NBAファンも映画ファンも『スペース・プレイヤーズ』にはもっと怒ったほうがいいよ!

 バスケの神様マイケル・ジョーダンとバッグズ・バニーが奇跡の共演を果たした『スペース・ジャム』の25年越しの続編となる『Space Jam A New Legacy』の予告編がついに公開されました。今回の主演はバスケの王様「キング」ことレブロン・ジェームズです。

 

 

 レブロンは齢36歳にして現役最強の呼び声が高く、まさにマイケル・ジョーダンの後継者に最も近い存在であります*1が、彼は度々映画やアニメにカメオ出演しては意外な演技力のうまさも披露してきました。NBAチャンピオンだけでなくて主演作まで手にするレブロンはまさに名実ともにスーパースターですね。


▲『エイミー!エイミー!エイミー!』でのレブロンビル・ヘイダーの掛け合い

 

 他にも注目ポイントは、今回の『Space Jam A New Legacy』は単なるルーニー・テューンズとの共演に定まらず、『ゲーム・オブ・スローンズ』『オズの魔法使』『アイアンジャイアント』『フリントストーンズ』『キングコング』などなど、ワーナー・ブラザーズのIPを駆使した『レディ・プレイヤー1』のような作品に仕上がっていることには驚かされました。『時計じかけのオレンジ』や『カサブランカ』まで盛り込んでいるようで、映画ファンは目が離せないのではないでしょうか。

 

 また、大衆作品のクロスオーバーのみならず、アンソニーデイビスやカイリー・アーヴィング、クレイ・トンプソン、デイミアン・リラード、クリス・ポール、ドレイモンド・グリーンなど、オールスター級NBA選手や、ダイアナ・トーラジ、ネカ・オグミーケらWNBA選手も夢の共演を果たしているそうなので、当然バスケファンも必見です。

 

 NBAファンと映画ファンである僕は、二つのファンダムが交錯するこの予告編に期待値をガンガンにあげて盛り上がっていたのですが、その気持ちに水を差すように日本版のツイートを見て大変ガッカリしました。

 

 レブロン・ジェームズのレの字も出てこない!!

 

 そもそもの『スペース・ジャム』がマイケル・ジョーダン×ルーニー・テューンズというカオスな組み合わせが大ヒットに繋がりました。続編はすぐに企画されたものの、当のジョーダンが出る気が無かったので、代わりにタイガー・ウッズトニー・ホークといった別ジャンルのスーパースターの元に企画が渡っては頓挫した経緯がある訳です。

 

 つまり、マイケル・ジョーダンタイガー・ウッズ級のスーパースター=レブロン・ジェームズがこの25年間で奇跡的に生まれてやっと『Space Jam A New Legacy』が成立できたのです。その作品の初宣伝ツイートにレブロン・ジェームズの名を省くのは、『名探偵ピカチュウ』の宣伝に「ピカチュウ」や「ポケモン」という単語を使わないくらい不自然なことだ、といえば分かりやすいでしょうか?*2いくら140文字制限があるとは言え、ワーナーの公式サイトにもYouTube予告編の概要欄にもしっかりレブロン・ジェームズの名前を書いているんだから、ちゃんと書けばいいのに。

 

 さらに[eスポーツバトル]ってなんだ、eスポーツバトルって。普通に「バスケットボール」でいいだろ!予告内でバスケしてんだから!

 

 この「eスポーツバトル」表記は公式ツイートだけでなく、多くの映画系メディアが記事内で書いています。僕も『ザ・ルーム』の配給・宣伝をやった身なので分かりますが、こういうのは大抵プレスリリースを各社に一斉送信し、各社はプレスを元にニュース記事を作るので、「eスポーツバトル」という用語は恐らくワーナーブラザーズ ジャパンがプレスに盛り込んだのでしょう。証拠に検索してみましたが、日本語圏以外で「e-sports」を使っている記事は全くヒットしませんでした。

 

 極め付けはタイトルで、僕はさっきから敢えて『Space Jam A New Legacy』と現代表記にしていましたが、実際の日本語タイトルは『スペース・プレイヤーズ』。なにそれ、超ダサッ!『スペース・ジャム2』でも『スペース・ジャム:ニュー・レガシー』でも別にいいじゃん!

 

 いや、正直全部意図は分かりますよ。どうせ「日本ではNBAは人気ないから…」みたいなしょうもない広告代理店的発想で戦略練ったんでしょうね。レブロンに触れるくらいならキング・コングとかアイアン・ジャイアントに触れておけば、日本でもヒットした『レディ・プレイヤー1』みたいなクロスオーバー作品だと思ってもらえますし。「バスケ」とか書いちゃうと興味ない人が多いだろうから「e-スポーツバトル」でより『レディプレ』感を強めて、タイトルまで『レディプレ』に寄せていったんでしょう。

 

 まあ、こうした戦略はゾンビ映画であることをひた隠しにして宣伝した『ワールド・ウォーZ』もあったし、見慣れたものですよ。しかし、八村塁や渡邊雄太の活躍があって連日TVのスポーツニュースでNBAが取り上げられる中で、自分のような新規NBAファンがどんどん増えているからこそ、この宣伝方針はあまりにも悲しい*3。『スペース・ジャム』が好きな映画ファンだって多いわけで、当時子供だった人たちが懐かしみを持って今度は自分たちの子供たちを連れて映画館に行くことも簡単に想像できるじゃないですか。

 

 原題が『A New Legacy(新しいレガシー)』って言ってんのに、邦題からして『スペース・ジャム』のレガシーを潰しに行ってるよ!最近、日本の映画宣伝も質が上がってきて、こういういら立ちを覚える機会が少なかった分、自分の趣味領域とガッツリ被っている作品が荒らされてしまったからこそ怒り心頭だよ、プンプン。

 

スペース・ジャム (字幕版)

スペース・ジャム (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

*1:ただ、この「ネクスト・ジョーダン」論争はNBAファンの間では未だに舌戦が繰り広げられる七面倒なテーマではあります

*2:酷い記事では、釣りタイトルとして「WBキャラオールスターズ×マイケル・ジョーダン」と併記していました。実際リンクを開くと「マイケル・ジョーダン"級"」と書いてありましたが、いずれにせよレブロンに対してあまりにも失礼。