今日の出来事なんですけれどもね。
本日日用品を買いにウォルマートに行ってきた。洗剤コーナーでブラブラしてたら、「お前中国人か?」と話しかけられた。振り返ってみると僅かに白髪が残った白人の爺さんで、左の鼻の穴から鼻クソが垂れてるのが見えるのが気になった。
「いえ、日本人ですけど…」「ほう、日本人か、やっぱりな」
では何故最初からそう聞かないのだろうか。
「日本はすごいな、ものづくり技術が発展しててな」「そうですかね、ありがとうございます」「30年代には戦艦を何艦も作ってたんだぞ」
てっきり一般的な車とか電気製品の話をするのかと思ったら、斜め上の話であった。
「ああ、そうなんですね」「そして30年代の日本はすごかったんだぞ?この先は聞きたくないかもしれんが」「はあ…」「日本は30年代に中国を侵略したんだぞ?」
あ、やべえ、めんどくさいやつだ。僕は日本にいた時から街中でめんどくさい人に話しかけられやすい性質だった。
「はあ…」「当時の日本の勢いはすごくてな、アジア中を…」
大日本帝國のディテールに入った辺りからこの場からどう逃れようかばかり考えていて、老人の話は頭に入っていなかった。しかし鼻くそから目を離すことができなかったので、あたかも一生懸命話を聞いてるように思われたのだろう。どんどん話が長くなっていく。そしてふと老人が聞いてきた。
「日本軍はヒマラヤを越えてネパールに入ってきてな…お前ネパールの首都がどこか知ってるか?」「え、えっと…カトマンズですか?」
高校時代に受験で選んでいた地理の知識を脳内の奥底から引っ張り出した。すると老人は目をまん丸と見開いた。
「お前頭いいな!!」「はあ、ありがとうございます…」「今までわしのこの質問に答えられたやつはいなかった!お前は頭がいい!」
そう言うと老人は僕から離れていった。最後に『ミート・ザ・ペアレンツ』のロバート・デ・ニーロのように僕を指さして、
「お前頭いいな!」
とまるで捨て台詞のように吐いて洗剤コーナーから離れていった。カトマンズがめんどくさいじじいから救ってくれたのである。
しかし、もし僕が中国人だった場合、一体どういう話を僕にしてカトマンズまで繋げていくのか正直ちょっと見たかった気もする。