会にいる嫌みたらしい映画マニアみたいに、分かった風な感じで笑え、と言っているのではありません。面白く感じなかったら笑わないのは当たり前ですし、つまらないと思う作品に対して無理に自分の感性を曲げる必要はありません。『ザ・ルーム』という作品のとても困ったところは、正直『ザ・ルーム』単体では興行として成り立たず、観客の野次やスプーン投げが『ザ・ルーム』という作品を補完して面白くさせている点にあるのです。(しかし、逆説的に観客にツッコミを入れるスキを与える緩さこそが『ザ・ルーム』の作品としての最大の魅力であるとも思っています。)

 

 なので、『ザ・ルーム』を映画館で静かに流しても、ただ単に退屈で稚拙な映画が流れるだけです。僕は自分自身がアメリカで心底楽しんだ「スプーン上映」を必ずセットで『ザ・ルーム』を日本に持ち込みたかったですし、そんな僕のワガママを劇場関係者の皆さんはとてもよく汲んでくれたと思いますし、頭が上がりません。

 

 だからこそ、この『ザ・ルーム』は「スプーン上映」を持ってして初日を迎えたかったし、今日の劇場の戸惑った空気を思うと、新型コロナウイルスの蔓延が憎くて憎くて致し方ありません。同時に、『ザ・ルーム』のカルチャーを日本に根付かせることが僕の目標なので、このままでは絶対に終わらせることができません。今のままだと、『ザ・ルーム』が日本に定着できなくなってしまうことへの危機感を抱きました。今後、新型コロナウイルスどれほど広まろうと、必ず「スプーン上映」を実現させてやると、心に固く決意したのでありました。......最早僕はトミー・ウィゾー以上に『ザ・ルーム』を真剣に考えている自身があるよ!

 

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