君は4年前のアイスを食べた事があるか?

 何度か書いて来たが、僕が今住んでいる家は去年亡くなった祖母のマンションだ。祖母はハーゲンダッツのアイスクリームが大好きで、僕らが遊びに行くといつもハーゲンダッツを出してくれるくらい冷凍庫にストックしていた。

 

 祖母が倒れ、僕の実家の近くにある老人ホームに移ったのは4年前の7月だ。壁にかかっているカレンダーが2016年7月から変わっていないことから、その間誰もここに住んでいなかった事が分かる。いずれこの家は売り渡される予定で、僕は遺品整理という命も預かって今ここに住んでいる。(絶賛サボリ中だが)引っ越した初日には得体の知れない物体を冷蔵庫から大量に処分した、ということは前にも書いた。

 

 

 だが、捨ててないものもある。冒頭にも書いた、冷凍庫に眠る大量のアイスだ。 もう4年はそこに眠っているはずだが、僕は捨てなかった。「アイスには賞味期限がない」という噂を聞いたことがあったからだ。実際、調べてみると天下の製菓会社グリコのホームページにだってそう書いてある。

アイスクリームや氷菓は冷凍で保存されているため、温度管理をきちんと行えば品質の劣化が少なく、かなりの長期間で保存が可能。このため賞味期限を表示しなくてもよいとされています。


 僕は甘党だが、基本的に無駄遣いはしないので自分で買うことはあまりない。いつか無性にアイスが食いたくなった時に、婆ちゃんが遺してくれたこれらのアイスに感謝する日が来るんじゃないだろうか。ある意味、これは祖母の遺品である。そんな思いで、僕は2016年に購入された貴重なグリーンティーアイス4つを大事にとっておいた。

 

 月日は流れ、引っ越してから4ヶ月。暑い、暑すぎる!久しぶりに日本で過ごす夏、梅雨も長引いていることもあって蒸し暑くてしょうがない。なんだか口周りが「冷やし」を求めている。そうだ、アイスを食おう。婆ちゃんが遺してくれたハーゲンダッツを。「いつか無性にアイスが食べたくなった時」が、遂にやって来たのだ。

 

 早速、冷凍庫から一つ取り出し、開けてみる。くんくん。悪い匂いはしない。スプーンを指すと滑らかさはないが、匙に乗っかったそれは、どっからどうみてもハーゲンダッツのグリーンティーアイスである。よく婆ちゃんが振舞ってくれたな、懐かしい。郷愁を感じながら口に入れる。猛暑に少しの涼しさをありがとう、婆ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴオェッ!!!!

何これ、マッッッッッッッッッッッッズ!!!!!!

 

 

 思わず、水洗い場で吐き出した。なんだこの食感。確実に冷凍庫にキンキンに冷やされていたはずなのに、全然冷たさを感じない。アイス特有のしっとり感がなく、パサパサする。しかもグリーンティーとパッケージに書いてあるのに、ミントの味がしやがる。これはとてもじゃないが、食えたもんじゃない。今まで味わったことのない、衝撃的な何かである。手に持っていた食べかけのハーゲンダッツ(2016年製)を思わずゴミ箱に投げ捨てた。冷凍庫に眠る婆ちゃんの残りの遺品も全部速攻で投げ捨てた。

 

 アイスには確かに賞味期限表示はない。だが、確実に「味」には適した期限がある。さっきのグリコのサイトもよく読んだらこんなことが書いてある。

とはいえ、ご家庭での保存中に、温度変化などによって味が変わることもあり得ますので、購入されたら早めに食べることを心掛けたいですね。

 

 だが、失敗を踏まえて、人間は賢くなっていくのだ。少なくとも、これから僕は街で知り合った人に問うことができる。4年前のアイス食ったことある?え?ないの?ニワカじゃーん!僕はあるね!