二つで十分ですよ!

 前もどっかに書いたけど、僕はどうも日本人に見えないらしい。留学を始めた頃、アメリカ人によく「君は中国人?」て聞かれていたが、それにはなんとも思わなかった。だって、我々日本人だったら日本人・韓国人・中国人の区別はなんとなく付くけど、多分アーカンソーみたいな田舎ではアジア人見慣れてないだろうから。ただ困ったのは中国人に初めて会った時で、彼らもなぜか大抵中国語で話しかけてくるのだ。

 

 そもそもまずは英語で様子見してから人種を断定しても良いと思うのだが、中国語でガッツリ話しかけようと中国人に思わせるほどには中国人に見えるらしい。中国人の友達に中国語を教えてもらってからはそれを逆手に取り、初対面の中国人には「 你是中国人吗?(君中国人?)」と話しかけて自分を中国人だと思わせるイタズラをよくしていた。会話が続かないのですぐバレるけど。

 

 でも日本人が多いNYに来て困ったのは、僕も相手が日本人だか分からない時が多いことだ。大抵は和食屋さんで遭遇するのだが、相手がアジア人だからといって日本語で注文しようとすると全く日本語を理解できない相手だったりすることもあり油断できず、かといって英語で注文した時に相手が日本人だったと分かったらものすごく気まずい。

 

 前に日系スーパーに行った時、日本人の店員が新人の店員にレジの打ち方を指導していた。「クレジットカードの時はここを押して」などと、もちろん日本語で僕にも聞こえていた。なのに、僕に話しかける時は「ザ・トータル・イズ・25ダラー!」と英語で話しかけてくるので、ただ苦笑いしながら黙々とお金を払うしかなかった。この時ばかりは日本語を分からないふりをしてしまった。

 

 更に笑っちゃったのはついこの間、仕事終わりにラーメン屋に行った時。日本人の女の子の店員が「いらっしゃいませ!」と元気よく挨拶してくれたので、僕は日本語で「一人です」と人数を伝え、導かれるままカウンターに座った。そうすると同じ女の子が「ワット・ウッジュー・ライク・トゥ・ドリンク?」と元気よく聞いてきて思わず動揺してしまった。「え…あ…その…お水ください…」とシドロモドロに伝えると、彼女もミスに気付いたのか「え…あ…少々お待ちください!」と顔を赤らめてキッチンに戻って行ったのであった。

 

 多分アメリカに住んでいる日本人なら誰でも経験があると思うけど、英語しか喋れないと思った相手に日本語で返されるのは、何故だかよく分からないが物凄く気まずくて恥ずかしいことなのだ。あの時ラーメン屋の女の子には英語に合わせて答えるべきだったのか、それとも今後も店を利用することを考えて日本語で良かったのか、未だに僕は答えを見出せてはいない。