日本では5月30日に公開予定だったものの、直前に公開無期限延期になってしまったザ・ロック様の『カリフォルニア・ダウン』をアメリカの劇場で鑑賞。楽しみにしてた人の気持ちは分からなくもないし、僕も公開すべきだと思ってたが、実際観てみると公開延期も致し方ない部分もあるなぁとも思った。その理由は後半に述べます。ネタバレあり。
まあ、粗筋という粗筋もなく、カリフォルニアを通るサン・アンドレアス断層で史上最大規模の地震が起き、レスキュー隊員のドウェイン"ザ・ロック"ジョンソンが元嫁と娘を救うため大活躍するだけ。しかしそこが本作の最大の問題点で、ドウェイン・ジョンソンはレスキュー隊員なのに自分の家族のためにしか動かない。
というのも、カリフォルニアで大地震が起こる直前、お隣ネバダ州で規模の大きな前震が起きてドウェイン・ジョンソンは被災地にレスキューに行く任務にヘリで向かっていたが、カリフォルニアで大地震が発生すると元嫁から「助けて!」と連絡が入る。するとドウェイン・ジョンソンはあろうことかそのままヘリを旋回させてカリフォルニアへ元嫁を救いに帰ってしまう!
そりゃレスキュー隊員だって人間だもの、自分の家族が心配なのがわかる。でもドウェイン・ジョンソンに救護要請を出してたネバダ州の人たちはどうなるんだよ!しかも自分の代わりにバックアップを頼んだ様子もないし、大体ヘリだって私有物じゃなくてレスキュー隊のものだ。それ立派な公私混同だろ!
任務をほっぽり出して無事に元嫁を救いに出した後は次は娘から「パパ助けて!」と連絡が入り、今度は娘のために奔走するお父さん。一応途中で市民を助ける描写はあるがそれは行きがかりで偶々地震が起きた時に助けてあげたからで自分の意思じゃない。だから一見人を救っているようには見えるものの、実際は全然こいつ活躍してないんじゃ…という風に見えてしまったのが残念だった。これは思うにドウェイン・ジョンソンをレスキュー隊員に設定してしまったばかりに目立つ問題で、なんかテキトーに酒が原因で引退した警察官とかにでもしとけば離婚した元嫁とのドラマも盛り上がったりするのに…。
んで、肝心の公開延期問題なんだけれども、これはちょっと仕方がない。地震の描写は大雑把でいい意味で馬鹿馬鹿しく*1、神経を逆なでしてしまう人はいるかもしれないが個人的には楽しめた*2。ただ、津波の描写が以外とリアル、というより、311の時に被災者の方々がYouTubeにあげたビデオを明らかに参考にして津波の映像を作り出している。確実なソースがないのでなんとも言えないが、少なくとも僕にはそれらの映像を想起させてしまうほど迫力があった。
津波の映像をそれ自体はリアルなものの、先に述べたように全体的にパニック映画としては登場人物の行動も含めてかなり雑*3で、なんならウケを狙いに行ってるジョークも複数ある。その映像のリアルさと娯楽映画としての大味さのギャップが観る人によっては問題で、多分日本のワーナーの偉い人もその点を懸念して公開延期にしたんじゃないかと思ってる。
2年前に公開されたスマトラ島沖地震を扱った『インポッシブル』も津波の描写が凄まじかった*4が、あれはそもそも実話ベースで内容も至って「真面目」で、また終わり方もあたかも311を体験した日本人へ向けられたメッセージかのように僅かな希望を託されたエンディングだった。僕は試写会で『インポッシブル』を観たが、確かその時配給の担当者の方が登壇されて「社内でも公開すべきか否かで割れたものの、いまこそ多くの人に見てもらうべき映画だと思い公開を決めた」という旨のことをおっしゃっていた。あくまでも映画を公開する、しないはその映画会社の判断次第なので、特に地震や津波を扱った映画はやっぱり色々と難しいところはあると思う。
ただし、個人的にはなんでもかんでも不謹慎だと言って自主規制してしまう流れには閉塞感を感じる。まだ被災地の復興も終わってないし、配給会社の苦労も理解できるけど、少なくとも観客に観る・観ないの選択肢が選べるようにはなるべきだと思う。あとどれくらいかかるかは分からないが…。
色々書いたけど、まあでも『カリフォルニア・ダウン』はそんなに面白い映画ではなかったな。
映画『カリフォルニア・ダウン』ティーザー予告編 - YouTube
San Andreas: Original Motion Picture Soundtrack
- アーティスト: Andrew Lockington
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- 発売日: 2015/05/12
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