マーベル・シネマティック・ユニバース最新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』をだいぶ前に鑑賞。監督は前作『ウィンター・ソルジャー』に引き続きアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟。お馴染みのクリス・エヴァンス、ロバート・ダウニーJR.、スカーレット・ヨハンソン、セバスチャン・スタン、アンソニー・マッキー、ドン・チードル、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、エリザベス・オルセン、ポール・ベタニーに加え、チャドウィック・ボーズマン、トム・ホランドが新たに出演する豪華なオールキャスト。
※公開からだいぶ日にちが経ってるので、思ったことをざっくりネタバレ込みで書いていきます。『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』のネタバレも含みます。
- 前作『ウィンター・ソルジャー』は絶賛ばかりだった世評と比べてそこまで乗り込めなかった。というのも、キャップたちは自分たちのことに精一杯で(というかバッキーしか眼中になさすぎて)、周りの市民のことをあまり気にかけておらず、そこら辺にヒーロー映画としてどうなのよ、と白けてしまったのだ。敵は国家レベルの強大さだったけど、ミクロな視点が欠けていた。
- ところが今回は、そもそもヒーロー活動によりもたらされる被害そのものが描かれていて、前作が孕んでいた問題に対する巧いアンサーになっていた。『ガメラ3 邪神覚醒』みたいな。というか、これ思っきし『マン・オブ・スティール』から『バットマンVSスーパーマン』*1と同じ流れである。
- 公開時期、その内容から『シビル・ウォー』と『バットマンVSスーパーマン』は比べられがちだが、実はその構造もほとんど同じである。
①ヒーロー活動に対する抗議運動。
②新規キャラクターの導入
③議会で爆破。
④陰謀によりヒーロー同士が対決。
そして⑤親の死というトラウマ。 - じゃあ内容がほぼ同じなのにどうして『シビル・ウォー』がうまくいって『バットマンVSスーパーマン』がトホホな出来になってしまったのかというと、それはもうアニメ用語で例えるならシリーズ構成力の差である。ディズニーマーベルは『シビル・ウォー』に向けて丹念に12作積み上げたのに対し、ワーナーDCはたった2作で同じことをやろうというのだから土台無理な話だ。
- また、『シビル・ウォー』のシナリオはマーベルがこれまでに培ってきたノウハウの集大成とも言える。本作は『アベンジャーズ』の2.5と『アイアンマン』の4と『ブラックパンサー』や『スパイダーマン』のエピソード0を担いつつ、かつそのベースとなっている『キャプテン・アメリカ』パート3を成立させる、というとんでもない交通整理力を見せつけているのだ。
- 余談だが、ザック・スナイダーが死ぬほど嫌いな友達が『BVS』をボロクソにDisってて、その中でも「まだ2作目なのにスーパーマンが死んだって何も感情移入できねーわ!」というツッコミには膝を打った。
- そんなこんなで『シビル・ウォー』は冒頭のウガンダから楽しませてもらった。特に今回の目玉であるヒーロー陣営同士が衝突する空港でのシークエンスの多幸感は異常である。永遠に観ていたいと思った。今回悪役という悪役がいないのもVS物としては正しいのかもしれない。
- …のだが。正しいのかもしれない、と煮え切らない感じで書いたのは、正直に言ってしまえば僕のカタルシスは空港のシーンで来てしまったからだ。クライマックスがアイアンマンVSキャップ&ウィンターソルジャーと人数が少なくなってしまった分アクションを激しく見せ、そのアクションもエモーショナルに構成されていて見事…なのだが、僕が観たかった『シビル・ウォー』は空港のシーンで終わってしまっていたのである。
- 今回陰謀を仕掛けたジモも悲劇的な背景を背負っている…のだが、これも正直言うとちょっと拍子抜けしてしまったというか、スケールに見合ってないというか。だって、これだけの大掛かりなことをたった一人でやったの?準備とか大変じゃない?どうやって施設に忍び込んだの?そのままウィンターソルジャー達をアベンジャーズにぶつけた方が効率いいんじゃない?とか余計なことばかり考えてしまった。
- ただ、政治的内紛だけでヒーロー達が戦う原作に比べてトニーの親の死の真相を絡めたは良い脚色だったと思う。
- とまあ、確かに『シビル・ウォー』は大変素晴らしい出来で『ウィンターソルジャー』よりはずっと好きな作品だが、ちょっとこちらの期待値を高めすぎてしまったために変なところで突っかかってしまう作品となってしまった。余計な陰謀なしにひたすら両陣営が拳と拳で殴り合う映画だったら年間ベスト級に好きになったかもしれない。
- でもここのところインフレ気味のMCU作品にしてはとてもバランスが良い作品であることは間違いない。『BVS』なんぞとは比べるまでもない。
- ちなみに予告編の段階で「こりゃねーわ!」とブーたれていたスパイディの新コスチューム(特に目の部分)、見てみたら思った以上にハマっていて良かった。というか、トム・ホランド君が新ピーター・パーカーとして素晴らしかった*2。これは『Homecoming』も期待ですね、メイ叔母さんに。
アート・オブ・シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(MARVEL)
- 作者: マーベルコミックス
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2016/07/30
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: マーク・ミラー,スティーブ・マクニーブン,石川裕人,御代しおり
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2016/04/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る