また『シン・ゴジラ』の話ですみません、多分今日で最後。
『シン・ゴジラ』の三回目を見ている時に高橋ヨシキが随分昔に書いた『クローバーフィールド HAKAISHA』評*1を思い出していた。
ところで『クローバーフィールド』は残念なことに、フィクションにも関わらずデストロイ度で現実の911映像に完全に負けた。
理由は簡単で、現実の911デストロイ映像が晴れ渡った朝の、エッジの立った光景だったのに反し、『クローバーフィールド』は真っ暗な夜中のピンボケ映像だからである。
エンドクレジットの音楽でこれみよがしに『ゴジラ』へのオマージュを捧げているので、もしかすると『クローバーフィールド』の大破壊が夜に行われるのは『ゴジラ』を意識しているのかもしれない。だとしたらそれこそ大失敗で、なぜなら『ゴジラ』は夜中に行われた東京大空襲をモチーフにしているから夜中でよかったのである。911をエクスプロイトするのであれば、「クローバーフィールド」事件は真っ昼間に起きるべきであった。
『シン・ゴジラ』で僕が思わず固まってしまったシーンは所謂「蒲田くん」が上陸した場面と、東京大炎上のシーンである。キモ可愛い蒲田くんにアメリカの観客は大爆笑していたけれど、川が逆流して道を洗い流す描写などはどうしても震災以降繰り返し見てきた津波の映像を思い出さずにはいられなかった。そして震災時の映像がそうであったように、蒲田くんは白昼堂々と上陸した。
単純に初代『ゴジラ』へのオマージュだったのかもしれないが、『シン・ゴジラ』でも東京は夜に焼かれていた。そして庵野節満載で描かれる東京大炎上は米軍の爆撃が遠因で起きたこともあり、ここでも東京大空襲を重ねずには観られなかった。何故かここでも笑っている無神経な客がいたが、こういったシーンでアメリカ人の観客が笑っているのを見ると無性に日本人としてのDNAが辛さを覚えるのだ*2。
そういえば僕が大好きなギャレス・エドワーズが監督した『GODZILLA ゴジラ』*3はゴジラファンからの賛否が分かれている。あの映画では福島第一原発を思わせる冒頭の原発事故は真昼に起きていた一方で、ゴジラ登場と同時に起きる津波は夜に撮られていた。ハリウッドと日本の新ゴジラは両方とも311をモチーフとして描かれていたが、「時間帯」という点に絞ればやはり実際に震災を体験した日本のクリエイターたちの方が理解があったのだろう。