皆死ね!/『スカーフェイス』★★★

 散々語り尽くされた作品で自分なんかが今更何を書いたところでも意味がないだろうが、それでも筆を起こさずにはいられないくらいに興奮した。*1

 

 最近『ゴッドファーザー Part II』と『III』も初めて見たのだが、ドンと腰掛けて落ち着いて座っているマイケル・コルレオーネと違い、トニー・モンタナは初登場時から殺気立っている。『ゴッドファーザー PartII』でダイアン・キートンと踊るアル・パチーノを見て「あれ、アル・パチーノって意外と背が低い?」なんて思ったりもしたが、本作ではその体格の小柄さが余計にトニー・モンタナの「俺以外皆死ね!」と言わんばかりのギラギラとした出世欲を際立たさている。

 

 こうして比べてみると、同じマフィア物でも『ゴッドファーザー』は上品な映画だ。『スカーフェイス』はエルビラが怒ったようにトニー・モンタナはFuckという言葉を使わずには喋れず、血飛沫も生々しく飛ぶ。しかしだからこそ『スカーフェイス』は庶民的で親しみやすさすら覚える。キューバ移民のトニー・モンタナには血統も後ろ盾もコネも何もない。何もないからこそ迷いがない。何もないからこそナメられたくない。まるで『仁義なき戦い 広島死闘編』大友勝利だ。「和製ゴッドファーザー」と例えられる『仁義なき戦い』だが、『スカーフェイス』の方がずっと深作欣二イズムを感じる。

 

 『ファイト・クラブ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、『セッション』を観た時に湧き上がった「やったるぞ、俺もやったるぞ!」という気持ちが『スカーフェイス』からも得られる。『スカーフェイス』にはそんな暴力的な快感に満ちている。

スカーフェイス (字幕版)
 

 

*1:今の今まで手が出せなかったのは長尺の映画が苦手だからです…。