旧20世紀フォックスが製作していた『X-MEN』シリーズ最終作である『ニュー・ミュータント』をAmazon Primeにて鑑賞。監督・脚本は『きっと、星のせいじゃない』のジョシュ・ブーン、『X-MEN』シリーズのまとめ役だったサイモン・キンバーグが製作。新米ミュータントたちをブルー・ハント、メイジー・ウィリアムズ、アーニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・ヒートン、ヘンリー・ザガらが演じる。
映画ファンにとって『ニュー・ミュータント』は呪われた作品として記憶されているだろう。本来は2018年にとっくに公開されているはずだったものの、スタジオの度重なる方針転換による追加撮影、ディズニーによるフォックス社買収のゴタゴタ、更には新型コロナウイルスによるパンデミックに見舞われて公開延期に延期を重ね、いつの間にか20世紀スタジオなどという聞き馴染みのない会社からひっそりと公開され、『X-MEN』ユニバースは20年の歴史にピリオドを打った。日本に至っては配信スルーという有様である。
こうしたプロダクション・ヘルに至った作品は、社内政治的事情から往々にして目も当てられない作品に仕上がっていることも多い。奇しくも同じサイモン・キンバーグ&20世紀フォックス体制で作られた『ファンタスティック・フォー』もクリエイティブとスタジオとの軋轢が生じ、ジョシュ・トランクの才能を持ってしても悲惨としか言いようがない珍作になってしまった。
ということで、公開延期のニュースを聞くたびに『ニュー・ミュータント』への期待値も下がっていった。が、アメコミにしては珍しくホラー色全開な予告編に魅せられて4年。『X-MEN』シリーズにも長く付き合ってきたし、せめてお別れはいっておこうと、香典の気持ちでデジタル版を購入*1して鑑賞して見たらば!これがどうして面白かったのだ!
『X-MEN』フランチャイズは、シリーズを通してマイノリティの葛藤を差別や偏見と戦うミュータントに託している。例えば、『X-MEN 2』でアイスマンがミュータントであることを両親にカムアウトするシーンで、同性愛者であるイアン・マッカラムが脚本段階で監修したのは各所で散々語られている通りだ。『ニュー・ミュータント』も『X-MEN』シリーズの監修に倣ってミュータントを描いているが、本作をより際立たせているのが、そこに自我同一性確立期の青少年/少女たちの精神的不安定さを加えたことだ。
ジョシュ・ブーンが本作を作るにあたって明らかに参照しているのはスティーブン・キングとジョン・ヒューズだ。あからさま過ぎる、という瑕疵はある*2ものの、思春期のミュータントたちが己のトラウマと立ち向かってアイデンティティを得るためには、納得の引用元ではある。ウェス・クレイブンやサム・ライミ、デヴィッド・リンチなどと仕事をしてきたべテラン撮影監督のピーター・デミングの影を際立たさせる画作りもゾクゾクくる。
大きく残念な点といえば、やはりこれが『X-MEN』シリーズ最後の作品となってしまったことだろう。アーニャ・テイラー=ジョイをはじめとする新メンバーはどれも魅力的で、マンネリ化していたシリーズに『デッドプール』と共に新風をもたらしてくれそうな予感がしていただけに非常にもったいない。クロスオーバー予定の名残であったエセックス・コーポレーションの登場も最早見ていて虚しいだけだ。本当にディズニーという大企業は、余計なことばかりしてくれる…と、改めて色々と愚痴りたくなる。ただ、その代わりシリーズが打ち切りになったことで、ジョシュ・ブーンの当初の理想通りの編集が世に出たことだけは喜ばしいことなのかもしれない。
さて、同じマーベル作品とは言っても MCUの初ドラマ『ワンダヴィジョン』がついに完結をしましたね!ちょうど3/6(土)21:00よりタイミングよくうちのオンライン飲み会も開催ですので、語り足りない人は是非参加していただければと思います。
今回募集するお便りは以下の予定です。
- 緊急事態宣言中何してた?
- 辛いの分かっているのに、つい見返してしまう映画
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ただ、まだ見てない人のネタバレ対策として、『ワンダヴィジョン』のトークは23:59から開始といたしますので、まだ長めの飲み会になってしまいそうなのはご了承ください。
ということで、お便りを送っていただける方は、hktaiyakiあっとgmail.com、TwitterのDM&リプ欄、YouTubeのコメント欄(NEW!)、そしてマシュマロまでお願いいたします。
あ、そうそう、この間のオンライン飲み会の『テネット』の部分も抜粋して編集したので、よかったら参考程度にお聞きください。だいたいいつもこんな感じでやってますんで!