何が彼を駆り立てたのか

 新幹線の殺傷事件について、海を離れた遠い場所から記事を読んでて驚いたのは、容疑者の見た目の若さであった。若いというか、あどけない。実年齢が22というのもあるのだろうが、なんというか中学や高校の時にクラスに一人くらいいてもおかしくない、そんな身近ささえ感じてしまう見た目である。彼の面倒を見た支援施設の代表も「ごく普通の青年」と表現している。血塗れのズボンに手錠をかけられた彼の写真を見ても、とても殺人を犯した人には見えないのだ。

 

 そんな「ごく普通の」彼がどうしてこんな惨劇を繰り広げたのか、世間はおろか彼をよく知る親族や関係者すらも戸惑いを隠せないようだ。しかし、恐らく「ごく普通の」とレッテルを貼られることに対する闇が彼を犯行に向かわせたのではないだろうか。そもそも「ごく普通の」「大人しい」人ならば自殺をほのめかしたりはしない。

 

 もちろん、一番の被害者は亡くなった方や負傷した方であるし、彼の犯した罪は絶対に許されない。ただ僕はこんな悲劇が起こるまで、誰も「ごく普通の」彼を見つけ出し、彼に巣食う闇を取り除けなかったことが心底気の毒でならない。