ディズニーがチャイコフスキー作曲の有名バレエの元となったE.T.A.ホフマンの童話『くるみ割り人形とねずみの王様』を実写化した『くるみ割り人形と秘密の王国』を鑑賞。監督は『ギルバートグレイプ』のラッセ・ハルストレム、『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー』のジョー・ジョンストン*1、脚本はアシュリー・パウエル、サイモン・ボーファイ、トム・マッカーシー。音楽はジェームズ・ニュートン=ハワード、撮影は『ラ・ラ・ランド』『ファーストマン』のリヌス・サンドグレン。主演は『死霊館』『インターステラー』のマッケンジー・フォックス、助演にキーラ・ナイトレイ、モーガン・フリーマン、ヘレン・ミレンなど。
まずは良かった点から述べよう。キーラ・ナイトレイの怪演は素晴らしかった。僕は本作の事前情報は一切仕入れずに観に行ったので、メイクもありエンドロールまでやたらとテンションが高いキャラを嬉々としている演じているのが彼女だと気付かなくて驚いた。ネタバレになるのでうまく書けないけれども、今まで彼女が演じたことのないような役柄でキーラ・ナイトレイの演技の幅を知れたのは良かった。
以上。
本作につけた★一つは彼女の演技力に与えたようなもので、あとは何をどう取ってもいいところが見つからなかった。ジョセフ・ジョースターじゃないけど「次にお前は○○という!」と次の台詞の予想が当たってしまうくらい脚本は平凡で、ギャグは子供向け使用のナメたもので、世界観は『ロード・オブ・ザ・リング』『ナルニア国物語』以降何百回観たか分からないようなヴィジュアルで、画はグリーンバックの配置が透けて見えてしまうほど平坦で頭を抱えたが、これもエンドロールで監督の一人が特撮界の巨匠ジョー・ジョンストンと知って驚愕した。もう片方の監督だってラッセ・ハルストレムな訳で、ベテラン二人拵えて一体全体どうしてこんなにモッサい映画になってしまったのかいよいよ悩まされる。
誰もが知る童話を次々と躍動感あふれる映画史に残るアニメーション映画にしてディズニーは現代まで続く帝国の礎を築いたが、2010年代に入り今度はディズニーはその童話を莫大な資本をかけて壮大なファンタジー映画として次々と実写化している。恐らくその(そんなに上手くいっているとは思えない)潮流の源泉にあったのは『アリス・イン・ワンダーランド』の大ヒットだと思うが、『アリス・イン・ワンダーランド』と『くるみ割り人形と不思議の王国』はモッサい出来以外にもプロットが似通っている。
孤独を感じているけど想像力豊かなイギリス人少女が、ひょんなことから異世界に転生され、本人に自覚はないが彼女は異世界のキーパーソンで、戦いに巻き込まれていくうちに英雄となっていく、というもの。
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※如何せんこういったラノベを呼んだことがないので、勝手に大体同じだと偏見で決めつけてますが、全然違ってたらすみません。苦情はコメント欄で受け付けます。
とにかくまあ、ディズニーブランドのゴリ押しだけで作られた工業製品のような映画で、アメリカでも大コケしているのだが、マーベル映画やピクサーで大儲けしているので別に痛くも痒くもないんだろうなぁ。逆にたまにこういう駄作が作られるのもある意味でエンタメ王者ディズニーの余裕を象徴しているのかもしれない。
*1:ラッセ・ハルストレムが32日間の追加撮影に参加することが出来ず、ジョー・ジョンストンが起用されたためのクレジット表記。脚本におけるトム・マッカーシーもジョー・ジョンストンと同じ役割