油断

 僕の親父は一つの場所にじっとしていられる人ではないので、何かと理由をつけて外出しようとする。母曰く、緊急事態宣言中も家に留めておくのが大変だったそうだが、宣言が明けてからはコロナがなくなったかのように外出している。今日は勝浦の温泉まで1泊旅行に出かけ、やっと実家に届いた現金給付を取りに行った僕もついでに着いて行くことになった。そうして温泉宿に着き、ニュースを見ると東京都では47人の感染者が出ていた。

 

 まるで僕の父親は「コロナがなくなったかのように」行動していると書いた。高齢の父は糖尿病も抱えており、その向こう見ずな行動を僕はよく非難するが、ふと人の事を言えるのだろうか、とも思う。今週末実家に帰ろうとしたのは、無意識に「もうそろそろ大丈夫のんじゃないか」という油断があったからではないだろうか。

 

 人間社会を動かすのは政治や経済や思想だが、コロナにはもちろんそんなもの関係がない。人々が「あれだけ自粛したから良いじゃないか」と羽を伸ばそうったって、コロナに付け入る隙を与えるだけだ。つくづく厄介な病気だよなぁ、なんて温泉宿で書いたって何の説得力もないな。ちなみにこの宿の駐車場は満車だった。