『サウスパーク』S22E6「Time to Get Cereal」感想

 懐かしいキャラが再登場することの多いシーズン22だが、今回はなんとアル・ゴア元副大統領と半人半熊半豚のマンベアピッグが久々に登場!

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 ジンボとネッドが狩りに楽しんでいると、クマと豚と人間のものに似た糞を発見する。痕跡を辿っていくといつしかマーシュ一家のテグリディー農園*1に着いた二人は、半人半熊半豚の化け物に襲われる。ネッドはそのまま化け物に連れ去られてしまい*2、スタンはその一部始終を目撃してしまう。

 

 さて、サウスパーク警察署では働き尽くしたイェーツ巡査部長が楽しみにしていたレッド・デッド・リデンプション2』をやろうと家に帰る寸前、サウスパーク小学校でまたスクールシューティング*3が起きたとの通報が入る。「またスクールシューティングか、ふざけんな!俺の楽しみを邪魔しやがって!ガキどもが互いに撃ち合うのを辞めないと、俺が全員撃ち殺してやるぞ!」と不機嫌に学校へ向かうと、明らかに化け物に食い散らかされたコリン・ブルックスという子供の遺体が見つかる。しかしイェーツ巡査宇部長はスクールシューティングのせいだと決めつけるが、スタンは「これは…マンベアピッグの仕業に違いない!」と戦慄する。

 

 街ではマンベアピッグの被害が拡大し、カートマンとケニーもまたイェーツ巡査部長にコリン・ブルックスを撃った犯人として決めつけられる。4人組はサウスパークに降りかかった問題を解決するために、かつていち早くマンベアピッグ問題について人々のに警告していたアル・ゴア元副大統領の元へ訪れる。12年ぶりに登場したアル・ゴアは髭を蓄え、コロラドのボウリング場で腕を鳴らす日々を送っていた。「あの、アル・ゴアさん…マンベアピッグが実在するとは思ってもいませんでした…お力を貸して欲しいんですけど…」と4人組が話しかけると、アル・ゴアはかつてマンベアピッグの脅威を真面目に取り合わず、自分をバカにしたことを謝れと要求する。4人組はサウスパークをマンベアピッグの脅威から救うため、アル・ゴアの機嫌を取る接待を強要されるのであった…。
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 アル・ゴアとマンベアピッグが『サウスパーク』に登場したのはS10の第6話のこと。アル・ゴアがマンベアピッグの脅威をサウスパーク中に知らせるも、誰もまともに相手にしないどころかアル・ゴア狂言のせいで4人組が酷い目にあう、というプロットであった。当時マンベアピッグの荒唐無稽さに日本の『サウスパーク』ファンは笑っていただろうが、マンベアピッグがデタラメな生き物であるのは理由がある。

 

 信じがたい話だが、アメリカには地球温暖化を信じていない人たちがいる。石油産業の利権の恩恵を受けている人たち(主に共和党)と、その支持者たちだ。トランプがパリ協定を脱した愚策も記憶に新しいが、ブッシュ政権時代から共和党地球温暖化について否定的な立場を取っていた。そんな折に、環境問題に常々高い意識を持っていたアル・ゴアは『不都合な真実』という地球温暖化を世に警告するドキュメンタリー映画を2006年に発表した。映画はヒットを記録し、アカデミー最優秀ドキュメンタリー賞まで受賞したが、そのアル・ゴアブームに噛み付いたのがトレイ・パーカーとマット・ストーンだった。

 

 トレイとマットに右も左もない。気に入らない奴らを全員コケにするだけだが、嫌いなものはハッキリしている。バカとインテリである。イケ好かない政治家の癖にアカデミー賞まで取りやがったアル・ゴアを徹底的にバカにすることに決めた。それが件のマンベアピッグのエピソードで、マンベアピッグとは地球温暖化(荒唐無稽でデタラメなもの)を象徴していたのだ。

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 なお、『サウスパーク』で地球温暖化を扱った回は何回かあるが、どれも地球温暖化を大袈裟な脅威として描いていて真面目に取り扱わなかった。ところが今回は少し様子が違う。今まで「空想のもの」ときてバカにしていたマンベアピッグ(地球温暖化)の脅威を実際に目撃したスタンが目を覚まし、アル・ゴアに自分が間違っていたと謝りに行く*4。どうやらトレイとマットは、地球温暖化に対する認識が間違っていたと自覚したようで、自らの誤ちを作品を通して認めているのだ。

 

 これは『サウスパーク』史に残る事件といっていい。アニメ、映画、ミュージカル、ゲームと数々の媒体を通して様々な現象をバカにし、色々な人たちを怒らせてきたトレイ・パーカーとマット・ストーンが、自分たちの表現について謝ったことは(筆者の知る限りでは)無いからだ。もちろん、そんな姿勢は頻繁に登場する『レッド・デッド・リデンプション2』に纏わるジョークが照れ隠しのように機能していて見えづらくなっているけども。

 

 なお、このエピソードはクリフハンガーで終わったので、次回以降に話が続く。果たしてマンベアピッグを4人組とアル・ゴアがどう対処するのか、1週間が待ち遠しい!

不都合な真実 (字幕版)

不都合な真実 (字幕版)

 

 

 

*1: 

*2:17年ぶりに喋ったかと思えばそのまま退場!その生死はいかに…?

*3: 

*4:なお、『サウスパーク』に登場するアル・ゴアは舌足らずで、「serious(シリアス)」をなぜか「cereal(シリアル)」という。なので今回のタイトルは「真面目になる時が来た」と「シリアルを食べる時間が来た」というダブルミーニングになっている。