『スター・ウォーズ』に負けないインド映画パワー

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が3日間で46億円スタートという、前代未聞の鬼記録を成し遂げました。

 

 『鬼滅の刃』は全国で403館という破格のスケールで公開され、TOHOシネマズ新宿では初日に全41回の上映など、これまた聞いたことがないような興行を実現していますが、まさにコロナ禍での映画不作だからこそできた荒技でしょう。

 

 今回の『鬼滅の刃』ブームで思い出したのは、僕がアメリカに住んでいた2015〜2019年、毎年冬になると映画館のスクリーンが全て『スター・ウォーズ』の新作で独占されていたことです。当時のツイートを引っ張り出してくると、具体的にはこんな頭のおかしい状況でした。

 

 このブログの読者の方ならお分かりの通り、僕はディズニー版『スター・ウォーズ』に対しては厳しいので、「『スター・ウォーズ』の新作が記録的興行収入!」なんてニュースを聞いても、他に選択肢がないくらいスクリーンをディズニーが独占しているんだから当たり前だろ、なんて冷めた目で見ていました。

 

 が、また思い出されるのが、全米が『フォースの覚醒』に熱狂していた2015年12月18日の週末、全米興行収入ランキング10位に『Bajirao Mastani』という新作インド映画がランクインしたんですね。つまり、アメリカ中のインド系がSWの新作を無視して『Bajirao Mastani』を観に行ったんです。*1残念ながら僕は観に行ってないですけど、巨悪 ディズニーマネーに負けないほとばしるマサラパワーに感動したのを覚えています。 

 

 

 もう一つ思い出されるのが、僕が『フォースの覚醒』を観に行った時で、2015年12月18日、僕は日本から来る友人たちとNYで旅行する予定でした。が、どうしても『スター・ウォーズ』が観たかった僕は前日のフライトを買って、貧乏学生だったので空港のロビーに泊まり*2、朝一にJFK空港の近郊にあるジャマイカという地域の映画館で『フォースの覚醒』のチケットを買いました。

 

 当時はまだアーカンソーに住んでいたカッペ学生だったので、初めてのNYにビビっていたばかりか、特にジャマイカは治安が悪いことで有名な地域だったので、異常なほど警戒心を働かせて劇場に向かったのを覚えています*3。駅の周りにホームレスや警察官が立っていて、それだけで怖かったのですが、映画館の前には行列ができていて、いよいよSWの新作を見るんだと、緊張が走りました。*4

 

 が、いざチケットを買って劇場に入ると、『フォースの覚醒』を観に来ていたのは僕を含めて5人だけで拍子抜けしました。(しかもそのうち1人は明らかに寝に来ていた老人だった)よくよく考えると、映画館の前に並んでいたのは南アジア系の人たちばっかりだったので、やっぱり『Bajirao Mastani』を観るために並んでいたのかもしれません。

 

 その後、アメリカで映画ファン生活を長く送るうちに知りましたが、実はアメリカの映画業界では話題作はプレビューナイト(前夜祭興行)として前日の夜、大抵木曜日*5には公開してしまうので、MCUやSWの熱狂的なファンは公開日の前の日には観てしまうんですね。なので、ジャマイカみたいな中心部から離れた劇場での金曜日朝の回に人が入っていないのはある意味当たり前でした。

 

 その後、『ローグ・ワン』以降のすべてのSWはプレビューナイトに観ることができ、その度に*6場内の異常な盛り上がりを見届けることはできました*7が、ファンにとっては10年ぶりの新作となった『フォースの覚醒』がどのように盛り上がったのか、せっかく当時アメリカにいたのにうかがい知ることができなかったんは残念です。

 

 まあ、話を戻すと、鬼滅の刃』に対してはSW程ネガティブな感情がないので、『TENET テネット』に引き続いてコロナ禍で観客が映画館に戻って来てよかったなぁ、と素直に思いました。どれくらいヒットするか、見ものです。

*1:正確には、9位にも公開2周目だった『勇者は再び巡り会う』もランクインしています。また、この話を方々でする時、僕の記憶では『バーフバリ』だったんですけど、改めて調べなおしたら『Bajirao Mastani』でした。謹んで訂正します。

 

*2:12月だったのにクソ寒かったです。晩飯にターミナル1の2階にあるクソまずい中華とアサヒビールを楽しみました。良い思い出です。

*3:昨年末、同じ映画館でアニメ版『アダムス・ファミリー』を観ました。夜に1人で観に行きましたし、全然ビビリすらしなかったので、我ながら成長したなぁ、と思いました。

*4:

 で、想像通りのこのがっかり具合でしたよ。

*5:めちゃくちゃ早い場合は水曜日にやったりします

*6:あ、うそ、『ハン・ソロ』はマジでお通夜みたいで、唯一モールが出たシーンだけあるファンが「YES!!」と叫んだのが木霊したのも味わい深かったです。なお、僕にとっては超激怒ポイントで、一緒に観に言った友達にめちゃくちゃ愚痴って困らせました。

*7:僕が盛り上がったとは言ってない。