先週マジックを題材としたケイパー映画『グランド・イリュージョン』を2作連続で観たのでまとめて。
※1作目のネタバレにご注意ください。
『グランド・イリュージョン』の監督は『インクレディブル・ハルク』『トランスポーター』シリーズのルイ・レテイエ。原案・脚本は ボアズ・イェーキン、エドワード・リコート。「フォー・ホースメン」の4人組をジェシー・アイゼンバーグ、ウッディ・ハレルソン、アイラ・フィッシャー、デイヴ・フランコが、彼らを追うFBIディラン・ローズをマーク・ラファロが演じ、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンら大御所俳優が脇を固める。
公開当時、知人やTwitter界隈で評判が高かったことを覚えていたので、それなりに期待してみた。率直な感想は、確かに面白いけど、諸手を挙げては褒められない、という感じだ。
事実、鑑賞中は全く退屈しない。画作りが同じケイパー物である『オーシャンズ11』のように洒落ていて長尺だが編集テンポも良く、CGを駆使したマジック*1はケレン味があって観てるだけで楽しい。当たり前のことだが、フォー・ホースメンが披露するマジックは一見不可能に思えるものの作品内でキチンとタネが明かされるのが地味に嬉しくて、それをモーガン・フリーマンが演じる「タネ明かし屋」を導入することでダレることなく説明しているのもスマートだ。
ただ、どうしてもオチだけが引っかかってしまう。確かに驚かされはしたが、言うなれば銭形警部がルパンの一味でした、といういくらなんでも都合が良すぎるオチで、じゃああのシーンで驚いていたり、調べ物したり、怒ったり、苦戦したりしていたのも全部演技のうちなの?と首をかしげてしまう。もっと楽な方法はいくらでもあるよ!
これ、ぶっちゃけるとあの大駄作『ツーリスト』と同じオチなんだけど、でも本作にアンチが少ないのはやはり見せ方が上手いから結局は楽しい映画に落ち着いてるからかもしれない。
2作目『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』の監督は『G.I.ジョー バック2リベンジ』のジョン・M・チュウ、原案・脚本はエド・ソロモン。フォー・ホースメンの新メンバーとして『クロバーフィールド HAKAISHA』『The Interview』のリジー・キャプランが、サポート役に『スタートレック』のジェイ・チョウも加わり新たな敵役にあのダニエル・ラドクリフ*2が登場。
ド派手なショーで不正に搾取された金を奪い、世間から喝采を浴びるイリュージョニスト集団「フォー・ホースメン」。とあるハイテク企業の不正を暴露するため、フォー・ホースメンは新たなショーを仕掛けるが、何者かの策略により失敗に終わってしまう。策略の裏には、天才エンジニアのウォルター・メイブリーの存在があり、フォー・ホースメンは巨大な陰謀に巻き込まれていく。(eiga.comより引用)
1作目を観た僅か15分後に劇場で2作目を見る*3という過密スケジュールで鑑賞したのだが、1作目の「いや、面白いのは面白いんだけど…」という歯に物が挟まったような感覚を更に押し広げたのがこの2作目の『見破られたトリック』である。
洒落ていてテンポが良い、といういい部分は引き継いでいて、改善点としては前作よりも更にヒューモラスになり笑いどころも多い。監督がジョン・M・チョウになったことで、ケレン味に更に磨きががかかっており予告編にもあったカード捌きのシークエンスは痛快である。
ただし、そのケレン味は磨きがかかりすぎていて暴走もしており、むしろ大味と言ってもいい。流石にねーよ!という野暮ったいツッコミも思わずしたくなるトリックばかりで、特にメンタリズムはもはやなんでもありの領域に達してしまって看過できない。前作ではマジックそのものだけでなく、そのタネ明かしも魅力の一つだったが、[マジックを披露した本人たち自ら]がタネを明かすのも工夫がない*4。この辺の大雑把さがジョン・M・チョウらしいっちゃらしい。
そして続編としての一番の問題は、クライマックスで何かが起きるのは分かるので全くハラハラしないことだ。「何が」起こるかは予想もつかないが、「何か」が起きて形成逆転するのは予想できる。いや、言ってしまえばヒーローとアンチヒーローの立場がクライマックスで逆転するのは全ての映画で起きることだが、「マジック」を扱ったこのシリーズではその逆転性が嫌でも強調されてしまうのだ。
つまり、どんなに危機的状況に陥っても、「どうせなにかあっと驚かせる仕掛けがあるんでしょ」と必要以上に構えて見てしまう。果たしてドンデン返しが来るとわかっていた場合、それをドンデン返しと呼べるのだろうか?それはまるで「この手品には仕掛けがありますよ」と宣言しているようなものではないか。
殊に2作目、ということでサプライズはすっかりなくなってしまった。しかしフォローするわけではないが、娯楽作としては十分楽しかったのも事実だ。ブーブー言いながら楽しんじゃう、これもまたこのシリーズの不思議な部分である。
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