TwitterにもFacebookにも書いたことだが、やはりディズニーの姿勢には腹がたつのでこちらにもまとめる。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』監督から、ジェームズ・ガンが解雇される。ペドフィリアやレイプといった話題をジョークにしていた08~09年のツイートが批判を浴びていた。ディズニー会長アラン・ホーンによればガンとのビジネス関係を絶ったとのこと https://t.co/FLpw3eax3J #HIHOnews
— 映画秘宝 (@eigahiho) July 20, 2018
これは前にもこのブログで書いた『二度目の人生を異世界で』問題*1とほぼ似た事態が起きていて、元のジェームズ・ガンのツイートを見ても確かに引くほど気持ち悪くジョークとしては成り立ってなくてそのツイートの露悪さ自体は擁護のしようはない。
それにしても今回のディズニーの対応は本当に最低だと思う。
まず僕は昨今の「政治的正しさ(PC)」を過激に求める風潮に嫌気がさしている。ここで勘違いして欲しくないのは、「政治的正しさ」が悪だ、と言いたいのではない。周囲に差別を扇情する人間なんて畜生以下だし、他人の基本的人権を奪う行為をする人間や集団は咎められるべきだし、人の道に逸れた行いをしたら程度に見合った罰は与えられて然るべきだろう。
しかし人は完璧ではない。人は愚かだ。他人から見たら許されない間違いだって時には犯す。ただ、人は成長する。間違えを犯し、時には他人を傷つける時だってあるだろうが、失敗から人は成長する。よく事件や炎上騒ぎが起きた時に、躍起になって加害者を責める人たちがいるが、僕には理解できない。皆自分がそんなに絶対的正義だとしんじているんだろうか?「政治的正しさ」は確かに秩序ある社会形成には大事だ。だが、完全無欠な「政治的正しさ」ばかり追い求めると人間性は死に、全体主義社会と何も変わらなくなる。これからの社会は10年前に犯した小さな過ちすら指摘されることを恐れ続けなくてはならなくならないのか。
とはいえ、今回ディズニーは「政治的正しさ」によりジェームズ・ガンをクビにしたのだったらまだ良かった。僕が怒っているのはそこだ。
そもそも今回の騒動を考えると、ジェームズ・ガンの過去ツイートを遡ったのはオルタナ右翼の連中だった。最近のジェームズ・ガンはリベラル寄りでトランプ批判を繰り返し、『最後のジェダイ』を巡ってケリー・マリー・トランやライアン・ジョンソンがオルタナ右翼の総攻撃にあうと「セラピーに行け」と批判していた。弱者を傷つけることを厭わないオルタナ右翼の連中なんかに「政治的正しさ」を求める姿勢はこれっぽちもあるわけがなく、今回ヤツらがジェームズ・ガンの過去ツイートを発掘したのは、ガンのキャリアをぶち壊すのが狙いだった。
ディズニーは愚かにもオルタナ右翼の目的を成し遂げてしまった。本当に「政治的正しさ」を理解していれば、ジェームズ・ガンをオルタナ右翼の思惑に乗せられて切り落としたりなんかしないはずだ。確かに10年前のジェームズ・ガンは愚かだったかもしれないが、彼が成長してよりまともな人間になっていたことは、自分のスタジオで雇っていたディズニーが一番よく知っているはずだったのに。要するに炎上によって利益を失うことを恐れ、システィマティックにガンのクビを切ったまでだ。
僕は作品としてのディズニーやそのブランドが発するメッセージやテーマ(現実と夢の境界線)は大好きである。しかしモノポリー的に企業を次々に買収し、大衆に迎合した単純な二元論で物事を進めていくその資本主義的姿勢は心の底から嫌悪する。「人の弱みを探し出せればその人の人生をめちゃくちゃにすることができる」こんな前例を作ったディズニーを絶対に許してはならない。
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