僕は映画館保守派

 昨日の書いた記事と少し似た話だが、先日NY時代の友達から急に電話があった。彼女も映像系の職に勤めているが、コロナの影響や日に日に厳しくなるトランプ政権の移民政策問題もあり、母国の韓国に帰ろうと考えているようだ。が、彼女の性格的には後ろ向きな選択ではなく、むしろポストコロナの世相を考えた結果、韓国に戻った方がずっと将来性があると判断したのだそうだ。

 

 で、そんな話を聞きながら雑談したのだけれど、最近観た映画の話になった。彼女は「最近、映画を観る集中力がなくなっている」と話すので「だから映画館が大事なんだよ、途中停止できないから」と何気なく返すと、「でも、映画館はそのうち無くなるよ」と彼女は言う。あまりにもアッケラカンとした返答だったので、僕は思わず言葉を失ってしまった。

 

 誤解ないように先に言っておくと、この友達は映画が大好きだ。昨年末NYに滞在していた時、久しぶりに再会した彼女と『パラサイト』が傑作かどうかで激論を交わし、彼女は「『パラサイト』は韓国を欧米向けにファンタジー化しているのが腹に立つ」と、非常に鋭い視点も持っている程だ。でも彼女は映画館は消えるし、消えてしょうがないと思っている。

 

 日本でもミニシアターを守ろうとする動きはあるし、今世界中の映画ファンが映画館の行く末を案じている。しかし事実として、世界的にYouTubeTikTokなどで短い動画に慣れてきた若者世代が映画を観なくなってきたところに、コロナショックがやってきた。こうした「ミニムービー」世代を取り込むべく、短編動画をメインとしたQuibiなんてプラットフォームが出てくる始末だ。映画館はネット動画カルチャーに駆逐されていくのは、悲しいが起こりうる未来像なのだろう。彼女の理屈は非常によく分かるし、合理的で先進的だ。*1

 

 だけど、僕はやっぱり映画は映画館で観たい。明日、奇跡的にコロナがこの世から消え去り、満員の劇場でコメディ映画を観て笑いたいし、ホラー映画でギョッとしたいし、アクション映画で手に汗握りたい。映画は映画館で観られることを前提に作られるべきだ。そんなことを伝えたら、彼女は「いつも君が嘆いている日本社会みたいに、すごい保守的な考えだね」とからかってきた。返す言葉もなかったなぁ。

 

世界の映画館

世界の映画館

  • 発売日: 2019/11/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

*1:ちなみに、ガチで僕の予想をすると、僕も映画館は数を少なくするとは思うが、かつて『アラビアのロレンス』や『2001年宇宙の旅』が「ロードショー」としてアメリカで公開されていた時代のように、「豪華な娯楽体験」として生き残っていくんじゃないかと思う。そうなったらそれはそれで嫌な時代だなぁ。