赤ちゃんはどこから来るの?/『コウノトリ大作戦』★★★

 『LEGO®ムービー』から端を発したワーナー・アニメーション・グループ(WAG)第二弾『コウノトリ大作戦』を鑑賞。監督と脚本は『マペッツ』『ネイバーズ』のニコラス・ストーラー、共同監督にピクサー出身のアニメーター ダグ・スウィートランド、製作総指揮に『LEGO®ムービー』や『21ジャンプストリート』のフィル・ロード&クリス・ミラー。声の出演をロンリー・アイランドのアンディー・サムバーグ、ケイティ・クラウン、ケルシー・グラマー、ジェニファー・アニストンダニー・トレホらが務める。

f:id:HKtaiyaki:20161002150418p:plain

  かつて全ての赤ん坊はコウノトリが運営している配送会社コーナーストーンが運搬していた…が、18年前に不祥事により赤ん坊配達事業を閉じてしまった。現在ではただの配送会社となったコーナーストーンで一番の業績を誇る配達員ジュニア(アンディ・サムバーグ)はある日CEOのハンター(ケルシー・グラマー)から昇進の話を持ちかけられる。舞い上がるジュニアであったが、ハンターは昇進の条件として18年前の不祥事以来孤児としてコーナーストーンに住み着き働いている問題児チューリップ(ケイティ・クラウン)をクビにするように言い渡される。

 

 しかし言いつけ通りチューリップをクビを宣告しようとしたジュニアは、チューリップのひたむきさに戸惑ってしまい、代わりに今ではすっかり閑古鳥が泣いている手紙部署への異動(本当は左遷)を言い渡す。やる仕事がない部署でやる気を燃やすチューリップを尻目に厄介者払いができたことに胸をなでおろすジュニアだったが、とある家族から手紙部署へ「赤ちゃん配達」を依頼する手紙が届いてしまう…。

f:id:HKtaiyaki:20161002154559p:plain

 

 大傑作『LEGO®ムービー』*1WAG×大好きなコメディ監督ニコラス・ストーラーがタッグを組んだ作品ということで密かに期待していたが、思っていた以上に素晴らしい作品に仕上がっていた。本作と『ネイバーズ』*2『ネイバーズ2』*3ニコラス・ストーラーの「子育て三部作」を形成している。

 

 本作にコウノトリ側の話と人間側の話が同時進行で語られている。コウノトリ側の主人公は赤ん坊を配達することになったジュニアとチューリップで、人間側の主人公は一人っ子特有の寂しさを解消するためにコーナーストーンに兄弟を依頼した男の子ネイトとその両親である。ジュニアとチューリップは冒険の過程で擬似夫婦を形成し、赤ん坊を育むことの苦労とその対価が描かれる。一方では忙しさにかまけてネイトの世話が疎かになってしまった夫婦が、大事な一人息子との絆を再生する過程や新しい家族を迎えることへの喜びも描かれる。いわばニコラス・ストーラーが『ネイバーズ』シリーズでやってきたことをテンポよく交互に描いたのがこの『コウノトリ大作戦』である。

 

 特筆すべきなのはそのギャグの多さだ。マシンガンのように次から次へとギャグが放たれて一秒たりとも休ませてくれない。本作は子供向けアニメであるにもかかわらず、例えば「赤ちゃんはどこから来るの?」なんて無垢な子供の問いに対して「アハハハハ」とただ気まずく笑ってはぐらかすような、大人にしか分からない子育てギャグが盛りだくさんだ。もちろん、子供にはキチンと映像面のインパクトとノリで笑わせる*4。これはWAGが指標にしているピクサーの作劇法を真似たのだろうが、内包する温かい優しさや愛のあるメッセージを照れ隠しかのようにギャグでこれでもかと塗りたくるスタイルは良い意味でシンミリとせず*5、この辺のセンスは流石『LEGO®ムービー』を作ったスタジオだと感心する。

 

 後から考えるとコウノトリが赤ん坊を運ばない間はどうやって人間は赤ちゃんを作っていたのか、などの細かい脚本上の穴は気になってくるが、とにかくギャグに笑い泣き、親から子への愛にも泣いてしまう、鑑賞時の満足度は極めて高い作品であった故に★3つ。オススメ!

*1:

*2:

*3:

*4:他にも夜泣きする赤ん坊を交代で看ようと提案する嫁に対して「お前が産んだんだからどうにかしろよ」と提案する無責任な夫、みたいなのもあったし、母性本能を映像で表したギャグには感銘すら受けた

*5:この感想書くために初めて日本版の予告編見たけど、本作の作風とまるで真逆の感動押しでめちゃくちゃ萎えてしまった…。なんで日本の洋アニメ配給会社はAI押しなんだおろうか。