ブームもだいぶ去った後で今更なんですけども、Netflixで『魔法少女まどか☆マギカ』のTVシリーズ全話と劇場版『前編 始まりの物語』+『後編 永遠の物語』を観ました。いやー、面白かったっす。僕はアニメには明るくないので今回の記事は感想というより雑感を。放映からだいぶ時間も経ってるのでネタバレありまくりです。
- 僕はアニメはあんまり観ない人間で、というのも怠け者なもんで1話25分のものを1シーズン十何話観続けるのはちょっと面倒くさく、アニメに限った話じゃなくTVドラマなんかも観るのが辛い。また、典型的なステレオタイプなんだけども、所謂「萌え」的な絵柄が苦手で、いくら評判が高いアニメ作品だろうとどうしてもあのキラキラした大きな目や肌の露出の多い女の子とか出てくると倦厭してしまうってのがあった。
- あとは唯一見たことのあるアニメ作品の『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズのドヤ感満載の難解さ*1なんかもちょっと鼻に付く部分があり、特に「現代の『エヴァ』」と評されることの多い『まどマギ』に至ってはどれだけ周囲に薦められようととなおさら手が出しにくいなぁ、と思っていた。
- しかし、留学している大学がある町がクソほどに退屈で本当にやることがなく、契約してみたNetflixの豊富にある日本のアニメチャンネルの中に『まどマギ』を見つけたもんで、いい機会だと暇つぶしがてらに手を出してみたらこれがなかなかどうして面白かったのである。
- 最初の2話はそれこそ萌えアニメ色全開で「か、勘弁してくれ…」とパソコンを閉じそうになったものの、所謂「衝撃の第3話」からグングンと面白さを増していく。何よりも気になっていたのはタイトルに反して主人公の鹿目まどかが一向に魔法少女に転身する様子がないことで、業を煮やした僕はこんなツイートを残している。
Netflixで最近『魔法少女まどか☆マギカ』を観始めましたが、5話経ってもまどかが魔法少女にならないんですね…!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) June 23, 2015 - しかし実はこの反応こそまんまと番組スタッフの思惑通りにハマっていて、なんと『魔法少女まどか☆マギカ』はまどかが魔法少女になる作品ではなく、タイムループ能力を持つ暁美ほむらがまどかを魔法少女にさせないための戦いを描いたアニメだということが次第に分かっていく。なるほど、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』と同系統の作品だったのか!
- キュゥべえがやたらと「契約」という言葉を多用するのが印象に残った。というのも、キリスト教圏や西洋社会においては「契約」という考え方が重視されていることがハリウッド映画なんかを見ていると気づくことが多いからだ。
- 例えば皆大好き『ダークナイト』で、ハービー・デントを乗せた護送車がジョーカーに襲撃されるシーン。重要参考人の護送という単純な任務だったはずが、マシンガンやらバズーカでやりたい放題の攻撃を受ける警護官が「こんなの聞いてないよ!」と叫ぶのだが、英語のセリフだと「I didn't sign up for this!」と言っている。つまりこの仕事の契約書にはここまでやるとは書いてなかったじゃないか!ってニュアンスで、「I didn't sign up for this」自体が「そんなの聞いてない」という意味の慣用句になっている。
- 風刺アニメ『サウスパーク』でもアップルの同意書を読まないでチェックしちゃったカイルが「ムカデ人間iPad(HumancentiPad)」にされてしまう、という傑作エピソードがあったが、とにかく西洋社会においては「契約」は何よりも遵守されるべき行為なんだろう。中世ヨーロッパの封建制度も家臣と君主の双務契約で成り立っていた。とはいいつつも、キュゥべえの契約は詐欺とほぼ一緒なんだけれどもね。
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話は変わるが『まどマギ』はとにかく男が全然役に立ってない、というのも目立っていた。一応主要な男性キャラクターはまどかのパパと弟のタツヤ、さやかが思いを寄せる恭介君が出てくる。しかしまどかがほむらを助けに行く際、ママとの別れ際に「ママはパパとタツヤのそばにいて二人を安心させてあげて」と告げていることからも分かる通り鹿目家の大黒柱はまどかのママであり、実際高収入のキャリアウーマンであるママに対してまどかのパパは専業主夫*2である。
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更に恭介君に至っては登場時点で事故のために入院中で、天才バイオリニスト少年だった恭介君の演奏家としての将来は絶望的であり、さやかの献身的な介抱を受けていた。ところがどっこい、さやかが魔法少女になるための願いで体を動かせるようになるや否や、さやかの想いに気づかない鈍感な恭介君はさやかの友達の仁美とくっついてしまう!さやかが魔女になるきっかけを与えたのはクズホストと恭介君と言って差し違えない。お前鈍感にもほどがあるだろ!
- と、このように言葉は悪いが男は無能として描かれる一方で、女性は芯のある強いヒロインとして描かれる。*3これは近年のディズニー作品におけるジェンダー像と似通ったものがあって興味深い。女の子同士でキャッキャ(?)してるのも『アナ雪』っぽい。
- どうでもいいが、今ジェンダー論の話をすると『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が観たくなってきますね。V8!V8!
- 東映のスーパー戦隊シリーズで言うならば6人目の戦士的な「敵なのか味方なのかわからない」魔法少女である佐倉杏子はいつもお菓子やジャンクフードを食べており、考えてみれば初登場シーンからして何かを食べていた。後々さやかがりんごを投げ捨てた時「食い物を粗末にするんじゃねえ、殺すぞ!」とものすごい剣幕でさやかの胸ぐらを掴んでいたが、これラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』でお菓子研究家の福田理香が唱えていた「フード理論」に言わせれば「善人は食べ物を粗末にしない」の法則に当てはまるから、最初から悪人の訳がなかったよね。
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- さて、僕は「シリーズは全部見ないと気が済まない病」なので、『新編 叛逆の物語』を観る前にTV版の総集編である『前編 はじまりの物語』と『後編 永遠の物語』もNetflixで観てみた。まあ、一部修正はあるもののTV版からの大きな変更はなく、当時追ってたらわざわざ劇場まで行く価値があったかは微妙なラインである。ただ、改めて物語を知った上で最初から観てみると巧妙に張り巡らされた伏線に驚かされるし、何よりも「もう一度作品を観る」という行為自体が円環構造をテーマにしたこの作品にぴったりだ。大体同じ総集編でも『新世紀エヴァンゲリオン シト新生』の酷さに比べたら遥かに丁寧でずっとマシよ!
- それにしても暁美ほむらのまどかへの気持ちを知ってから最初から観ると、「あ、こいつ今わざとクール気取ってんな」とか思えてきてちょっとほむほむしますね。
- ループするたびにまどかを救い出すことに失敗する暁美ほむらでありますが、シュワルツェネッガーの『ターミネーター』シリーズが延々と続くということはその度にスカイネットの暴走を食い止めることに失敗しているということであり、「T-800は暁美ほむらなのでは…?」と思うようになりました。*4
どれだけタイムトリップしようと『ターミネーター』シリーズが続くってことはその度にスカイネットの阻止に失敗しているということであり、つまりT-800はほむらちゃん…? pic.twitter.com/nne34hFVlJ
— Taiyaki (@HKtaiyaki) July 11, 2015
早く『新編』が観たいです。
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