コロナ禍以後初めて飛行機乗った

 また別用で1週間ほど今参加している現場を離れまして、飛行機で九州に来ました。考えてみたら、僕コロナになってから飛行機に乗っておらず久々のフライトでした。これもまた極端なのですが、コロナが始まる前までは仕事で毎週のように飛行機に乗っていたので、2年でここまで生活が変わるのは不思議な気分ですね。

 

 不思議といえば、今の現場では僕が前にいた会社で勤めていた経験のある人が二人もいました。本当に偶然なのでビックリしつつ、やっぱり映像製作業界というのは狭い世界だなぁと思ったんですけど、同じ会社に勤めていたことが分かるや否や「よく生き残れたねぇ」と言われたので笑いました。どんだけ悪名高い会社だったんだ…。

 

 

 

『NOPE/ノープ』の片鱗が見える?ジョーダン・ピールのスケッチコント

 『NOPE/ノープ』について書こうと思ったけど、映画ファン注目の作品なだけあってもう散々語り尽くされた感があるので、ジョーダン・ピールキーガン・マイケルと組んでた『キー&ピール』時代のコントの中から『NOPE』に関連がありそうなコントを紹介する。

Alien Imposters(なりすまし型宇宙人)』

 宇宙人に侵略された街で、キーガンとジョーダンが生き残った人類を探す。しかし、この宇宙人は変形型で、人間になりすますことができる。例えば、一番最初に遭遇する人間は二人に「生き残った人間たちでコミュニティを作ったんだ!俺たちの仲間に加わらないか?」と提案するが、彼は連合国の国旗を身につけたゴリゴリの右翼。そんな奴が黒人の二人を誘うはずがなく、明らかな宇宙人なので撃ち殺す。そんな調子で黒人へのステレオタイプを頼りに、人間に化けた宇宙人を片っ端から暴いていくブラックジョークが効いているコント。

 

 番組の中でも屈指の人気を誇るコントで、コントなのにプロダクションデザインにメチャクチャ金をかけていてビックリするが、このスペクタクルさは『NOPE』に通ずるものがある?UFO(宇宙人)物だし。

 

『Dad's Hollywood Secret(お父さんのハリウッドの秘密)』

 ジョセフ(キーガン=マイケル・キー)が亡くなった父オーティス(ジョーダン・ピール)の葬式を開くが、教師で人権活動家だった真面目なオーティスは若き日にハリウッドで役者をやっており、そのアクターズリールが見つかる。オーティスの人生を讃える為にそのフィルムを式場で再生するが、ひょうきんで間抜けな召使やジャングルの原住民など、典型的なステレオタイプで人種差別的な役ばかり引き受けていた事が発覚し、式場が騒然となる。

 

 『NOPE/ノープ』のテーマの一つにも「ハリウッドの歴史から消された黒人の地位を取り戻す」というのがあり、映画の中での黒人の役割をジョーダン・ピールは常に自覚的に描いている。

 

『Hoodie/フード』

 

 フードを着た黒人少年(ジョーダン)がただ住宅街を歩いているだけなのに、住民の白人たちからは警戒の目で見られ、仕舞いには警察まで出動するが、少年がフードを被ると白人の横顔が描かれており、それを見たて騙された警察官は安心してどこかに去っていく、というオチ。

 

 『NOPE』は「目を合わせる」と死と直面する場面があるが、これは正しくアメリカの黒人たちが現在進行形で体験している事で、警察官や白人と目を合わせるだけで酷い目に遭い、下手をすれば殺されてしまう悲劇が繰り返し起きている。このコントが発表されたのはもう9年も前だが、それでも変わらない状況が悲しい。

 

『Playing a Thug(悪党を演じて)』と『A Zombie Extra's First Day on Set(ゾンビエキストラの撮影初日)』

 

 どちらも『NOPE』にそこまで関わりがあるわけではないが、『NOPE』は映画撮影をモチーフにした作品であり、冒頭に撮影現場のシーンが登場する。これらのコントも撮影の舞台裏という設定のコントで、『Playing A Thug』はブルックリンのストリートで育った元ゴロツキのアントワン(ジョーダン)とイギリス人役者のナイジェル(キーガン)がギャングの対立を演じるけど、監督から上品なイギリス訛りの英語を話すナイジェルが誉められ、アントワンからはストリートのギャングに見えないと言われてしまう。『A Zombie Extra's First Day on Set』は題名通り撮影初日で緊張している新人ゾンビエキストラ(ジョーダン)に、先輩のゾンビエキストラ(キーガン)がアドバイスをするが、ハチャメチャな演技をする新人がなぜか監督に気に入られてしまう。どちらも社会メッセージ性は薄いが、ギャグとしては非常に面白い。

 

 『キー&ピール』は番組が終了してから7年も経つけど、未だに根強い人気があってYouTubeでも定期的に過去のコントがアップされているので、気になる方はチェックしてみてはいかがだろうか。一応英語字幕も設定で出せるので、英語が苦手な方でも翻訳しながら見れるので安心。

 

 しかし、それにしてもあのジョーダン・ピールがノーランと比べられるくらいの大監督になるとは思わなかったな…。スペクタクルな映画もいいけど、またキーガンと一緒にコメディ番組やってほしいなぁ。ただ、次はNetflixオリジナルでヘンリー・セリックの新作ストップモーションアニメ『ウェンデルとワイルド 』で再タッグを組んでいるので、今から楽しみだ。

 

二日酔いでした

昨日は珍しく早く終わったのですが、先輩方とお酒を飲みに行ったらハメを外し過ぎてしまい、久しぶりに吐くほど飲んでしまって最悪の気分で朝を迎えました。肌寒くなってきたので、熱燗を一本飲み干したのが全ての元凶だった…。それにしても外で飲んで酔いすぎるなんて体験、コロナ以後で初めてではないか?今日は更新頑張ります。

ハリウッド現場潜入記 vol.3 シーバーで耳が割れる…!の巻

 映画の製作現場は軍隊みたいなもので、様々な部署が同時進行でコミュニケーションを取りながら作業をしている。その中で欠かせないのが無線であり、それぞれの部署に割り当てられた周波数に合わせて各部署が連携をとっている。

 

 が、今の現場が特殊なのはバイリンガルであることで、僕が所属する演出部にはUSからのADと日本からのADがチームを混成している。その為、左耳には日本語で会話するためのシーバーを、右耳には英語で会話するためのシーバーをつけている。働き始めた当初は同時に錯綜する言語に脳が混乱を起こしていた。

 

 2ヶ月経ってようやく慣れてきたけれども、それでも慣れないのはUSチーム側の声量のバカデカさだ。おそらく、アメリカの現場で使用しているシーバーと日本の現場で使用されているシーバーのマイクの質が違うからかもしれないが、アメリカのクルーは恐ろしいくらいデカい声で無線で話す。毎回三半規管がやられて体がフラつくほどだ。じゃあ無線の音量を下げればいいじゃないか、と思うかもしれないが、そうすると今度は英語シーバーを使っている日本側のクルーの声が聞こえづらくなるのだ。

 

 DJみたいに話す人が変わるたびに音量を調節できればいいかもしれないが、もちろん忙しい中そんな器用なことはできないので諦めてバカデカい声量を耐える日々を送っていた。そんな折今日、いつものように三半規管をグラつかせながら一生懸命英語のシーバーで指示を聞いていると、指示を出している最中に話者が思いっきりクシャミをした。あまりの衝撃に鼓膜が破れるかと思ったほどで、誇張でもなく反射的に体がふっとんだ。直前まで英語シーバーをつけていない別の日本人クルーと話していたのだが、その人までくしゃみの音が聞こえたと言っていたほどドデカい音だった。

 

 まあ、大したオチもない話で恐縮だが、実は今も英語シーバーを聞いていた方の耳がずっと「キーン」と高鳴りをしているので、今回はトランシーバーについて書いてみることにした。こんなの続けてるといつか耳が聞こえなくなるで…!