国立入試が終わり、ひとまず真ん中の弟が受験戦争から解放された。弟は僕と違ってあんまり映画を観る方ではなく、もちろんタランティーノなんて監督も知らなかったが、一年分の鬱憤を解消してあげるために有楽町に連れて行き、一緒に『ジャンゴ/繋がれざる者』を初日に観た。自分で言ってしまうけど、はっきり言ってこの選択は大正解!ぶっちゃけ弟のことなんかどうでも良くなり、自分が一番スカッとしてしまったよ。
タランティーノという監督は『ジャッキー・ブラウン』以降は一貫して被害者の復讐を描いてきた。『キル・ビル』シリーズや『デス・プルーフ』では男から徹底して酷い目にあってきた女の復讐を、『イングロリアス・バスターズ』ではユダヤ人がナチ共をぶっ殺す。そして今回の『ジャンゴ』では白人の奴隷として圧迫され続けた黒人の恨みを晴らした。
舞台は南北戦争の2年前、1858年のテキサス。奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は元歯医者であるドイツ人賞金稼ぎのDr.シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)と出会う。シュルツにより自由の身となったジャンゴは賞金稼ぎの仕事を手伝うことになり、極悪人の白人を次々に葬る。その過程でジャンゴは離れ離れとなった愛妻を探し、ついに彼女の居場所を突き止める。しかし、そこは冷酷無比の農場主、ムッシュ・カルバン(レオナルド・ディカプリオ)が経営するキャンディ・ランドであった…というのが大雑把なあらすじ。
映画マニアのタランティーノはデビュー作の『レザボア・ドッグス』から西部劇へのオマージュを度々行ってきていて、また『ジャッキー・ブラウン』からも分かるとおり、彼は黒人文化を敬愛してきた。つまり「黒人のガンマンが主人公の西部劇」は彼の念願の企画と言え、これまでの作品以上に力を入れ楽しんで演出しているのがヒシヒシと伝わってくる。
綿花、白馬、雪山、屋敷と至る所で「白」いイメージが、ジャンゴがぶっ殺す白人の血で赤く染まる。黒人がいたぶられるシーンは相変わらずタランティーノ印のどぎつい暴力描写でエグいが、その分後半のジャンゴの血塗れの復讐劇にカタルシスをビンビンに感じる。クライマックスでジャンゴは白い馬にまたがるが、「立場の逆転」を表していると考えるのは深読みかな?(追記参照、ネタバレ注意)
タランティーノ映画ではまた実力派俳優の演技合戦が見もので、今回助演男優賞でオスカーに輝いたクリストフ・ヴァルツ(注1)は当然、ディカプリオの怪演も素晴らしかった。というか、ヴァルツは『イングロリアス・バスターズ』でもオスカー取ったんだから、アカデミー会員はディカプリオに投票すれば良かったのに…。この2人だけでなく、最早タランティーノ組常連のサミュエル・L・ジャクソンの演技力も賞賛もの。サミーにも誰か何か賞をあげて欲しい。タランティーノ映画のキャストって本当に皆楽しそうなんだよね。
とにかくタランティーノのストーリーテリングは観客を引きつけて離さないし、今回もあまりの面白さに終始ニヤニヤが止まらなかった。早くも次回作が楽しみだ!
しかしせっかくこれ以上なくスッキリしたんだから、弟は今年受かってると良いなぁ。
(注1)ちなみにヴァルツの役所が前作のランダ大佐と全く対象的なのが面白い。他言語に精通してるのは同じだけど。
(注2)ここら辺のネタはパンフレットに詳しい。全体的に資料として完成度が高いので、できれば購入するべき。あと町山さんの解説も相変わらずの素晴らしさ。
(追記)
@mmcl20100403 答え直します。あの馬はジェイミー・フォックスの愛馬で、最後にトリックを見せるのも、彼と馬の親密さを披露しているのです
— 町山智浩さん (@TomoMachi) 2013年3月2日
マジでただの深読みだった。
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