アメリカの劇場で『ロッキー・ホラー・ショー』40周年ハロウィン上映に行ってきた/『ロッキー・ホラー・ショー』★★★

 カルト映画リストがあれば必ずと言っていいほど名前が載る『ロッキー・ホラー・ショー』。初公開時は大コケだったもののその怪奇で変態的な内容にリピーターが続出し、公開翌年の再上映からコスプレしたファンが集まり、いつしかハロウィンの映画館でツッコミをいれたり歌って踊って小道具を投げて見る形が定着した。今年は更に『ロッキー・ホラー・ショー』40周年イヤーということで 、せっかく現地アメリカにいるわけだし隣町の映画館の特別上映に参加してきた。もちろんコスプレしてだ!

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 正直に言ってしまうと、『ロッキー・ホラー・ショー』という映画にそこまで思い入れはなかった。初めて見たのは大学に入ってから家のテレビでDVDで観た時で、作品を代表する「タイムワープ」などの陽気なミュージカルナンバーや個性がぶっ飛んだキャラクターたちは楽しいものの、脚本的には破綻していて強引な展開も多く、何故伝説的カルト映画として名を馳せ、人々が夢中になるのかはいまいち分からなかった。映画館に着いた時も外まで続く長蛇の列が出来ていてそのあまりの人気ぶりに驚いた。
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 しかし、今回の特別上映に参加してようやく『ロッキー・ホラー・ショー』の魅力が分かった。ロッキー・ホラー・ショー』は観客が映画に参加して初めて真価を発揮する映画だったのだ。暗闇の中で浮かび上がった唇が「SFダブルフィーチャー」を歌うオープニングクレジットでスーザン・サランドンやバリー・ボストウィックの名前が出るたびに観客席から「Slut(ヤリマン)‼︎」「Asshole(間抜け)‼︎」などと声が上がり、以後劇中で彼らの名前が出るたびに叫び声は続くし、セリフに対するツッコミや掛け声も止まらない。
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 映画に合わせて、結婚式のシーンでは観客は米を投げるし、雨のシーンでは水鉄砲を発射したり新聞を被ってそれを防いだりと大忙し。笑っちゃったのはフルター博士が「乾杯(Toast)!」と言うシーンで、皆持参したトーストを投げていたこと。ダジャレかよ!名曲「タイムワープ」が流れると映像に合わせて踊るのはもちろんのこと、ミュージカルシーンになるとコスプレしたファンがスクリーンの前に立って劇を再現するシャドーアクティングも楽しい…再現度はちょっと残念だったけど。f:id:HKtaiyaki:20151110023151j:image
 
 そもそも、「観客」という言葉を『ロッキー・ホラー・ショー』に使うのは間違っているのかもしれない。何故なら『ロッキー・ホラー・ショー』の公式ファンサイトは本作を観ることを「Participation(参加)」と呼んでいるからだ。当然、『ロッキー・ホラー・ショー・ショー』が作られた当時はそんな意図はまるで無かっただろうし、それ故に当時は当たらなかったのだろう。しかし、不思議と実際に参加してみると、初めからファンからのツッコミや掛け声を受けるのを期待して作られているようにしか思えない。ファンが足繁く集ううちに最適な鑑賞形態、つまり「参加」という形を発見したことで、『ロッキー・ホラー・ショー』の魅力が最大限に引き出されて40年も語り継がれるカルト映画の傑作となったのだ。先日の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』30周年上映*1の時も思ったが、長年愛されてる作品はファンに囲まれて観るだけで幸せな気分になれる。

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 ちなみに同公式ファンサイトに書いてあるが、ロッキー・ホラー・ショー』を劇場で参加したことがない人はVirgin(処女)と呼ばれ、もちろんDVDやテレビで観るのはカウントしない。実際僕が行った劇場でもヴァージンたちは呼び出され、スタッフに額に大きくVの文字を書かれていた。  僕の「初体験」も大変気持ち良かったし、ようやく作品の魅力を存分に理解できた今、早くも来年のショーに参加するのが待ち遠しい!