燃えるけど主人公にイライラするシリーズだった!/『スター・ウォーズ 反乱者たち』感想

  • スピンオフアニメシリーズ『スター・ウォーズ 反乱者たち』を観終わった。ちなみに放映順に見ているので、『クローン・ウォーズ』の感想はS7を見終わった時に書きます。つまり、その前にレジスタンス』を2シーズン観ないといけません。ダルゥ…。
  • で、『反乱者たち』を観終わっての感想は、「燃えるところはかなり燃えるが、アラや欠点も無視できないくらいには大きく、フラストレーションも時々溜まった」というのが率直な意見だ。
  • まず良かった点だが、『クローン・ウォーズ』のシーズン6からかなりCGアニメの質が向上しており、キャラクターたちの表現の豊かさには驚かされる。この辺りは、ディズニーのルーカスフィルムの買収の影響が大きいのではないか?と予想する。
  • また、全体のルックは旧三部作にかなり寄せており、TIEファイターの爆発効果なんかはまんま『新たなる希望』のソレで、思わず息を飲んでしまった。音楽も『クローン・ウォーズ』以上にジョン・ウィリアムズのオリジナル楽曲を基盤としているのもノレる。が、ライトセーバーまで旧三部作仕様に細くなってたり、ダース・ベイダーの目も『新たなる希望』仕様にこれみよがしに赤くなっていたり、ラルフ・マクォーリーの没コンセプトデザインを元にしたキャラやメカが出たり*1作り手の「ホラ、俺たちわかってますよ〜?」感は鬱陶しくて逆にノイズになっていた。でも、ランドやレイア姫の登場には喜んだり…。我ながら複雑なファン心理である。
  • あと、『クローン・ウォーズ』に満足した身としては、『反乱者たち』が実質『クローン・ウォーズ』の続編になっていることも嬉しい。オーダー66を生き延びたアソーカ・タノが何をしていたか、戦場から身を引いたレックスたちクローン兵はどう生活しているのか、はたまた『シスの復讐』のシャットダウンを逃れた分離主義勢力のバトルドロイド軍なんかも出てきたりして、『クローン・ウォーズ』が成し遂げていた「世界観の拡張」をここでも見せてくれた。
  • 「世界観の拡張」という点では、帝国圧政下における市民生活や経済、交通網、犯罪組織、ギルド、工場など、これまた「遠い昔、遥か彼方の銀河系」のミクロな部分を覗き見れるのも楽しい。
  • では、何が不満だったかというと、ズバり主人公のエズラ・ブリッジャーがあまりにもクソ生意気で向こう見ずでバカで、最後まで好きになることができなかったのは最大の欠点だった。
  • エズラのキャラ設定の作り手の意図は分かる。放送局も『クローン・ウォーズ』のカートゥン・ネットワークやNetflixを離れ、DisneyXDに変わったので、ターゲット視聴者層に合わせて共感できる主人公が必要だったのだろう。最初から主人公たちの敗北が分かっている『ローグ・ワン』のように暗い作風にするわけにもいかず、ジェダイが死に絶え帝国が銀河を支配する時代を強く逞しく明るく戦い抜く主人公として、エズラ・ブリッジャーは丁度ルーク・スカイウォーカーハン・ソロを足して2で割ったキャラクターになっている。外の世界に憧れ、ジェダイヤフォースに興味を持ち、反骨精神があり、しかしずる賢くて悪知恵が働き、機転を利かせてピンチを脱出する。つまり、非常にアメリカ的なティーネイジャー像エズラには求められた。
  • しかし、逆に言えばエズラは非常に幼稚なキャラクターであり、エズラは何かとあれば仲間と喧嘩をしてすぐに別行動をとったり、師匠のケイナン・ジャラスに歯向かったり、機転を利かせて命令無視をしたつもりが窮地に陥ったり無駄に音を立てたり見張りに集中していなくてスペクター反乱分子やフェニックス戦隊を何度も危険に晒した(の癖に弱い)。これが最初のシーズンだけならまだしも、最後の第4シーズンまで同じようなことを繰り返すので学習能力がないんかと呆れてしまう。*2
  • 誤解して欲しくないのは、僕は『レベルズ』が「子供向けだからダメだ」と言いたいわけではない。『ファントム・メナス』や『クローン・ウォーズ』も当初は「子供向け」として批判されたが、『ファントム・メナス』のアナキンだって生意気だったけれどもクワイ=ガンに逆らうような真似はしていないし、オビ=ワンに対して軽くを叩いていた『クローンの攻撃』『シスの復讐』でもジェダイ感知者としての圧倒的な実力が伴っていたし、そもそも無鉄砲な部分もダークサイドの片鱗でもあったのであまりノイズになることはなかった。
  • 『クローン・ウォーズ』のアソーカ・タノも当初はクソ生意気なキャラクターで僕も大嫌いだったけれども、一応パダワンだということもあり規律*3があったし、シリーズを追うごとに立派に成長し、それなりの活躍があったのでアナキンからもリスペクトを勝ち取る様も説得力があったり、最終的には許せたどころかシリーズでも大好きなキャラの一人になった。ルーカスは常々「『スター・ウォーズ』は子供向け」と主張していたが、「子供向け」なりに大人の鑑賞者も共感しやすく巧みにキャラクターを慎重に築いていた*4
  • また、これはデイヴ・フィローニの悪い癖だと思うのだが、宮崎駿作品からの影響があまりにも強すぎる*5動く家(AT-TE)とか、デカい鹿とか、デカくて低い声で喋る白い狼とか、ナウシカが乗ってるグライダーみたいなやつとか…。そもそもアソーカ・タノが『もののけ姫』のサンから影響受けていると公言していたり、今視聴中の『レジスタンス』も所々ジブリっぽいキャラクターが出ていたりする。もちろん、よく知られているように創始者のルーカス自身が古今東西の様々な映画や文化から影響を受けて『スター・ウォーズ』の世界観を作り上げたのだけれども、その引用元を隠そうともせず、逆にアピールしていくような態度は、世界一のファンダムを形成している『スター・ウォーズ』関連作のクリエイターの矜持としてどうなの?と思ってしまう。
  • とはいえ、流石にデイヴ・フィローニが監督した回*6は明らかに演出の力み具合が普段と違ったりして見応えはある。まあ、最初に書いたように燃えるところはとことん燃えるシリーズではあるので、少なくとも『スター・ウォーズ』ファンは『反乱者たち』を見ても損はないと思う。フォースと共にあらんことを!

 

*1:これはディズニー買収以降の『SW』全てに言えることなのだけれども、正当性を主張するためだけにラルフ・マクォーリーの没デザインを起用するのはやめて欲しい。というか、没デザインというものは、理由があって「没」になっているわけで、そこんところをよく考えるべきである。

*2:あと、スペクター反乱分子の一員であるドロイド「チョッパー」も、エズラと同じくらい毎回トラブルを引き起こすのでイライラした。R2は尊い

*3:正確に表現するならば、英語で言うdescipline。

*4:なお、『クローン・ウォーズ』シリーズは最新のS7に至るまで、ジョージ・ルーカスがクリエイターとして関わった最後の映像作品である。

*5:英語圏の記事によっては、キャスリーン・ケネディジブリ作品のファンなので、ルックの影響を受けていると述べたものあり。

*6:主に『クローン・ウォーズ』とクロスオーバーしていたり、フォースの解釈に迫ったり、クライマックスなどシリーズ中でも重要な回